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伊方原発事故時の大分
への影響予測評価
(大分講演会概要)

A原子力防災計画に欠けているもの

青山貞一

環境総合研究所顧問 東京都市大学名誉教授
掲載月日:2016年1月31日

             

原子力防災計画の枠国の決定的問題点

 原子力防災計画は、2012年10月、災害対策基本法の第40条、地域防災計画に原発事故を含めてUPZ自治体が当初2013年3月末までに策定することとなりました。しかし、従来原発直近のPAZの自治体しか原発事故に対応してこなかったこともあり、UPZ(概ね原発から30kmの範囲の基礎自治体)が突如、原子力防災計画の策定を義務づけられて当然のこととして戸惑うばかりであったに違いありません、。


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 日本全国にUPZ関連自治体は130ほどあるはずですが、全面的に情報を公開し市民の参加により原子力防災計画を策定したのは、おそらく北海道のニセコ町だけです。青山貞一は片山ニセコ町長から参加の要請を受け、都合10回の原子力防災計画策定専門委員会に参加しました。


出典:青山貞一パワーポイント

 後日分かったこととして、日本全国の約130のUPZ自治体で市民参加、情報公開のもとに計画を策定したのはやはりこのニセコ町だけだったのです。これほど重要な計画はないはずですが、それを短期間のうちに情報公開も市民参加もなく策定すること自体、いかにも原発再稼働のためのアリバイづくりの感が否めませんでした。

 2012年10月から原子力防災計画策定専門委員会がはじまりましたが、国、北海道からは2013年3月までに計画を策定という要請がありました。UPZ自治体はもともと原子力防災や原子力関連の基礎知識をもつ職員がいない場合が圧倒的です。そのなかで、わずか半年余りで計画を策定するということ自体、あまりにも無謀と言えます。

 ニセコ町では、委員会開催の前日(2012年10月2日)に町、民を集めて青山の講演会を開催しました。下の左の写真はニセコ町での町民向けの講演会の様子を写したものです。


右側がニセコ町の片山町長
出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 下はニセコ町の原子力防災計画策定専門委員会の最終回(第10回目)を開催している様子を撮影したものです。


最終委員会(第10回)委員会の様子      撮影:斎藤真実
出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 以下は青山が関わった北海道ニセコ町における枠組みです。以下の枠組みは全国各地のUPZ自治体にほぼ共通に関わるものと考えられます。

 しかし、現在の我が国の原子力防御措置の全体的枠組み及び関連自治体が策定した原子力防災計画には気象、地形を考慮した放射性物質の拡散シミュレーションはまったく存在していません


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 ちなみに北海道電力泊原発周辺は下図に見るように、非常に山、谷が多く複雑な地形となっています。


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 とりわけ、ニセコ町の周辺には羊蹄山はじめ多数の高い山があります。だとすれば、当然のこととして原発事故時の放射性物質の拡散はこれらの地形により大きな影響を受けるはずです。


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 下は北海道電力泊原発事故が起き北風、2m/sが吹いている場合の風下への放射性物質の拡散を地形を考慮した場合としない場合について示したものです。

 見て分かるようにまったく拡散の仕方は異なります。原子力防災計画では、この種の地形を考慮したシミュレーションはもとより、地形、気象、外侮被曝の放射線量についての記述がありません。

 避難先も札幌市一辺倒です。しかし、可能性が高い西風の場合には、札幌市にも高線量の放射性物質が到達することが私達のシミュレーションで分かっています。


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 下はそれを伝える毎日新聞の記事です。これは2012年8月に札幌市で行った青山の講演の内容を伝える記事です。このような場合には、UPZ13地区の住民は後ろから高い線量の放射性物質が追いかけてくるなかを札幌に向かうことになるのです。しかも、主要道路はきわめて限られており、冬場には、その道路の交通が雪でとまる可能性もあります。


出典:毎日新聞 2012年8月5日号


原子力防災計画の枠国とEAL、OILの関係

 ここでの最大の問題は、UPZ自治体(原則20μSv/h超)では、1週間以内に避難するとなっていることです。すなわち、高濃度が予想される初期曝露を前提としていることです。


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 EALは緊急時活動レベル、OILは運用上の行政(市町村長)が民間(地域住民など)に介入するレベルを意味します。


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 当然のこととして、原発事故により影響を受けるのは人間だけでなく、生物全般です。日本の原発はすべて沿岸域に立地しています。もし、事故が起きれば多くの放射性物質は海に流れ混みます。

 伊方原発の場合は、豊後水道、瀬戸内海に面しており、万一事故が起きると半閉鎖性の水域である瀬戸内海に放射性物質が流れ込み、なかなか外海にでなくなります。また食物連鎖、生物濃縮により魚介のベクレル値は高くなります。さらに当初は近海魚が汚染されますが、次第に底生魚類も汚染されて行きます。

 下の動画、福島原発で本当に怖いのは魚介汚染は、上記について詳細に青山が話したものです。ぜひ、ご覧ください。


https://www.youtube.com/watch?v=ALvIdgc824Q
 

つづく