エントランスへはここをクリック   

冤罪を生み出す構造


(2)日本の捜査・起訴、刑事手続き

青山貞一
2007年4月30日

独立系メディア E−wave Tokyo

 ※ 本マニュアルは、東京都市大学横浜キャンパスの留学生のため
    に作成したものです。都市大横浜キャンパスでは入学時に
    学生に配布されています。青山貞一

 今後議論を進める上で、日本における捜査、起訴、公判などの刑事手続きを説明したい。

 説明のベースとしたのは、東大ロースクール生が留学生用にホームページ上で作成した「外国人留学生のための法律ハンドブック」である。

 以下、その「外国人留学生のための法律ハンドブック」をベースに説明する。

 まず、刑事上、被疑者を明らかにし、犯罪の事実を確定し、科すべき刑罰を定める手続のことを刑事手続という。

 本手続きの多くは刑事訴訟法(略して刑訴法)に規定されている。

 刑事手続は、大別し、@捜査、A起訴、B公判の3段階から構成される。

◆刑事手続の説明

出典:東大ロースクール生による外国人留学生のための法律ハンドブック

【捜査】

 捜査は被害者からの通報や告訴、第三者による告発、警察官の職務質問、犯人の自首など様々なきっかけで始まる。

 通常、警察が犯人を探し出し、警察から検察に身柄あるいは書類などにより事件が送られ、検察官による事件の終局処理(起訴・不起訴、起訴猶予など)が行われる。これら終局処理前までを捜査という。

 本段階では犯人と思われる人のことを被疑者とよぶ。

 被疑者には説明を自分がわかる言語でしてもらう権利がある。また、逮捕以後の黙秘権・弁護人依頼権・接見交通権も大事な権利である。

 * 犯人が少年(20歳未満)の場合には、手続きに違いがある。

【起訴】

 検察官は事件を最終的にどう処理するか決める。これを最終処理という。

 最終処理の種類、内容には、@起訴処分、A不起訴処分、B起訴猶予処分、C家庭裁判所送致(少年事件の場合)がある。

 起訴処分は公訴の提起とよばれる。

 裁判所の審判を求める処分、すなわち裁判を求める処分である。

 他方、公判請求される事件、すなわち裁判を求める処分の数倍の事件が略式命令請求される。略式命令請求を、通称、略式起訴と呼んでいる。

 捜査を受けながら不起訴処分となることも多い。検察に送られた事件の30−50%が不起訴処分となる。その大部分は起訴猶予処分とされる。

 検察によれば起訴猶予とは、起訴する条件は満たしているが諸事情を考慮して起訴しない処分である。

【公判】

 公判とは裁判所で行われる審判の手続きを意味する。

 公訴が提起されてから裁判が確定するまでの過程が公判手続である。

 起訴された時点で被疑者は被告人となる。被告人は通訳や翻訳を受ける権利が法的に保障されている。

 また、弁護人を経済的理由などで自分で選べない場合などで通称、国選弁護人の選任が請求となる。国選弁護人とは、被告人が弁護を受ける権利を国家が保証する制度のもとで専任される弁護士を意味する。

 ときとして裁判の内容に誤りがあったり、手続きに違法がある場合もある。

 そのための是正の手段として日本では3審制がとれる制度がある。上訴は、裁判により不利益をうけた者が、その裁判が確定する前(判決の宣告から14日以内)に不服を申し立てることにより、その変更や取消しを求めるものである。

 刑事事件の場合、検察官からも被告人からも可能である。一審を不服として上級裁判所(高等裁判所)に行くことを控訴、二審の内容を不服として上級裁判所(最高裁判所)に行くことを上告という。


◆詳細解説

1.捜査

@捜査とは


 犯罪を起こした犯人を発見し身柄を確保し、証拠を集めて事実を明らかにし、事件を解決するために行う活動を「捜査」という。

 捜査には任意の処分による任意捜査と、強制の処分による強制捜査がある。これらは主として警察が行うが検察が行うこともある。

A強制捜査と任意捜査


 捜査を進める上で、被疑者の身柄を拘束する場合はもちろん、人の住居に立ち入ったり、所有物を差し押さえたりする場合には、原則として法定の手続により令状の発付を受けて行われなければならない。

 これが強制捜査である。

 強制捜査以外の捜査を任意捜査と呼ぶ。

 これに協力するかどうかは原則として相手方の任意(自由意思によるということ)による。

 強制処分は対象となる人の重要な権利や利益に対しての制約や侵害をともなうので、法に定める厳格な要件・手続きにしたがわなければ許されない。

 また、刑事事件訴訟法によれば、許される場合であってもできるだけ強制でない処分(任意処分)によるべきだとされている(刑訴法197条1項)。

B任意取調べ

 任意捜査のひとつに関係者から事情を聞く「任意取調べ」がある。

 被疑者の任意取調べでは、身体の自由をうばわずに取り調べるが、供述拒否権(いわゆる黙秘権が告知される(刑訴法198条2項)。ただし弁解などを任意に供述することは可能。(「被疑者」とは警察が一定の証拠にもとづき犯人であると疑う者のこと)。

C逮捕

 「逮捕」とは法律の定める手続きに従い、必要に応じて被疑者の身体を拘束することをいう。

 逮捕状が被疑者に示されることが必要で、被疑者が外国人である場合には内容の理解のため翻訳文を一緒に示すことが求められている。

 逮捕されて取調べを受ける場合でも黙秘権があることに変わりはない。また、裁判にそなえ自分を守る必要が大きくなるので弁護人を依頼する権利も保障されている。

 この弁護人は立会人なく連絡することができる接見交通権が認められている。

D送検

 警察は、逮捕してから48時間以内にその身柄を検察に送る。

 これを検察への身柄送致(身柄送検)という。

 時間内に送致ができない場合は釈放しなければならない(刑訴法203条)。)

 また、被疑者を逮捕しないで任意捜査を行った場合には、事件の書類を検察に送る。これを検察への書類送致(書類送検)という。

E勾留請求

 身柄送検を受けた検察官が、その後も継続して被疑者を拘束する必要があると認める場合には、裁判官に対して24時間以内に勾留の請求を行う(刑訴法205条)。

 検察官が時間の制限内に勾留の請求または公訴の提起をしないときは、被疑者を釈放しなければならない。

 裁判官がその請求を認めると、勾留期間として10日間が認められる。

 やむをえない場合、検察官の請求により裁判官が更に10日間以内の延長を認めることもある。

 つまり、被疑者は最長で20日間勾留されることとなる 。

 被疑者が勾留されている間にも、様々な捜査活動が行われる(刑訴法207条、208条)。

 身柄の拘束は人としての権利を大きく制約するものなので、その期間はきびしく定められている。

 勾留請求については送検後24時間以内、かつ逮捕後72時間以内と法律で定められている。勾留期間は勾留を請求したときから起算されるので、逮捕にともなう身柄拘束の期間(最大72時間)とは別に計算される。そのため逮捕、勾留を通算すると身柄拘束の期間は最大23日になる。


2.起訴

 検察官は、勾留期間内に捜査を行い、被疑者を裁判にかけるかどうかの決定をする。

 また、被疑者を逮捕しないで(任意捜査で)検察に事件の書類送致(書類送検といいます)が行われた場合には、送致を受けた検察官は、事件について必要な捜査を行った後に、被疑者を裁判にかけるかどうかの決定を行う。

 裁判にかける場合を「起訴」、裁判にかけない場合を「不起訴」という。

@起訴

 起訴は、裁判所に被疑者の行為が罪になるか否かの審判を求めることで、次の2つがある。

(1)公判の請求:
 通常の公開の法廷での裁判を求める。

(2)略式命令請求(略式起訴ともいう): 
 一定の軽微な犯罪について、書面審理により罰金や科料を命ずる裁判を簡易裁判所に対して請求する。

A不起訴[不起訴処分]

 検察官が起訴しないと決めることで、これは大きく2つに分けられる。

(1)起訴猶予:起訴便宜主義(刑訴法248条)(*)に基づく刑事政策上の考慮から起訴しないこととする処分。

(2)その他:訴訟条件がない場合、有罪となる見込みがない場合など。

(*)起訴便宜主義:

 起訴する権限をもつ検察官が、法律の定める起訴のための一定の前提条件が満たされたうえで、さまざまな事情から訴追の必要を考慮し、起訴・不起訴のいずれかを決めるとする方式。犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況などが考慮されることになっている。

☆略式命令請求(刑事訴訟法461条)

 検察官が略式命令を請求することにより略式手続きが開始され、裁判所が適法かつ相当と認めると略式命令を発することができる。

 略式手続きは公開の法廷での審理を省略して、公判手続きを経ないで書類だけで審理を済ませてしまう、一定の財産刑(*)を科す簡易な手続きである。

 ただし、この場合、被疑者に略式手続きによることに異議のないこと、簡易裁判所に土地管轄だけでなく事物管轄があることが必要である。

 略式命令が告知されてから14日以内なら、正式裁判(被告人と検察官の両当事者の主張をきいて裁判官が判断を下す通常の裁判)を請求できる(刑訴法465条1項)。

 この請求期間が過ぎた場合や正式裁判の請求を取り下げた場合、正式裁判の請求を棄却する判決が確定した場合、略式命令は確定し、公判の確定判決と同一の効力を有することになる。(刑訴法470条)

(*)検察官の請求することのできる刑の上限は50万円以下の罰金または科料。

B公判

 被疑者が起訴され、公判期日(公判が開かれる日で開始時間も指定される)が決められた後、何回かの審理が行われ、最後に判決が下される。

 公判手続きの間、被告人が逃亡するあるいは証拠をかくすなどの恐れがある場合には、裁判所は、被告人を勾留することができる。

 この勾留は捜査段階で行われる被疑者の勾留とは別のもので、裁判所が職権で行う。

 期間は原則2ヶ月、延長は1ヵ月ごとで原則1回であるが、犯したと疑われる罪が一定以上のものである場合、犯罪の証拠を隠すおそれのある場合には数回認められる(刑訴法60条)。

 勾留の内容は自由刑(下の<刑罰[刑罰]について>参照)と変わらないので、刑が決定したときその分だけ自由刑がすでに行われたのと同様に扱われる。(刑訴法495条)

 被告人、その弁護人・親族などは保証金(いわゆる保釈金)を納めて釈放することを請求できる(この保釈金は出頭に応じなかった場合などには没取される)ただし、重い前科があったり、逃亡や証拠隠滅、被害者などに害をあたえる恐れがあるときなどは認められない(刑訴法88条から96条 )。

 刑事裁判は公判期日における手続きが中心である。この手続きは、冒頭手続き→証拠調べ手続き→最終弁論 →判決の宣告手続きへと進む。

<刑罰について>

 判決では有罪の場合、どのような刑罰が科されるかが言い渡される。また、すぐに刑を執行しない場合は執行猶予が付される。以下でおおまかな刑罰の説明する。

 刑罰は、重い順に死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料・没収の7種類がある。

 ただし、没収は単独では科すことはできず、他の刑罰を言い渡す場合に限り、あわせて科することができる。

 懲役・禁錮・拘留を自由刑(身体の自由を奪うためこうよばれる)、罰金・科料・没収を財産刑(一定の財産を奪うためこうよばれます)という。現在、確定裁判の95%が財産刑だといわれている。なお、財産刑により取り上げられた財産は国庫に帰属する。

@死刑:犯人の生命を奪う刑罰。極刑ともいう。

A懲役:受刑者を監獄に拘置して所定の作業(労働)を行わせる刑罰。無期と有期があり、無期は期間を定めないことで、有期は原則1月以上20年以下 (刑法12条1項、13条1項)である。ただし、法律で定める一定の場合は最高30年まで、最低1月未満 (刑法14条)とすることができる。

B禁錮:受刑者に作業を行わせずに、監獄に拘置する刑罰。希望すれば作業につくことができる。期間は懲役と同じである。

C拘留:1日以上30日未満、拘留場に拘置する刑罰。拘留場も監獄の一種。言い渡される例は少ない。

D罰金:犯人から一定の額の金銭を取り上げる刑罰。金額は1万円以上で法律に上限が定められている。ただし、罰金を納めることができなければ労役場に留置され、労働の対価として罰金を納めることになる。

E科料:罰金と同じ財産刑ですが金額が1000円以上1万円未満。

E没収:財産刑だが、取り上げる対象は犯罪に使った拳銃、犯罪による収益などの犯罪行為と関係のある物になる。

F執行猶予:一定の期間、刑の執行を猶予し、無事その期間が経過すると、刑の言い渡し自体が効力を失う制度。猶予とは、一般に実行の期日を引き延ばすことを意味する。

 犯罪の諸事情により、必ずしも現実に刑を執行する必要がないと判断されるときに用いられる。諸事情としては、例えば犯人の年齢、生い立ち、犯行の目的などが考慮される。ただし、言い渡される刑により執行猶予が付せられるか否かの制限がある。

 原則3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金で、なおかつ前に禁錮以上の刑を処せられたことがないまたは禁錮以上の刑の執行が終わってから5年以上たった場合、再度の執行猶予では1年以下の懲役・禁錮の場合に限られる(刑法25条)

 期間は1年以上5年以下の範囲で裁判所が指定する。また、猶予の期間内に罪を犯し一定以上の刑に処せられた場合などは取り消されることもある(刑法25条から27条)。

●用語解説<告発・告訴>

 告訴・告発(こくそ・こくはつ)は、捜査機関に対して犯罪を申告し処罰を求める意思表示である。

 犯罪被害者(もしくは法により定められた親族等)が申告する場合を告訴(刑事訴訟法230条)といい、被害者でない第三者が申告する場合を告発(刑事訴訟法239条)という。

 これらはいずれも刑事訴訟法上捜査の端緒の一つに分類されており、また、親告罪において告訴は訴訟条件の一つともされている。また、公務員は法に定める範囲において、告発する義務を負っている。

 書面によることも口頭でよることも可能であり(刑事訴訟法241条1項、口頭の場合は捜査機関に調書作成義務が課せられる、刑事訴訟法241条2項)、書面によった場合、その書面のことを告訴状・告発状という。

 名誉毀損、信用毀損、侮辱、強姦罪、守秘義務違反など、一定の犯罪については被害者の告訴が犯罪の構成要件となっている(親告罪)。

 親告罪とは、告訴がなければ公訴を提起することができない罪をいう。

つづく