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清渓川復元現地訪問記
その1


阿部 賢一

2007年6月5日


1.
 はじめての韓国旅行

今年五月中旬、近くて遠い国、韓国をはじめて訪れた。
昭和41(1966)、はじめて外国へ仕事で旅立ち、その後世界各地を仕事や観光で訪れ、はじめて海外にでかけてから四十年にもなるのに隣の韓国を訪れる機会はなかった。まったく筆者にとっては、近くて遠い国、韓国であった。

2. 清渓川復元プロジェクトの始点付近

李王朝時代の王宮『景福宮』と唯一奇跡的に昔日の姿を残し20055月、大改修がなされ緑に囲まれた国宝第1号『南大門』を結ぶ世宗路から太平路のちょうど中間地点、両側の高層ビル(ドンア文化センタービルとソウル金融センター)の間に視界が広く広がるのが清渓川復元プロジェクトの始点、清渓広場である。
世宗路に面した朝鮮日報社経営のコレアナ・ホテル(Koreana Hotel)にチェックインしたのはすでに夕暮れが濃くなり、市中のビルの夜間照明が輝きを増していた。
ホテル前面の世宗路の歩道に立つと、北奥に『景福宮』が見え、反対側の南奥の少し高台には『南大門』が見える。
コレアナ・ホテルのすぐ近く並びには『徳壽宮』、道路を挟んだ反対側の筋向いには、『ソウル市庁舎』、その前面には、清渓川復元プロジェクトと並行して造成されたほぼ円形の緑の芝生豊な『ソウル広場』がある。
周辺には、各国大使館やソウルプラザホテルをはじめ一流ホテルが多い。

[1] コレアナ・ホテル隣の交差点近くの緑の空間
筆者撮影:2006/5/16早朝
この交差点を渡った場所が清渓川復元プロジェクトの始点、清渓広場である。

コレアナ・ホテルから世宗路を横断したころが清渓川復元プロジェクトの始点、清渓広場である。
すっかり暗くなったなかで、オブジェ「春(SPRING)」はその表面のイルミネーションを輝かせて存在感を誇示しているかのようだった。

[2] オブジェ「春(SPRING)
筆者撮影:2006/5/16早朝
土台右端のところから溝が掘られているが、これが復元された清渓川の始点である。前夜は水が流れていたが早朝なのでまだ流れておらず、水溜りの光が反射しているのが見える。

[2]の写真はソウル到着翌日早朝5時半頃撮影したものであるが、大きすぎで全体を収めることができなかった。
このオブジェ「スプリング(SPRING)」は昨年(2006)925日夜に点灯イベントが行われた。そして、清渓川復元1周年の2日前に当たる同月29日に正式に点灯された。
オブジェはアメリカの彫刻家、オルデンバーグ氏の作品。前年のはじめから製作に取り掛かっていたもの。
高さ20m、重さ9トン、ブルーの土台に赤い鉄板をらせん状に巻きつけたもので、まるで先端の尖った巻貝のような巨大な抽象造形作品。夜間はイルミネーションで輝く[3]

[3] オブジェ「春(SPRING)」と夜景
出典:朝鮮日報

復元された清渓川の流れは、このオブジェの土台部分から小さく切り込んだ溝の水の流れが次第に広がり、噴水と瀑布で一気に段差をつけて復元の流れが降っていく。

[4] 噴水と落差の小さな滝

筆者撮影:2006/5/16早朝

小さな溝はこの池に注ぐ。水量が一気に湧き出しえ居るが、本来は噴水が立ち昇る処だが、早朝のためかまだ噴水装置が稼動していない。

落差があるため水面は泡立っているが、夜間は照明効果が素晴らしい。

[5] 最初の滝
2006/5/16早朝に筆者撮影
[4]を下流側から上流側を撮ったショット。

上の写真の滝の左側の暗部はトンネルとなって広場から降る緩やかな車椅子が通れる通路である。
側壁にはは電飾設備、右側は階段部となっており、この両側の通路から下って清渓川両岸の散策路が始まる。

[6] [5]の夜景
日中とは一味違う光輝く夢幻空間を演出する。
出典:朝鮮日報

[7] 最初の滝を背に下流側の毛塵橋を見る
2006/5/16早朝に筆者撮影

写真[7]は清渓川復元プロジェクトの最初のモジョンギョ(毛塵橋)、この橋に始まり清渓川には橋梁は全部で22本が架橋された。各橋梁の設計コンセプトは、朝鮮王朝時代の歴史をしのばせるものから現代風・未来風デザインのものまでさまざまだ。
清渓川に架かる22ヵ所の橋梁の写真とその解説は下記のサイトに詳しい。
清渓川攻略
http://www.oppasama.com/syasindekouryaku/015/

[7]の写真で毛塵橋手前の散策歩道(左側)に置かれたオブジェ([7])や川面に設けられた照明装置は、夕暮れと共にさまざまな光が演出する夢幻空間をつくりだす。
次に視界に入るのが、やはりオブジェの瞻星台である。

[8] 夜に輝くオブジェ「瞻星台」
出典:朝鮮日報

この瞻星台も昨年(2006)1011日、二番目の広通橋上に設置されたオブジェ。これは新羅王朝時代の首都慶州に七世紀頃、花崗岩361個半を積み上げて建てられ、国宝第31号に指定されている天文台を模したもの。1,374個の廃車のヘッドライトが瞻星台の塔表面にはめ込まれ、白い光を輝かせている。環境回復のシンボルとなった清渓川の歴史的な意義を表しているのだという。

夜間の清渓川はイルミネーションの効果が素晴らしい。
オブジェ「スプリング(SPRING)」清渓広場の噴水と滝、オブジェ「瞻星台」、つぎの写真の夜景など、散策する人々を楽しませてくれる。

[9] 素晴らしい夜景
街路樹と噴水、それら照明が華やかさを演出する
出典:朝鮮日報

20037月開始、23ヶ月の工事を経て清渓川復元事業が完成、2005101日オープン、その一ヶ月間でここを訪れた人々は628万人に達したと現地紙は報じている。その一年後、オブジェ「スプリング(SPRING)」やオブジェ「瞻星台」の完成、華やかな夜間照明効果も加わり、賑わいは定着した感じだ。

筆者が訪れたのは完成から約1年半後、夜の10時過ぎまで若者を中心とした多くの人々が、復元された清渓川の両側の歩道を、夜間照明を楽しみながら散策して賑わっているのには驚いた。

現在でも、毎日、5万〜6万人が訪れていると、現地紙は報じている。

(つづく)