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日本のCO
2排出12%増、
半分が石炭火力の新設

青山貞一
掲載月日:2008年10月19日


 2008年10月7日午後に国会の衆議院予算委員会で質問に立った民主党副代表の岡田克也副代表は、地球温暖化問題への見解などを麻生首相らに質問した。

 岡田副代表は麻生首相に対する質問の中で、地球温暖化問題に対する首相の基本的な考え方を質問した。これに対し麻生首相は世界に誇る環境技術は日本の成長要因であり、関心の高い分野だと答えた。

 岡田副代表は、さらに首相に対し「世界・人類の視点で語るよう」答弁を求め麻生、首相は、「急激に発展しつつある国との連携を密にしないかぎり成功はしない。実行をともなわなければ意味はない。どうしても(温室効果ガスの削減を)やるべきと言い続ける必要がある」などと答弁した。

 ここで岡田副代表は、「世界全体がこの問題をクリアする上で、数値目標が極めて重要」と指摘た上で、2050年に60〜80%という福田前首相の目標と認識一致しているか確認した。

 麻生首相は「その線に沿って努力するのは当然だ」と答弁した。岡田副代表はさらに斉藤環境大臣に対して公明党政審会長時代の「2020年に25%削減」の目標に変わりはないか質問した。

 斉藤大臣は「政府の責任者という立場と、他国を巻き込む上で先に手の内を示せない」として明確な答弁を避けたのである。

 ここからが本題である!

 さらに岡田副代表は、京都議定書による日本の削減目標はマイナス6%だが、現在は、その基準年1990年比プラス6・2%であることに言及し、過去、我が国が十数年間、石炭火力を新設して稼動率を上げてきたのは政策の大きな失敗であり、再生可能エネルギーの導入機会を逃したと指摘した。


図1 各国の温室効果ガス削減目標  作成:青山貞一

 麻生首相は「今後はそういったことも配慮して取り組むべき。ご指摘は正しい」と答え、岡田議員は、温暖化税や排出権取引などの仕組みも具体的に進めるべきだと述べた。

 周知のように京都会議主催国日本は、1990年に対比し、2008年から2012年の間に二酸化炭素の排出量をマイナス6%とすることを世界各国にいわば公約している。

 しかし、現実はマイナス6%どころか1990年に比べてプラス6%超となっており、目標との関連では12〜13%も二酸化炭素が増加している。


図2 日本の温室効果ガス削減目標と現実の落差  作成:青山貞一

 衆議院の予算委員会で岡田副代表は、その原因、理由に触れたもので、1990年から現在までに増えた二酸化炭素排出量の約半分(50%)が、その間増設してきた石炭火力発電所に帰因すると指摘したのである


図3 石炭火力発電所が増加分の半分となっていた 作成:青山貞一

 予算委員会では、首相及び環境大臣もこの指摘を否定していなかったことから事実であるようだ。

 もし、これが事実であるとすると、我が国は京都会議以降、今日まで地球温暖化削減を世界そして国民に公言しながら、その実、化石燃料起源の二酸化炭素でもっとも発生源単位が高い、すなわち二酸化炭素を出しやすい石炭火力発電を新設そして増設してきたことになる。

 その結果、12〜13%増加した日本の二酸化炭素の排出量の約半分が石炭火力発電所からの増加分になってしまったのである。

 米国はブッシュ大統領が9.11以降、京都会議からの離脱を表明するなど、地球温暖化対策に対し、きわめて不誠実な態度、政策を採り続けてきたが、EU各国は日本よりはるかに厳しい削減目標をすでにEU全体としてクリアーしようとしている。

 ノルウェーはじめいくつかのEU諸国は、2050年にまでに排出をゼロとする目標を掲げるまでに至っている。

 しかし、京都会議の議長国でもあった我が国は、京都メカニズムとよばれる私見では対策の本筋からはずれた姑息な形式削減を提案しながらも、マイナス6%の目標を達成が達成できないばかりか、1990年対比でプラス12〜13%となっている。

 しかも、二酸化炭素負荷が最も著しく、二酸化窒素、粒子状物質の排出が多い、総じて環境負荷が著しい石炭火力発電を大幅に増やしてきたのだから、なにおかいわんやである。

 我が国では発電所の新設、増設に際しては電調審、すなわち電源開発調整審議会によって、電力会社が計画している発電所とその関連施設の規模などが妥当かどうかを調査、審議するとともに、電源開発に伴う土地や水の権利調整なども行っている。

 以前は総理府、現在は内閣府に設置され、首相を会長に財務、農水、経済産業、国土交通、総務、環境などの各大臣と学識経験者ら10数名の委員で構成されている。

 電力会社が新しい発電所を建設する場合、この審議会からの答申がなければ、発電施設の設置や農地転用、海岸部の埋め立ての許可申請など必要な手続きを進めることができない。

 ということは、首相はもとより経済産業、環境などの大臣も認めて、この間、環境への負荷が著しい石炭火力を増加させてきたのは間違いない。

 他方、風力、太陽光などいわゆる自然エネルギー開発に日本は非常に不熱心である。これは政官業によって東電など9電力体制による利権、権益を顕示するため、あくまでも石炭などの化石燃料や原子力発電を顕示したいことをベースとしている。

 結局、日本は麻生首相が「世界に誇る環境技術は日本の成長要因であり、関心の高い分野だ」と答えながら、お膝元の日本国内で政府を上げて石炭火力の大幅新設、増設を認めてきたことになる。

 これは岡田副代表が指摘するように、間違いなく政府の失政である。いくらうわべの温暖化対策を膨大な国費をかけて環境省などが喧伝しても、肝心要のところ、そして人の目の届かないところでこのようなことをしているようでは、さもなくとも乏しい国内外での日本の信頼性は一層瓦解するだろう。

 とくに環境省、経済産業省の責任はまぬがれない!