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東京都市大講義
「情報化と市民参加」
野田香里氏 特別講義
映像メディアとコミュニティ文化論
〜9.11から3.11へ

青山貞一
掲載月日:2012年12月13日
独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁


 今週(2012年12月13日、木曜日)の東京都市大学情報メディア学科の授業では、政策学校一新塾生OGで映画監督の野田香里さんをお招きし特別講義を行っていただきました。

 野田さんは東京生まれの東京育ち(世田谷区成城学園)、学習院大卒業後、外資系の金融機関に就職、その後、米国のアリゾナ州にある大学に留学、MBAを取得する傍ら、セスナ機のライセンスまで取得したそうです。そして、野田さんは米国の監査法人に勤めます。

 野田さんは、下の写真にあるアリゾナで見た青い空は、東京で見る小さな切り取られた空とは違う360度広がる空が一生忘れないすばらしいものだったとおっしゃっています。

 私(青山貞一)も、カリフォルニア州サンディエゴの森林大火災の原因究明で、一度カリフォルニアからアリゾナまで車を飛ばしたことがありますが、確かにアリゾナのどこまでも砂漠が続く光景は私たち日本に住む者にとってインパクトがあります。


米国のアリゾナ州で見た青い空は一生忘れないすばらしいものだった

 野田さんは2001年のいわゆる9.11以降、とくに2003年に米国が行ったイラク侵攻にきっかけに自分が好きだった米国がイラクを一方的に侵攻、攻撃することにショックを受け帰国します。

 その後、ひとつの言語(英語)だけではいけないと思いたち、フランスに語学留学します。フランス留学中に小さな田舎町、地方都市でも、市民が生き生きと生活する活力や基盤となっているコミュニティ文化の大切さを知り、帰国後、映像文化に魅せられ映画監督を志ざし、アテネフランセ付属のアテネ・フランセ文化センター(映画文化専門学校)に通うことになります。

 野田香里さんは、ここで習得された映像技法をもとに、その後、ドキュメンタリー制作に係わります。今日の講義では、私と森伸夫さんが共同代表を務める政策学校一新塾で青山から学んだことは、「現場主義」の大切さであると野田さんが仰っていますが、野田さんのドキュメンタリーでは、自分自身が現場主義を徹底されていることがよく分かりました。

 ドキュメンタリー映画監督として、大歌舞伎で義太夫を語る竹本清太夫の至芸のドキュメント「歌舞伎、清太夫〜みなかみへ行く〜」を2008年に制作しました。


竹本清太夫の至芸のドキュメント「歌舞伎、清太夫〜みなかみへ行く〜」

 野田さんの最初のドキュメンタリーは、 竹本清太夫の至芸のドキュメント「歌舞伎、清太夫〜みなかみへ行く〜」です。


竹本清太夫の至芸のドキュメント「歌舞伎、清太夫〜みなかみへ行く〜」


野田さんの講義を熱心に聞く東京都市大学の学生たち


竹本清太夫の至芸のドキュメント「歌舞伎、清太夫〜みなかみへ行く〜」

 映画監督としての野田さんはその後、日本文化、とりわけ伝統芸能、地方歌舞伎にこだわり続けます。

 地方歌舞伎の舞台裏方やその技法を映像を通じ、次世代に継承させたいという一心で、群馬県渋川市の旧渋川村に伝わる上三原田歌舞伎の舞台操作伝承のドキュメントに全力を注がれます。

 ここでは、一年に一回、11月上旬に旧支部河村の上三原田に400年にわたって伝えられている舞台で行われる1日限りの地方歌舞伎のために、舞台裏では80名の部落(組み)の男性が働き、公演前には、舞台や客席などをつくるために、延べ1000人もの人が係わるほど大仕事なのです。


群馬県旧渋川村上三原田で年に1日だけ行われる地方歌舞伎
出典:群馬県渋川市教育委員会

 特別講義の圧巻は、何と言っても上三原田で年に1日だけ行われる地方歌舞伎の舞台カラクリ、操作のドキュメンタリーでした。これは、動画でないとそのすごさ、すばらしさは表現できません!


野田さんが監督し制作された上三原田歌舞伎の舞台操作伝承のドキュメント


野田さんが監督し制作された上三原田歌舞伎の舞台操作伝承のドキュメント


野田さんが監督し制作された上三原田歌舞伎の舞台操作伝承のドキュメント

 歌舞伎と言えば、ごく最近中村勘三郎さんの訃報がありましたが、野田さんが注目してきた上三原田歌舞伎は、江戸時代日本各地に千五百カ所以上あった地方(農村)歌舞伎のひとつであり、今なお現代に残されているのは、どうも上三原田歌舞伎だけのようです。


上三原田歌舞伎の舞台操作伝承のドキュメントについて語る野田さん


出典:2009年12月5日 東京新聞


出典:2010年9月7日 讀賣新聞

 特別講義では、学習院大学卒業後から米国留学、米国企業勤務、帰国後、フランス留学、再度帰国後、映画監督の道を歩む、野田香里さんの半生をパワーポイントそしてご自身が監督した映像をふんだんに使われ講義されました。

 情報メディア学科の学生にとって、自分たち、とくに女学生の将来の生き方に密接に関わる講義でもあり、学生らは真剣に聞いていました。

 最後に野田さんは、学生達に2つの宿題を出されました。そのなかには、映画づくりや裏方作業を手伝ってもらえる学生募集もありました。さすが一新塾OGです!野田さんは何と3回(3期)も政策学校一新塾に塾生として席を置き、多くの仲間をつくられました。


 今回は、環境総合研究所の同僚、池田こみち氏に学生へ資料配付、出欠票配布を担当してもらいました。


環境総合研究所の同僚、池田こみち氏。
その後ろは、一新塾OGの市川トシ夫妻

 また政策学校一新塾の林冬彦知事には、パワーポイント(映像、音声)操作を担当していただきました、また青山と共同代表をされています森嶋伸夫氏はじめ多くの塾生OBが特別講義に参加されました。


パワーポイント(映像、音声)操作を担当して
いただきました林冬彦氏

 ここに感謝の意を表します。 

 青山貞一