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安倍政権の円安強制で
庶民生活はドン底
青山貞一
掲載月日:2013年1月26日 独立系メディア E−wave


 気チガイに刃物とはこのことではないか?

 安部総理は、日銀への強制介入や各種の口先介入で、ほんの一か月足らずで為替を円安とした。経団連や大マスコミはこれを評価しているが、庶民の生活の現実をまったく理解していない。

 円安誘導は、トヨタ、ホンダ、パナソニック、ソニーなど日本の輸出型製造業にとってありがたいことだろうが、円安でもっとも深刻な影響、被害を受けるのは、いうまでもなく輸入関連産業、とりわけエネルギー分野であり、最終的に国民自身である。

 もとより国際原油価格は、以下のWTI原油グラフにあるように米ドルベースで高騰していた。日本の場合、それを何とか帳消しにしていたのは、いうまでもなく円高であった。しかし、安部の一方的かつ強制的な円安誘導でそのタガがはずれてしまった。


WTI原油先物市場価格(日足チャート3か月分)
出典:http://chartpark.com/wti.html

 日銀を蹂躙するそのやり方は、ドイツのメルケル首相はじめEU諸国を激怒させている。

★日本「為替操作」と独首相が批判 ダボス会議で 共同

 結果として、重油、ガソリン、灯油、軽油、天然ガス、LNGなど石油天然ガス関連製品が一気に高騰している。輸入関連産業、企業は製品価格に高騰分を転嫁せざるを得ず、一気に不況産業化している。

 福島第一原発事故で原発のほとんどが稼働を停止しているなか、日本各地で天然ガス、LNGなどを中心に化石燃料発電が活発化した。しかし、この急激な燃料高騰で燃料価格は暴騰し、今後、電気料金の再値上げとなり、ガソリン、灯油、軽油など生活に密着する燃料価格も高騰すること間違いなしである。

 まるで円安誘導=燃料費高騰=原発再稼働を誘導しているかのようである!

 昨日、知り合いの航空チケット安売り店のWebを見たら、成田−ロンドンのヴァージンアトランティックの航空券がなんと2万7千円だった。この時期、海外航空券はもともと安いのだが、成田−ロンドン往復が2万7千円は今までの最安値である。

 しかし、喜ぶのは早い。燃料サーチャージを見てびっくりだ。なんと往復で7万円超である。航空券が2万7千円なのに、燃料超過料金が7万円超、まるで詐欺のようなものである。
 
 海外旅行は、日本国民のわずかな楽しみだろう。

 安倍の強制的な円安誘導は、便乗値上げを含め庶民の生活や楽しみを直撃している。

 さらに、この1か月、パソコンのCPU(中央演算装置)など、部品価格にも大きな影響が出ている。

 下のグラフは、昨年11月から今年1月のインテル社のCPU(Core i7 3770K)の小売価格である。12月中旬から一本調子で価格が高騰していることがわかる。


昨年11月から今年1月のインテル社のCPU(Core i7 3770K)の小売価格
出典:http://kakaku.com/item/K0000368065/pricehistory/
 
 先に◆青山貞一:パソコンの大手デルが経営難!? で詳細に述べたように、パソコンの部品はCPUだけでなくその圧倒的多くが輸入物だから、パソコンそのものの価格もわずかこの1か月で高騰している。

 もとより、パナソニック、ソニーなどがデジタル家電(テレビ、パソコンなど)の売り上げ激減で経営の危機に陥っているのは、過去の円高が理由ではない。

 政府の地デジ政策、エコポイントなどで国民が購入を誘導され、超高額なデジタルテレビをなかば強制定期に買わされ、それが一巡したこと、一巡後、東芝やパナソニックの大型デジタルテレビがなんと、3万円〜5万円で投げ売りされているのを見て、なんだこりゃとあきれていることにある。

 この分野、先進国国民はすでに限界効用に達しているのである。またアジアNICS諸国の技術革新はすさまじく、旧態依然の日本のメーカーがいくら政府の庇護を受けても、実態が大幅に改善する見込みはないだろう。

 死に体のシャープの株価が暴騰したのは、外国人の仕手筋による投機であり、シャープはじめパナソニック、ソニーなどのデジタル企業や日本の白物家電業界が構造的不況から抜け出す可能性はほとんどない。

 さらに、韓国のLGやサムスンがリーズナブルにデジタル家電製品を売り出していることにある。

 これは自動車業界についても同様で、単に円高がそれら日本を代表する製造業企業の収益をことさら悪化させているわけではないのである。それらの企業はずっと前から海外に生産現場を移している。

 小泉政権以降、正規雇用が崩れ、格差社会が拡大している日本にあって、中産階級以上は限界効用に到達し、年収200万円〜350万円の超低世帯層は、家賃など生活費で汲々としているのである。

 その意味からも国内需要や消費マインドが落ち込んでおり、今後、消費税を含め物品、サービス価格が上昇すれば、さらに消費性向は下向きとなるであろう。