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前原大臣は思いつき発言
を止め地道な対応を!

〜羽田空港アクセス〜

青山貞一
28 Dec. 2009
独立系メディア「今日のコラム」


 すべてが唐突の前原国土交通大臣が、思いつきを次々公言し、大騒ぎとなっている。そこには理念も手法も現場主義的なカンもない。さらに問題なのは、巨額な資金が必要とされる土建系公共事業、はこものを新たに提起していることだ。

 他の大臣もそうだが、なんと言っても国土交通大臣という立場にある人物の言うことである。ワンクッションおいてから公言して欲しいものだ。

 私は、大騒ぎになることがすべて悪いとは言わない。ただ、せっかく頭がついているのだから、もう少し考えてから発言すべきだと言いたい。

 たとえば八ッ場ダム事業についても、中止そのものは公約であり言うのはよいが、前後、見境なく公約だから止めるでは困る。進め方というものがあるもんだ。事実、その後、どうみても自民党時代の御用学者らを含めた検討委員会を開き、今後を検討しているらしいが、まさに本末転倒とはこのことだ。

 前原大臣の他の大きな思いつき発言としては、JAL再建に関するものや羽田のハブ空港化に関するものがある。当然のこととして、JAL再建や羽田のハブ化もそれなりのスキーム、グランドデザイン、シナリオ、そして手法を念頭に話さなければならない。日替わりメニューの定食では困るのだ。

 そして2009年12月27日、羽田のハブ化の一環らしいが、同じ飛行機・空港関連でも、新幹線の羽田乗り入れについて唐突にJR東海に思いつきを話したと言う。。

 前原国交大臣は12月27日のテレビ番組で羽田空港の利便性を高めるため、新幹線の乗り入れを検討するようJR東海に打診したことを明らかにした。その理由は、羽田空港近くに新幹線の車両基地と線路があることだと言う。

新幹線の羽田乗り入れ打診 国交相構想、JRは拒否

 前原誠司国土交通相は27日のテレビ番組で、羽田空港の利便性を高めるため新幹線の乗り入れを検討するようJR東海に打診したことを明らかにした。ただ、東海道新幹線のダイヤが過密なことなどを理由に同社から断られたという。

 前原氏は番組後、記者団に、羽田空港近くに新幹線の車両基地と線路があることを指摘し「もったいないとずっと思っていた」と語った。

 JR東海は同日、取材に対し前原氏の構想をあらためて「現状では実現は難しい」(広報担当)としているが、前原氏は「JR東海にその気になってもらわないとできない話。私はあきらめた訳ではない。引き続き話をしていきたい」と意欲を示した。

 今後は、前原氏が提唱する羽田のハブ(拠点)空港化に関連して、国交省の成長戦略会議などでテーマになる可能性もある。

 羽田空港への交通機関の乗り入れは現在、東京モノレールと京浜急行電鉄のほか、民間のリムジンバスも運行しているが、東京駅と乗り換えなしで結ぶのは一部のリムジンバスのみ。

 松沢成文神奈川県知事らは、成田空港と羽田をつなぐリニアモーターカー建設を提案している。

中国新聞


 速度(と安全)を最大の売り物にしている日本の新幹線を一大臣や一知事の思いつきで、どうこうしようとJRに言うこと自体おかしい。

 古い話になるが、かの有名なトンデモ空港である静岡空港の工事が進んだ時点で、当時の知事、石川知事は幾度となく、JR東海に対し静岡空港の滑走路の下を通過する東海道新幹線に空港駅をトンネル内につくれないかと打診した。

 たまたま私達は、静岡空港建設そのものを批判するため、公共事業チェック議員の会の中村敦夫参議院議員(当時)、佐藤謙一郎衆議院議員(当時)、保坂展人衆議院議員(当時)、金田誠一衆議院議員(当時)ら国会議員らと一緒に静岡県の知事室に出かけた。

 石川知事(当時)は、複数のテレビカメラが回る中で「開口一番、あなた方は今頃何しに来たのですか?」と言ってのけたのにびっくりしたのだが、実は私達は石川知事に会う前に、JR東海の副社長と静岡市内某所で会った。

 理由はひとつである。当時、静岡県の知事や副知事が何度となく静岡空港の滑走路の直下の地下に空港駅を設置することを、あたかもJR東海が認めたかの発言をアチコチでしていたので、その真意を確かめるためだった。


右側は国会議員

 下は会議に対応する石川県静岡知事(当時)ら。多くのテレビ局がカメラを回している様子が分かる。


左側は石川静岡県知事ら(当時)

 案の定、JR東海側は再三、静岡県側に静岡駅を出発しすぐの場所に空港駅などつくりようもないこと、速度が大幅に下がり新幹線の意味がなくなることなどを理由に、ハッキリ断っていた。

 にも係わらず、知事や副知事(当時)があたかもJR東海が駅設置を容認しているかのごとく発言していることに露骨に不快感を示していたのである。

 今回の前原大臣の思いつきのきっかけは、おそらく大井操車場を前提にしてのことであろう。

 東京駅側から見た場合、東京駅始発であれ、品川駅始発であれ、羽田空港に新幹線が向かうとなれば、たとえば下図の点線部分に路線を選定せざる得ない。しかも、新横浜よりさらに東京側で新幹線が停車することになる。

 停車問題以外に距離も伸び、かなり湾曲した路線となる。その結果、速度はガタ落ちとなる。また半端じゃない用地費、工事費もかかるだろう。

 鉄道関連の土建業者は喜ぶだろうが、お呼びではないだろう。

 ちなみに、今でも品川駅から京急の特快に乗れば16分あまりで羽田空港駅に到着する。それこそ数千億円いやおそらく1兆円を超すカネをかけてどうするのか?



 羽田空港へのアクセスに関し、より具体的な提案がある。この提案は以前からその道の関係者の間で練られてきたものだが、既得権益の勢力によって未だ実現していない。

 現在、東京都西部地域や東京都の城南地域に住む数百万の人々が羽田に行く場合、敢えて品川駅や浜松町を経由しなければならない。東京西部の人々も一旦品川駅まででから京急で羽田に向かっている。

 だが下の図で赤い部分を繋ぐと、東急(多摩川線、池上線)やJR京浜東北線の蒲田駅と京急蒲田駅がつながり、一気に空港に行けることになる。



 上の赤線部分だが、蒲田から京急蒲田は距離にして600m程度である。両駅の間には幅員のある一般道があるので、その地下を東急線が通過すればあっという間に空港駅に到着する。また空港関係者の朝夕の通勤ラッシュも改善されるだろう。



 前原大臣は、大言壮語ではなく、より生活者の立場にたって現実味、実行可能性が既得権益によって実現していない問題にこそ力を入れるべきだ。そもそも蒲田駅と京急蒲田駅がなぜ結ばれないのかは、七不思議である。

 すぐに考えられるのは、京急の既得権益が東急に取られることだろうが、背後地3000万人以上を抱える巨大な羽田空港へのアクセスを考えると、そんな既得権益にこだわっている場合ではないだろう。

 前原大臣は即刻、事業認可をくだすべできである!

追記

 その後調べたら地下鉄副都心線(東京メトロ13号線)が渋谷駅から東急東横線に乗り入れ、田園調布で私が提案している多摩川線で蒲田さらに京浜蒲田、羽田と延伸する計画路線図があることが分かった。以下にその計画路線図を示す。

 この場合でも、地下鉄副都心線(13号線)はすでに渋谷まで来ており、渋谷から蒲田までは東急の既存路線を使うので、新規工事することになるのは、蒲田と京浜蒲田の約600mである。

 田園調布には東急東横線だけでなく、東急目黒線(東京メトロ南北線、都営地下鉄)も通るから、下図の路線が供用されると、東京西部(埼玉を含む)、都心部、東京北部(埼玉を含む)から羽田空港にアクセスするのが容易となる、