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震災復興の時になぜ増税なのか

今の消費増税は

国家破綻のはじまり

日刊ゲンダイ

28 March 2012


震災復興の時になぜ増税なのか 今の消費増税は国家破綻のはじまり
(日刊ゲンダイ2012/3/28)

野田首相が消費増税に政治生命かける裏の理由

 深夜に及んだ民主党の消費税論議は、結局、怒号が飛び交うなか、前原誠司政調会長が一任を取り付ける形で強引に議論を打ち切った。

 野田首相は党内の反対を押し切って、30日に「閣議決定」を行い、消費税アップ法案を国会に提出する予定だ。それにしても分からないのが、なぜ野田首相はここまで消費税増税に執着するのかだ。

 いま消費税をアップしても、いいことはなにもないはず。党内の亀裂を深め、政権を弱体化させるだけだ。国民も反対している。そもそも野田首相だって野党時代は消費税増税に反対していた。

 なのに、総理に就いた途端、消費税アップに血眼になり、「政治生命をかけて、命をかけて今国会で成立させる」とムキになっているのだから、理解不能だ。どうして消費税アップに血道を上げているのか。いったいどんな裏事情があるのか。

◆ドジョウ首相が消費税アップで暴走している第1の理由は、目くらましだ

 誰が考えても、いま政治が取り組むべき課題は、消費税アップじゃない。“震災復興”と“原発事故の収束”である。野田首相も施政方針演説で「被災地の復興と原発事故の収束が最優先課題だ」と明言していた。しかし、震災復興も原発事故も、まったく進んでいない。ガレキの90%以上は処理されないままだ。

 もし、マスコミと国民の関心がこの2つに集中し、政治の一大テーマになっていたら、いま頃「首相はなにをやっているんだ」と批判が集中し、さらに支持率が下落していたのは間違いない。ドジョウ首相が、震災と原発から国民の関心をそらすことを狙ったのはミエミエだ。

◆第2は、税収を上げるホンモノの「景気対策」が皆無だからだ

 「野田首相は『このままでは日本はギリシャになる』と国民を脅して消費税アップを強行しようとしていますが、税収を増やすために増税するなんて下策もいいところです。税収増を図りたいなら、まずは景気を回復させること。それが上策だし、早道です。好景気になれば、自然に所得税や法人税が増えます。

 デフレ不況に沈んでいる現在は、税収が40兆円しかないが、好景気の頃は60兆円あった。60兆円はムリだとしても、50兆円くらいの税収は可能です。日銀が1%のインフレターゲットもどきを発表しただけで、あっという間に株価が1万円を突破した。知恵を絞れば景気対策はいくらでもある。野田首相が、安易に消費税アップで突っ走っているのは、景気対策をヤル気がない証拠です」(神奈川大名誉教授・清水嘉治氏=経済学)

 アメリカのクリントン政権も、ブッシュ政権から3000億ドルの財政赤字を引き継いだが、“減税”と“公共投資”で景気を回復させ、5年後の97年には赤字を解消し、黒字に転じさせている。 景気対策に見向きもしないドジョウ首相はどうしようもない。

◆野田首相が消費税増税にシャカリキになっている第3の理由は、保身のためだ

 政治評論家の本澤二郎氏が言う。

 「党内を分裂させてでも、首相が消費税アップ法案を成立させようとしているのは、政権維持のためです。いま首相を支えているのは、財務省、大企業、大マスコミの3つ。この3大勢力は、是が非でも消費税をアップさせたい。日本の支配層、富裕層は、増税の矛先が金持ちや大企業に向かうことを恐れ、消費税をアップさせることで税収増を図ろうとしている。首相を支えているのも、消費税アップを実現させるためです。もし、断念したら野田首相に用はない。首相が消費税アップに突き進んでいるのも、それが分かっているからです。政権を維持するためには、突っ走るしかないのです」 ドジョウ首相は「ここで決断しなければ、野田内閣の存在意義はない」と、もっともらしいことを口にしているが、消費税アップに執着する裏には、薄汚い理由があるのだ。

◆消費税アップで、むしろ財政は悪化

 しかし、ただでさえ日本は深刻なデフレ不況にあえいでいるのに、いま消費税増税を強行したら、ニッチもサッチもいかなくなるのは目に見えている。国家破綻の引き金となりかねない。

 「このタイミングで消費税を10%に引き上げたら、大不況に陥りますよ。国民が一斉に財布の紐を締め、すさまじい消費不況が襲ってくる。GDPの6割が個人消費なのに、これ以上、消費が冷え込んだら、日本経済はもたない。とくに厳しいのは、低所得層です。消費税は“逆進性”が強いから、富裕層は痛みが小さいが、低所得者は痛みが大きい。すでに国民の6人に1人が年収112万円未満なのに、消費税がアップしたら、深刻な事態を招きますよ」(経済ジャーナリスト・荻原博子氏)

 最悪なのは、消費税増税は国民を苦しめるだけで、財政再建にもつながらないことだ。

 「野田内閣は消費税を10%に上げれば、税収が13・5兆円増えると皮算用しているようですが、そんな単純にはいきませんよ。むしろ税収を減らす恐れが強い。97年に消費税を3%から5%に上げた時も、景気を悪化させ、当時54兆円あった国税収入は、その後下がりつづけている。古今東西、増税だけで財政再建を果たした国はない。それが歴史の教訓です」(清水嘉治氏=前出)

◆悪徳役人だけがニンマリの最悪

 消費税アップに暴走する野田首相について、小沢一郎が「なぜ、このタイミングで消費税アップを進めるのか分からない」「国民の気持ちが分かっていない」と漏らしたそうだが、本当にその通りだ。いま日本は、総力を挙げて震災復興に取り組まなければならないのに、なぜ増税なのか。

 消費税増税を許したら、悪徳官僚のやりたい放題を許し、税金を食い物にされるだけだ。

 「霞が関の役人たちが野田首相を背後から操って増税させようとしているのは、自分たちの利権を維持するためです。役人は税金が増えれば増えるほど、オイシイ思いができる。税収が多ければ、ハコモノ天国、天下り天国も拡大できる。逆に、税収が減るとオイシイ思いができない。ヘタしたら利権を失ってしまう。彼らが消費税アップを強行しようとしているのは、自由に使える税金を増やしたいからです。最後は消費税を20%にするつもりでしょう。消費税を20%にすれば、景気が悪くても安定的に約50兆円の税金が入ってきますからね」(本澤二郎氏=前出)

 消費税10%を許したら、取り返しがつかない。10%になったら景気を悪化させ、所得税や法人税が落ち込むから、さらに消費税を上げなければならない悪循環に陥ってしまう。このままでは、日本は野田首相に破綻させられる。止めるには、いましかない。国民は黙っていてはダメだ。