エントランスへはここをクリック   

情報操作による世論誘導
A「国策捜査」とメディア報道
青山貞一 17 May 2009
無断転載禁
独立系メディア「今日のコラム」


 東京地検特捜部による一方的な違法な情報漏洩を大メディアが連日連夜垂れ流すことで世論を誘導した典型が、3月3日にはじまった小沢前民主党代表第一公設秘書の突然の逮捕に始まった小沢氏への執拗なバッシングではなかろうか。

 言うまでもなく、検察側がしたことは、刑事事件に関する捜査情報の故意あるいは意図的な漏洩である。

 これは間違いなく国家公務員法、公務員服務規程などに違反する行為である。刑事事件であれば当然のこととして、最終的に有罪・無罪及び量刑が確定するまで逮捕された被疑者は「推定無罪」でなければならない。


■国家公務員の守秘義務規定

 公務員の守秘義務は、国家公務員法第100条に守秘義務が定められ、同108条で守秘義務違反にかかる罰則規定が明記されている。
 
第100条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。

 前項の許可は、法律又は政令の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。

 前3項の規定は、人事院で扱われる調査又は審理の際人事院から求められる情報に関しては、これを適用しない。

何人も、人事院の権限によつて行われる調査又は審理に際して、秘密の又は公表を制限された情報を陳述し又は証言することを人事院から求められた場合には、何人からも許可を受ける必要がない。

人事院が正式に要求した情報について、人事院に対して、陳述及び証言を行わなかつた者は、この法律の罰則の適用を受けなければならない。
 前項の規定は、第18条の4の規定により権限の委任を受けた再就職等監視委員会が行う調査について準用する。この場合において、同項中「人事院」とあるのは「再就職等監視委員会」と、「調査又は審理」とあるのは「調査」と読み替えるものとする。

...

第109条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

...

12.第100条第1項若しくは第2項又は第106条の12第1項の規定に違反して秘密を漏らした者

...

 にもかかわらず、地検特捜部はじめ検察庁側は、連日連夜、大メディアに対し小沢前代表についてまさに「一方的な情報提供」(=リーク)を繰り返した。

 ちなみにこの2009年5月21日からはじまる裁判員制度では、裁判員には罰則付きで公判前整理手続に即して提供される各種の捜査情報、証拠について、厳格な守秘が課せられている。

 裁判員制度施行以前の段階でも公判前整理手続で警察・検察から弁護士側に提供される捜査情報や証拠は、マスメディアや第三者に提供することを実質的に厳しく禁じている(以下の解説参照)。以下のWikipedia解説では、慣例となっているが、実際には非公開とされる。

 事実私の教え子が不法に逮捕された刑事事件では私にも捜査情報や証拠の提供は公判前整理手続を理由になされなかった。


公判前整理手続


 刑事裁判で公判前に争点を絞り込む手続。刑事訴訟法316条の2以下に定めがある。類似する手続に、公判と公判との間で行われる期日間整理手続がある。

 裁判員制度の導入をにらみ、刑事裁判の充実・迅速化を図るため、2005年(平成17年)11月の改正刑事訴訟法施行で導入された。

 裁判員制度では対象となる刑事裁判全てがこの手続に付される。裁判官、検察官、弁護人が初公判前に協議し、証拠や争点を絞り込んで審理計画を立てる。公開、非公開の規定はないが、慣例として大半が非公開で行われている。

 検察官は証明予定事実を明らかにし、証拠を開示。弁護人も争点を明示し、自らの証拠を示さなければならない。手続には被告人も出席できる。採用する証拠や証人、公判日程はこの場で決まり、終了後は新たな証拠請求が制限される。初公判では検察、弁護側双方が冒頭陳述を行い、手続の結果を裁判所が説明する。

 公判は連日開廷が原則。公判の途中に同様の作業をする期日間整理手続もある。

 公判前整理手続の終了後は新たな証拠請求が制限されるため、被告人に不利になる場合もあると言われている。

公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、「やむを得ない事由によって公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかったものを除き」公判前整理手続又は期日間整理手続が終わった後には、証拠調べを請求することができない(刑事訴訟法316条の32第1項)。 なお、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることもできる(同条2項)。


 にもかかわらず、西松建設関連の事件、とりわけ小沢前代表に関して、検察側は何ら説明責任を負うこともなく、違法な「一方的な情報提供」(=リーク)を繰り返したのである。

 半世紀ぶりに政権交代が起こる可能性が高い時期に、いきなり野党第一党代表の公設秘書を逮捕すること自体異例中の異例なことである。

 しかも、西松建設問題で政治団体からパーティー券で多額のカネを得、事務所借用に関連し多額の便宜を受け、さらに関西新空港、羽田空港拡張などの工事に関連し疑惑をもたれていた二階経産大臣について東京地検特捜部は、情報リークはほとんどしていない。

 職務権限を有する自民党の大臣の行状に目をつぶっていたのでは、民主党潰し、政権交代潰しの「国策操作」と言われても仕方ない。

"西松事件"二階立件断念で捜査終結 日刊ゲンダイ

 与党で運輸大臣を歴任し、現職の経済産業大臣である二階大臣については、政治資金規正法や公職選挙法との関連はもとより、職務権限との関連においても数倍厳しい捜査があって当然である。にもかかわらず、まさに地検は「お目こぼし」としたのである。

.......

 問題は東京地検など検察側だけでない。

 日本の大メディアは、こぞって検察側による「一方的な情報提供」(=リーク)を何一つチェックすることなく、現場に行って独自に取材をすることもないまま、検察側による違法リークを、3月3日以降、そのまま各紙ともに一面に記事として垂れ流しした。

 グーグル検索により、記事やテレビニュースの数、字数、時間で定量的に小沢氏と二階氏の大メディア露出を比較してみた。すると日本経済新聞以外は13:1と圧倒的に小沢氏の記事が多い。

 もとより大メディアが独自に調査し報道せず、すべて検察側の違法リークをそのまま垂れ流しているのだから、よくて13:1は、そのまま地検側が故意をもって意図的に小沢氏を標的にして一方的に情報を流したことの証左となる。

 以下、倍数は、小沢/二階 の関連記事、関連論考数などを示す。


■西松事件グーグル検索結果   2009年5月17日 

 キーワード  小沢 西松 読売新聞      627000
          二階 西松 読売新聞      48900
            12.8倍

          小沢 西松 朝日新聞     788000
          二階 西松 朝日新聞      65200
            12.0倍

          小沢 西松 日本経済新聞   213000
          二階 西松 日本経済新聞   498000
            マイナス2.3倍

          小沢 西松 毎日新聞    1120000
          二階 西松 毎日新聞      80500
            13.9倍

          小沢 西松 産経新聞     679000
          二階 西松 産経新聞      57100
            11.9倍


 日本経済新聞が二階関連記事の方が小沢関連記事より2倍多いことは注目に値する。事実、日経には二階関連記事、それも現地取材による記事が多かった。

 以下は地方紙の場合である。地方紙は全国紙の場合に比べてかなりばらつきがある。

 中日、京都など二階氏の事務所に近い地域で二階氏の方が2倍ほど多いが、河北新報が22.2倍、西日本新聞は19.4倍、北海道新聞が18倍、信濃毎日は13.3と全国紙以上に小沢氏が多くなっている。その他は、後述するテレビ並みの2−3倍、中日新聞と京都新聞は二階氏2倍ほど多くなっている。


■西松事件グーグル検索結果   2009年5月17日 

 キーワード  小沢 西松 中日新聞     26500
          二階 西松 中日新聞     52800
            マイナス 2.0倍

          小沢 西松 西日本新聞   369000
          二階 西松 西日本新聞    19000
            19.4倍

          小沢 西松 北海道新聞   596000
          二階 西松 北海道新聞    33500
            18.0倍

          小沢 西松 静岡新聞      26000
          二階 西松 静岡新聞      17400
            1.5倍

          小沢 西松 中国新聞      192000
          二階 西松 中国新聞       54200
            3.5倍

          小沢 西松 東京新聞     186000
          二階 西松 東京新聞      74000
            2.5倍

          小沢 西松 京都新聞      75000
          二階 西松 京都新聞       26000
            2.9倍

           小沢 西松 河北新報      67200
          二階 西松 河北新報        3030
            22.2倍

          小沢 西松 神戸新聞      41100
          二階 西松 神戸新聞        2680
            15.3倍

          小沢 西松 京都新聞      75000
          二階 西松 京都新聞      26000
            マイナス2.3倍

          小沢 西松 信濃毎日新聞    54900
          二階 西松 信濃毎日新聞     4140
            13.3倍

          小沢 西松 岩手日報     106000
          二階 西松 岩手日報      54100
            2.0倍


 次にテレビ系メディアについて見てみよう。

 全体としての傾向は、小沢氏に比べ二階氏の関連ニュースは少ない(2−3倍)が、新聞記事ほど(日経以外は13倍)の開きはない。

 とは言え、NHKは13.3倍と新聞並み、日本テレビに至っては25.1倍と突出して小沢氏関連ニュースが多いことがわかる。きわめて異常な数値である!!


■西松事件グーグル検索結果   2009年5月17日 

 キーワード  小沢 西松 NHK        918000
          二階 西松 NHK         69100
            13.3倍

          小沢 西松 TBS        124000
          二階 西松 TBS         52700
             2.6倍

          小沢 西松 テレビ東京     139000
          二階 西松 テレビ東京     50100
             2.3倍

          小沢 西松 テレビ朝日     118000
          二階 西松 テレビ朝日     303000
             2.8倍 

          小沢 西松 日本テレビ    1540000
          二階 西松 日本テレビ      61300
            25.1倍

          小沢 西松 フジテレビ     411000
          二階 西松 フジテレビ     128000
            3.2倍


 では、新聞記事以外のインターネットブログ、Webはどうか? 

 それについては、以下の通り、小沢:二階は2:1に過ぎない。

 すなわち、大メディア以外は二階氏の疑惑に大いに注目しているということである。もちろん、インターネット系には、いわゆる事実報道記事以外の論評が多く含まれる。論評において二階氏が問題となったと言うことである。


■西松事件関連グーグル検索結果   2009年5月17日 

 キーワード  小沢 西松            933000
          二階 西松            436000
           2.1倍

 では、読売、朝日、毎日など大手以外の地方紙に記事を配信する共同通信と時事通信はどうか? 結果は共同通信がインターネットとほぼ同じ2.2倍、時事通信はマイナス2.1倍、すなわち二階氏関連記事の方が日経新聞同様2倍多いことがわかった。


■西松事件関連グーグル検索結果   2009年5月17日 

 キーワード  小沢 西松 共同通信       73800
          二階 西松 共同通信      32900
            2.2倍

          小沢 西松 時事通信     122000
          二階 西松 時事通信     257000
            マイナス2.1倍

 さらにおまけとしてロイター、CNNの日本語版についても調査してみた。


■西松事件関連グーグル検索結果   2009年5月17日 

 キーワード  小沢 西松 ロイター        44900
          二階 西松 ロイター       20400
            2.2倍

          小沢 西松 CNN         63100
          二階 西松 CNN          8300
            7.6倍

 上記の調査結果を総括すれば、以下の通りとなる。

(1)日本テレビ(25)、河北新報(22)、西日本新聞(19)、北海道新聞(18)、神戸新聞(15)が15〜25倍と小沢氏関連が二階氏より突出している、

(2)日本経済新聞以外の読売新聞、朝日新聞、毎日新聞の大新聞と信濃毎日新聞、それにNHKが12〜13倍、CNNは7.6倍であった

(3)それ以外の地方紙、テレビ局、共同通信、ロイターはおおよそ2〜3倍であった、

(4)さらに大手メディアの日本経済新聞、地方紙の中日新聞、京都新聞、通信社の時事通信がマイナス2前後と、逆に二階氏関連が小沢氏関連より2倍である


ことが分かった。

 上記から判明したことは、日本テレビと一部地方紙は別(論外)としても、大メディアほどは東京地検特捜部のみならず、高検、最高検、警察庁などの幹部からの「一方的な情報提供」(=リーク)を、そのまま垂れ流し的に記事にしているのである。逆に大手新聞社でも日本経済新聞、共同、時事の通信2社、他の地方紙、他のテレビ局は比較的メディアとしてのバランス感覚をもっているといえる。

........

 ところで独自調査報道をしない大メディアの二階関連記事が圧倒的に少なかったのは、検察側の二階に関連する捜査情報のリークがほとんど無かったからに他ならない。

 政府や司法当局は否定するが、今回の異例、異常な小沢前代表公設第一秘書の突然の逮捕劇が「国策操作」であることを裏付けたのは、いうまでもなく、漆間官房副長官の言説である。

 女性スキャンダルで辞任した鴻池官房副長官同様、官邸の中核にいる漆間巌官房副長官(前警察庁長官)が、大メディアの記者との懇談の場でオフレコとしながら「操作は自民党に及ばない」と述べたのである。これを「国策捜査」と言わずして何というのであろうか?

 ちなみに、東京地検特捜部 国策捜査 の2つのキーワードを使いグーグルで検索すると35,600件ヒットする。それだけ多くの識者が疑義を呈しているわけだ。

 西松事件で公に発言している元東京地検特捜部の検事、郷原信夫名城大教授は、検察側からメディアにもれる捜査情報の多くは、地検から高検、最高検など上層部に情報がもちあげられるときであると言明している。

 となれば、3月3日以降の大洪水的な小沢バッシングの情報漏洩は、漆間官房副長官の発言からも見てとれるように、東京地検特捜部だけでなく、上層部から法務省や官邸側に流れていた可能性も高い。

◆東京地検特捜部OB対決<堀田vs郷原> Videnews.com

8 市民による自主管理 Citizen Control 市民権利としての参加・
市民権力の段階

Degrees of
Citizen Power
   ↑
7 部分的な権限委譲 Delegated Power
   ↑
6 官民による共同作業 Partnership
   ↑
5 形式的な参加機会の増加 Placation 形式参加の段階
Degrees of
Tokenism  
   
4 形式的な意見聴取 Consultation
   ↑
3 一方的な情報提供 Informing
   ↑
2 不満をそらす操作 Therapy 非参加・実質的な
市民無視

Nonparticipation
   
1 情報操作による世論誘導 Manipulation
図1 「民度を計る」ための8段階の階段
原典:シェリー・アーンシュタイン(米国の社会学者)
青山修正版


 上記をシェリー・アーンシュタインの図との関連で見れば、


(1)検察という司法機関による違法な「一方的な情報提供」が最初にあり、

(2)それを受けた大メディアが何ら検証、事実確認することがないまま記事にし垂れ流す、

(3)それにより圧倒的な発行部数をもつ新聞と圧倒的な視聴率を持つテレビによって「世論」が形づくられることになる。そこで

(4)国家による「情報操作による世論誘導



がなされることになる。

 ここでの大きな課題は、(1)から(4)のプロセスで、第三者による適正手続やチェックが入り込む余地がないことである。すなわち、捜査当局による情報リークはたえず匿名で行われ、それを報道するメディアは何ら読者からのチェックを受けず、投書をしても圧倒的大部分は無視されるからだ。

 西松事件では、元東京地検特捜部の検事、郷原信夫名城大教授が要所で(1)についてきわめて貴重な発言をされたこと、また(1)から(4)のプロセス全体でインターネットのブログやWebで多くの識者から本質的な批判がなされたことがせめてもの救いであったが、大メディアが政府や司法当局の広報機関と成り下がっている現実は見過ごせない。
 

つづく