国際
ダイオキシン会議

2005年トロント会議
参加・発表記
2005.8.22〜8.26


鷹取敦

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Fairmont Royal YorkHotel

 2005年8月22日〜8月26日、第25回国際ダイオキシン会議(DIOXIN2005)が、カナダ最大の都市、オンタリオ州の州都トロントの中心街、Fairmont Royal YorkHotelで開催された。数々の国際会議が開催されている由緒あるホテルである。ちょうど同じ時に国連関係の会議が行われているのを、滞在しているホテルのテレビでみかけた。

 国際ダイオキシン会議(DIOXIN2005)とは通称で、正式名称は "25th International Symposium on Halogenated Environmental Organic Pollutants and POPs" である。ISPAC20 (International Symposium on Polycyclic Aromatic Compounds) と合わせての開催だ。

 正式名称をみて分かるように、ダイオキシンだけを対象とした会議ではなく、ハロゲン化有機環境汚染物質と残留性有機汚染物質(POPs)を広く対象とした研究が対象である。世界各国から数多くの研究者が一同に会した。

 全体で801の発表が47カ国の研究者によって行われた。9つの部屋にて行われる398の口頭発表と403のポスター発表である。

 環境総合研究所からは例年、青山貞一所長、池田こみち副所長が参加、報告しているが、今年は鷹取が参加し、松葉ダイオキシン調査に関する発表を行った。今回の報告の概要は次のとおりである。

論文のPDFファイル(86KB)
カラーポスターのPDFファイル(1956KB)

 2001年には1999、2000年度の調査、107サンプルについて、松葉中ダイオキシン濃度の同族体パターンと焼却炉など発生源の関係について統計的に分析、報告した。

 今回はその後2004年度まで6年間継続して行った九州・中国地域における326サンプルの調査結果について、同族体パターンと濃度の関係の統計分析を行い、前回の分析結果がその後の調査についても当てはまるかどうか検証し、その後の変化の把握を試みた。

 その結果、典型的な焼却炉由来のパターンおよび典型的な背景濃度(低濃度)のパターンについて2001年度の報告と同様の傾向がみられたのに加えて詳しい焼却由来の特徴がわかった。

 さらに、日本おける2002年12月の既存炉に対する規制強化後に、従来の典型的な低濃度パターンとは異なるパターンが現れた。焼却炉の規制の状況と合わせて考えると、従来の低濃度パターンは焼却炉が止まっている状態、新しい低濃度パターンは最新基準に適合した焼却炉稼働後の焼却の影響を受けている可能性が示唆された。この点はさらに詳しい研究が必要である。



 以下は会議への参加記。

 初日に受付を済ませると、ぶあついプログラムとノート・ボールペン、それを収める専用のセカンドバッグを受け取った。

 全ての発表を聞いて回りたいところであるが、同時並行で行われているので、プログラムから面白そうな発表を見つけて参加することになる。沢山のテーマに分かれているので、1日目だけ紹介したい。

1日目:午前のセッション
   1) HUMAN EXPOSURE 
2) MULTIDIMENSIONAL CHROMATOGRAPHY
3) URBAN CONTAMINANT ISSUES
4) RISK ASSESSMENT, MANAGEMENT AND REGULATORY ASPECTS
5) SOURCES AND SOURCE INVENTORIES
6) HEMISPHERIC AND GLOBAL DISTRIBUTION DYNAMICS OF PERSISTENT ORGANIC POLLUTANTS
7) OCCURENCE AND SOURCES OF PACS
8) MUTAGENICITY OF PACES IN COMPLEX MIXTURES

1日目:午後のセッション
   1) HUMAN POISONINGS
2) BIOANALYTICAL APPROACHES FOR POPS DETECTION
3) GLOBAL DISTRIBUTIONS OF POPS, LEVELS AND TRENDS
4) POPS IN ALPINE ECOSYSTEMS 
5) GENERAL - ENVIRONMENTAL LEVELS OF POPS(前半)
POPS IN MEXICO, CENTRAL AND SOUTH AMERICA(後半)
6) POLYCHLORINATED NAPHTHALENES(前半)
EPIDEMIOLOGY OF HALOGENATED AROMATIC COMPOUNDS(後半)
7) URBAN CONTAMINANT ISSUES
8) OCCURENCE AND SOURCE OF PACS
9) MUTAGENICITY OF PACS IN COMPLEX MIXTURES

 全日程に渡る発表をみると、人間への影響、分析手法、リスクアセスメント、発生源、発生プロセス、測定データ、食べ物、飼料、血液、地球規模の移動、モデル、機器、ありとあらゆるテーマに渡ることが分かる。

 1日目の午前中に聞いた発表は、ニューヨーク911のWTO崩壊現場で救出活動を行った人たちの血液中のダイオキシン濃度等について香港の研究者からの発表、受精段階からのダイオキシン暴露についての研究、養殖マグロと天然のマグロのダイオキシン等の汚染を比較した研究など。

 数百人が巨大な部屋に集まって昼食。サラダを食べると次にメインの鶏肉料理、デザート、コーヒーが順番に配膳される。たまたま隣に座ったアジア系のイギリス人と話していると、オーストリア Monitoring System 社の知人 Thomas Steiner氏が隣に座った。彼が新しく開発した機器や研究の技術的な面について議論した。

 午後聞いた発表は、バイオアッセイ等による簡易分析手法に関する発表、ロシア・米国・ドイツのダイオキシン高濃度暴露者の血液中濃度比較、Yusho(カネミ油症)とYucheng(韓国の油症)による暴露者の濃度の変化に関する発表、バックグラウンド濃度による影響に関する研究など。発表者の国籍、年齢、研究分野、いずれもバラエティに富んでいる。


ポスターセッションの様子

 日本では一般的にはダイオキシン問題は終わったと思われているふしがあるが、この会議に参加するとそれは大いなる誤解であることが分かる。他の国の研究をみると、日本より大気中濃度は下がっていることに気がつかされる。なにしろ単位がfg-TEQ/m3(フェムトグラムと読む)、ピコグラムのさらに千分の一だ。その上、さらに食べ物、飼料等に関するガイドラインを設けているのである。健康影響、リスクに関する研究も抜かりはない。ヨーロッパでは(廃棄物)焼却主義の日本とは異なる事情(石炭ストーブからの割合が大きい)があるとは言え、たゆまない監視と取り組みが興味深かった。

 さらに、ダイオキシンだけでなくPBDE、PAHsなど、ダイオキシン以外の汚染物質についても取り組みが進められている。

 個人的に関心を持ったのは一連のPAHs(多環芳香族炭化水素)に関わる研究であった。特に大気中のPAHsは、工場起源とともに、自動車起源の割合が多い。大気を対象としたどの研究をみても、幹線道路沿道で高い濃度を示していることが分かる。ディーゼル車起源のもの、ガソリン車起源のものそれぞれ異なる特徴がある。

 日本で行政によって行われているモニタリングは、ほとんどPAHsのうちベンゾ[a]ピレンのみである。それも言わば漫然と行われているという印象がある。もっと戦略的、効果的な調査計画に基づいた調査、結果の分析が必要であると痛感した。

 肝心の自分の発表(ポスターセッション)はというと、割り当てられた説明時間が始まる前に、ポスターの前に置いた縮刷版(英語版)、松葉調査のパンフレット(日本語版)が品切れとなってしまった。関心をもって訪れてくれた方の質問に、つたない英語であるが答え、議論した。

 5日間の日程のうち最終日は発表はない、セッションハイライトなどのまとめである。この日は環境総合研究所の技術提携、業務提携を行っている、カナダ最大の民間分析機関である、MAXXAM社のラボのうち新しいラボを含めて2ヵ所を訪ねた。

 昨年夏のPSC社との合併を契機に、カナダ最大の分析機関として設備だけでなく、分析サービスのシステムの拡充が図られている現場を確認した。

ダイオキシン会議MAXXAM社ブース