国際ダイオキシン会議
2004年 ベルリン会議 参加・報告
ドイツの食品中ダイオキシン濃度指針
2004.9.6〜9.10


青山 貞一
武蔵工業大学大学院教授

独立系メディア E-wave Tokyo
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 第24回国際ダイオキシン会議(正式には International Symposium onHalogenated Environmental Organic Pollutants and POPs)が9月6日から10日までの5日間、ドイツの首都ベルリンで開催された。

 私たちは、2001年韓国の慶州で開催された会議以来、以降、スペインのバルセロナ会議、米国のボストン会議と参加し、論文発表をしてきた・

 ベルリン会議は旧西ベルリンの中核駅、動物公園駅からほど近い、ベルリン工科大学で行われた。

 ここでは、初日に行われたドイツ連邦環境省のUwe Lahl氏による基調講演のなかから、世界各国からの学会参加者に関心が高い食品中ダイオキシン類の規制に係わる最新情報を報告する。

 我が国では、未だ食品中のダイオキシン類に関する直接規制する正規の基準がない。一方、ドイツを中心としたEUでは2002年7月以降、食品及び飼料中のダイオキシン類濃度指針がEU統一基準として設定され施行されている。

 今回のドイツ政府が基調講演で提案した食品中ダイオキシン濃度の目標値案は、EU統一基準ではなくドイツの基準である。従来、EUの食品中のダイオキシン類の濃度指針は、ドイツ政府が主導して来た経緯を考えると、今後、国際ダイオキシン会議の基調講演でドイツ政府が提案、公表した新指針がEU全体の目標値となる可能性が高い。
 

ドイツ連邦環境省Uwe Lahl氏の基調講演

 その意味でも、魚介類を日常的に食している日本において魚類や乳製品等、個別食品中のダイオキシン濃度を規制する指針や基準がまったく存在していない現状は、消費者の立場、食の安全の立場から見て極めて問題であると考える。

 以下はドイツ連邦環境省のUwe Lahl氏が基調講演で公表した提案内容である。


ドイツ連邦環境省の新指針提案

 新指針(目標値)は、国際ダイオキシン会議の初日冒頭のドイツ環境省の講演のなかで示された。以下、上記の提案について若干のコメントをしておきたい。


●魚類中の新指針の提案

 ドイツ政府が提案した魚類中ダイオキシン類の目標値である 0.6pg-TEQ/g は、過去、米国環境保護庁(EPA)が魚類摂取警報値として示した値に比べ2倍厳しいものとなっている。

 以下に従来の魚類中ダイオキシン類の濃度指針値を示す。


 ドイツ環境省提案の魚類中ダイオキシン類の目標値
                0.6pg-TEQ/g

 米国環境保護庁(EPA)の魚類摂取警報値  
                1.2pg-TEQ/g

 欧州連合(EU)の食品中ダイオキシン指針値の最大許容値
  魚類油          6.0pg-TEQ/g-fat
  魚類           2.25pg-TEQ/g-fat

 欧州連合(EU)の食品中ダイオキシン指針値の目標値
  魚類油          3.0pg-TEQ/g-fat
  魚類            1.5pg-TEQ/g-fat

  註)ドイツ及びEPAの値は湿重量値。EUの値は脂肪換算値

 以下のグラフ中赤線は、米国環境保護庁の魚類摂取警報値(1.2pg-TEQ/g)を示している。ドイツ環境省の新目標値は、その半分の0.6pg-TEQ/gである。したがって、ドイツ環境省が提案する新指針を日本の魚介類に適用すると、以下にあるように大部分の日本近海で取れる魚介類は食べれなくなることが分かる。

典:日本政府(水産庁)


●乳製品中の新指針の提案

 ドイツ環境省の基調講演では、ドイツ政府が乳製品に関し2002年7月のEUの食品中ダイオキシン基準の最大許容値の3倍、行動指針値の2倍も厳しい新指針を適用することが示され。

 ドイツ政府の乳製品中のダイオキシン濃度の新指針(目標値)
                  1.0pg-TEQ/g-fat
 
 ドイツ政府が提案している新指針、1.0pg-TEQ/g-fatはかなり厳しい値であり、日本で市販されている牛乳のうち、焼却炉近くの牧場で放牧されている牛からの乳製品の場合、1.0pg-TEQ/g-fatを超える可能性は高いはずである。魚類同様、乳製品は、毎日摂取するものであり新指針の値は日本人にとっても非常に重要なものとなるだろう

 ちなみに以下は、2002年7月にEUが施行した食品及び飼料中のダイオキシンの指針のうち、乳製品に関するものである。


 欧州連合(EU)の食品中ダイオキシン指針値の最大許容値
  乳製品            3.0pg-TEQ/g-fat
 
 欧州連合(EU)の食品中ダイオキシン指針値の最大許容値
  乳製品             2.0pg-TEQ/g-fat

 魚類、乳製品以外にも豚肉、卵などについても厳しい目標値を提案している。