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読者からのメール

「国家が振り込め詐欺」
への返事(2)

青山貞一
 
掲載日:2007.6.13


●●●●さま


 青山貞一です。

 メールありがとうございます。

 ご承知かと存じますが、日本国憲法第17条は、「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」と規定しています。

 この憲法第17条は、昭和21(1946)年4月17日の憲法改正草案には規定がなく、衆議院の修正で加えられたものであり、17条にいう「法律」として制定されたのが、国家賠償法(以下を参照)です。

国家賠償法

第1条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
第2条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
第3条 前2条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。
第4条 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前3条の規定によるの外、民法の規定による。
第5条 国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。
第6条 この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。

 ただし、国家賠償法では、以下にあるように、通常、被告は個人としてではなく組織となります。

 すなわち、国家賠償法1条1項では、国または公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が、これを賠償する責に任ずる、とあります。

 もっぱら、故意又は過失により被害者たる国民に損害を与えた事実と社会保険庁の個々の職員との一対一の関係を個別具体的に特定するのは事実上困難でしょうから、国が損害賠償の責任を負うことでよいと思います。

 賠償責任者(被告)は、国または公共団体など行政庁となります。加害公務員個人ではなく国または公共団体が、加害者である公務員の責任を、その公務員に代わって負います(代位責任)。これにより被害者である国民は、加害公務員個人に対し直接損害賠償を請求することはできないこととなっています。(最判昭30.4.19)

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 また、ひょっとしたら、政府・与党がいそいで立法しようとしている社会保険庁を解体し、民間組織とする法案は、国家賠償責任の主体を結果的に不明確とする可能性があります。

 場合によっては、現在、将来、社会保険庁に年金を納付した国民で、実害を受けたことが明確な国民が、損害の賠償を考え、こぞって国家賠償訴訟を行おうとしても、それができにくくなる、又はできなくなる可能性をはらんでいますと思います。

 その点は、まだ野党はじめ新聞、マスコミも気づいていないようですが、重要な点です。

 民事の場合、通常民法709条あるいは民法710条による故意又は過失によって他人の権利を侵害した者はそれを賠償する義務を負う、と言うのが定番ですが、国家賠償法はその行政庁版です。対象は国、自治体だけでなく、その外局、昔で言う特殊法人なども含まれます。

 本来、地方自治法の住民訴訟制度の国家版があれば、組織ではなく、役人、政治家個人も賠償の対象にできます。

 私たちは以前、納税者訴訟、国民訴訟制度を国会議員に提案しましたが、与党はもとより、野党もなかなか乗ってきませんでした。理由は、国民から直接請求されることを恐れたからだと思います。

 来週火曜日夜(2007年6月19日)に、現在別途、私も原告となり行っている国相手の行政訴訟で弁護団との連絡会議がありますので、その場で年金問題について国家賠償訴訟の可能性、条件などについて聞いています。

 もし行う場合は、ひとりふたりではなく最低でも、数10人が原告になる方が効率がよく、場合によっては東京、横浜、大阪など大都市を中心に各地で提訴できればと思います。その方が弁護士費用負担の観点からもよいと思います。

 もっぱら、上記の可能性がある場合には、まずもって具体的被害者(と想定される方)が弁護士と一緒に、東京地裁の記者クラブで<国家による振り込め詐欺は、到底がまんできない>として、記者会見を行い、そこで提訴の可能性について言及するのが一番と考えます。

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 なお、私は60年間、東京都品川区小山に住んでおります。▲▲にもよく行きます。

 独立系メディアは既存メディアがあまにりも不甲斐ないので、3年前から友人等と一緒にやっております。今後ともよろしく。

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