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高すぎ日系航空会社の
燃料サーチャージ


青山貞一


掲載月日:2008年8月6日



高すぎ日系航空会社…燃油サーチャージ金額差カラクリ

夕刊フジ - 2008/8/4 17:00

 海外旅行の際に徴収される「燃油サーチャージ」への不満が高まっている。世界的な原油高は周知の事実で、旅行者も支払いそのものは納得しているものの、問題はその金額。同じ区間でも航空会社ごとに料金に格段の開きがあり、特に、「日系航空会社の高さが目立っている」との声が上がっている。

 「(燃料高が)航空会社の努力で吸収できないのは分かるが、日系と外国キャリア(=航空会社)の金額差は説明がつかない。JALに至っては原油高リスクを確実に顧客に転化できていることが評価され、海外格付けもアップした。これでは、旅行者の不満を直接受けるわれわれ旅行会社の立場がない」

 大手旅行会社幹部がこう嘆くように、燃油サーチャージに対する旅行者の不満の多くは、旅行会社に対してぶつけられる。だが、彼らは燃料費の値上がりに対し、航空会社が臨時で徴収する追加料金を代行して収受しているに過ぎない。

 一般消費者には分かりにくい価格設定の仕組みについて、武蔵工業大の青山貞一教授(環境学)は「燃油サーチャージは、直近3カ月のシンガポール・ケロシン市況(=航空燃料相場)の平均額を基準に航空会社ごとにタリフ(価格表)を設定し、四半期ごとに改訂。発券開始月の1.5カ月前に、各社ごとに新料金を発表する」と解説。

 そのうえで、「各社の体力や搭乗率によって差が出るのはやむを得ないが、それでも日系キャリアのサーチャージは高すぎる。日本の経営努力は国際的に見れば話にならないレベル。寡占による甘えの弊害だ」と話す。

 確かに、価格比較サイト「価格.com」(7月30日)で比べても、東京?ロサンゼルス線でシンガポール航空3万6400円に対し、日系2社は5万6000円。ほか、ハワイ線でユナイテッド航空2万8000円→4万円。パリ線でガルーダインドネシア航空3万400円→4万円。香港線でキャセイパシフィック航空4800円→2万1000円。バンコク線でタイ国際航空2万1800円→4万円という状況だ。

 すでに、海外航空各社の経営努力は限界を超えている。ジャンボジェット(B747?400)の燃費は1秒あたり1ガロン(約3.78リットル)で、東京?ロサンゼルスは単純計算で往復7万2000ガロン。直近のケロシン相場(08年6月)と、燃油サーチャージ導入直後の01年5月時点の差額が1ガロン3.19ドル。平均搭乗率8割(370人)でも、1人あたり6万7000円の追加負担となる計算なのだ。

 先の幹部は「海外キャリアは大幅リストラや原油先物で低く抑えているのに対し、利益確保のため必要以上に高く取るキャリアもある。JALはここ1年でV字回復した。再建中の米系キャリアも、急に業績回復しているのはサーチャージのおかげ」と指摘する。

 JALは「弊社だけが突出していることはありえない。最大限自社努力したうえで、ご負担をお願いしている。指摘の件はまったく当てはまらない」。

 ANAは「他社との比較については答えようがない。ここ数年の決算を見ていただければ、必要以上に価格を上げていないことはご理解いただける」と反論している。