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彼らは、もうどんなことを
してもいいと思っている

エヴァ・バートレット
エレクトロニック・インティファーダ
Live from Palestine

翻訳:山田和子

掲載月日:2009年1月4日
独立系メディア「今日のコラム」特集:ガザ問題


 直前のF-16の爆撃で煙と土埃がもうもうと舞い上がる中、必死に避難する一家がいる。ジャバリヤのパレスチナ赤新月社(Palestine RedCrescent Society:PRCS)の救急車受付には、恐怖におののきながら家から避難する住民たちからの電話が殺到している。新しい年。新たなナクバ(大災厄)。

 でも、この光景は目新しいものではない。イスラエルは今またガザを爆撃し、世界はその横で、ガザをぐるりと囲んでいる電流の通ったフェンスや西岸地区を分断しゲットー化している壁とは無縁の、安全なフェンスの上にのんびりと座っている。のんびりと座って、これまでの長期にわたる封鎖でほとんど死にかけていたガザの人たちをイスラエルが次々と虐殺していくのを正当だと言っている。

 今夜は救急車4台に同伴。昨夜は2台だった。救急車は、できたての瓦礫の山を巧みによけながら、縫うように、人為的に作り出されたゴーストタウンの中、明りのいっさい消えた道路(ガザ中の道が同じような状態だ)を走っていく。

 こんなことはどう考えたってありえない、信じられない。皆殺しではないか。「連中はもうどんなことをしてもいいと思っている。気が狂いかけているんだ」と救急スタッフは言う。

 家の残骸、モスク、学校、店の残骸。パニック状態で、死ぬのだけは免れようと避難する住民たちの姿がそこここに見える。前夜、またも多くの家が爆撃を受けて、今朝から、さらに大勢の人が避難を始めた。私も多くの残骸をまのあたりにした。

 今朝、イスラエル軍が撒いたビラに、集団的懲罰として北部一帯を爆撃すると書いてあり、住民たちはそれを信じた。今、ジャバリヤの複数のPRCSステーションにはどこにも明りはついていない。つい先ほど停電してしまったのだ。寒さと闇の中、戸外の爆裂音はいっそう大きく響きわたる。

 砲撃で立ち昇る刺激性の煙が空気を汚していく。戦闘機と戦車とブルドーザーと戦艦で完全に包囲されているという感覚がどんどん強まっていく。ガザ攻撃の最新ニュースが流れる。ガザ市のパレスチナ・モスクの近くの孤児院が爆撃された。次はパレスチナ・モスクだと皆が口をそろえて言う。

 すでに少なくとも10のモスクが破壊されている。今日のイブラヒーム・アル・マカドマ・モスクの爆撃で死んだ人は11人、怪我をした人は50人。死者も負傷者も果てしなく増えていく。

 北西部からの、そして、この救急ステーションから遠く離れた東部からの救助を求める電話は、返事ができないままにやり過ごさなければならない。救急スタッフはICRC(赤十字国際委員会)経由でイスラエル相手に調整をしなければならない。なんと痛烈な皮肉だろう。

 占領者はガザから出る許可を与えず、占領者は侵攻し、その侵攻者は次々に人を殺し、重傷を負わせ、そして、あろうことか、自分たちが殺し、怪我を負わせた人たちを救急車が搬送する許可を与える権限まで持っているのだ。

 信じられないという思いが続いている。重い爆発音とアパッチヘリのプロペラ音も、夜の闇に撃ち込まれる銃撃のスタッカートも、結末のわからないまま、どことも知れない標的を直撃したミサイルの炸裂音も、何もかもが、ただひたすら信じられない。

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 エヴァ・バートレットはカナダ人の人道活動家、フリーランサー。2007年、西岸地区の各地に8カ月、カイロとラファ・クロッシングに4カ月滞在。2008年11月に第3次フリー・ガザ運動の船でガザに到着したのち、現地にとどまり、国際連帯運動(ISM)の一員として活動を続けている。現在、ISMメンバーは、救急車同伴活動を実施し、イスラエルのガザ空爆・地上侵攻の目撃証言を現地から発信している。

翻訳:山田和子

"They know no limits now"
Eva Bartlett writing from the occupied Gaza Strip, Live from
Palestine, 3 January 2009

原文:http://electronicintifada.net/v2/article10106.shtml

エレクトロニック・インティファーダ:
http://electronicintifada.net/new.shtml

バートレットさんのブログ(In Gaza):http://ingaza.wordpress.com/

ISM(国際連帯運動):http://www.palsolidarity.org/