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放射線の測定高と測定値について
〜実測と単純モデルとの比較〜

青山貞一
Teiichi Aoyama 東京都市大学
鷹取 敦 Atsushi Takatori 環境総合研究所
掲載月日:2011年5月6日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 今まで政府、自治体さらにNHKなどの報道機関が福島第一原発からある地域における放射線量を伝えるとき、水戸で1時間当たり何μシーベルト、東京で1時間当たり何μシーベルトとしてきました。

 また、国の独立行政法人が行ってきたSPEEDIによる各地の放射線の推定値についても、浪江で25日間で何mシーベルトとか、いわきで何mシーベルトとされてきました。

 さらに、原発作業員が年間受ける積算放射線量についても、年間積算で何mシーベルトというように報道されてきました。

 しかし、それらの放射線の測定値あるいは積算値は、さらに推定値は、一体、地上からどの高さで計測したものなのか、まったく示されていませんでした。

 先に私(青山貞一)は、

◆青山貞一:子供の外部被曝限度(年積算20mSv)問題への所見

で次のように書きました。
 
 すなわち「大気中の放射線量のモニタリングは、通常、地表1〜1.5mの高さで行っています。同じ場所でも地上1〜1.5mと地表面では約10倍地表面の方が高く計測されます。以下では、地表1〜1.5mの高さにおける測定を前提としています」と。

 これは、私たちがこの4月16日と17日、いわき市の被災現場を視察に行ったとき、いわき市の広田法律事務所で、同行された弁護士が地表1〜1.5mで放射線検知器で測定した場合と地表面(GL)で測定した場合で約10倍違うとおっしゃっていたので、実際にいわき市内で地表約1mと地表面それぞれで放射線を計測したところ、実際に約10倍違っていたことをもとにしています。

 一応、応用物理を専門としている者として、たまたま、いわき市で計測しただけで約10倍というのも問題ありなので、全国各地で原発問題に取り組んでいるグループのメーリングリストで、各地で実際に計って報告してくださいと要請していました。

 そんな中、以下の記事を発見しました!

DASH村の地表放射線量 毎時240マイクロシーベルトを観測
  NEWS ポストセブン 5月2日(月)7時7分配信


 大震災の影響で、存続が危ぶまれているDASH村。TOKIOが出演する『ザ!鉄腕! DASH!!』(日本テレビ系)の人気コーナーとして2000年6月にスタートし、以来メンバーが無農薬の米や野菜づくり、古民家再生などに取り組んできた場所だ。

 村があるのは福島県浪江町。福島第一原発から半径20〜30km圏内に位置し、事故後は「屋内退避区域」に指定された。

 4月14日、本誌記者が浪江町を訪ねてみると、山々に囲まれたのどかな田舎町は人影がなく、行き交う車もない。唯一見かけた高齢の男性によると、「老人と、家畜やペットを飼っている人が家に留まっているほかは、みんな親戚の家などに逃げてしまった」とのこと。

 DASH村も門が閉ざされ、誰ひとりいない様子だった。

 ガイガーカウンターで放射線量を計測してみると、空間線量(地表から160cm、記者の肩の高さで測定)はおよそ毎時20マイクロシーベルト、地表ではなんと毎時240マイクロシーベルトに!

 「健康に影響が出る可能性がある」とされる毎時100ミリシーベルトを超えはしないものの、草むらや土壌はかなり汚染されていることがわかった。

※女性セブン2011年5月12日・19日号
 
 何と、福島第一原発のすぐ北にある浪江町でジャーナリストが「空間線量(地表から160cm、記者の肩の高さで測定)はおよそ毎時20マイクロシーベルト、地表ではなんと毎時240マイクロシーベルに」という記事を書いていました! 

 何と、ここでも高さに若干の違いがあるものの、地表面で計測した場合の方が、地表1.6mで計測した場合より12倍高いとあります。

 少なくとも私たちがいわき市で計測した約10倍に類する値です!

 そこで環境総合研究所の同僚の鷹取敦さん(調査部長)に、ごく簡単に数値モデルを組んでシミュレーションをしてもらいました。エクセルで簡単に計算できるものですが、ここでは、電磁波や放射線が距離の二乗に反比例するという単純な理論に基づいたものであり、一切の遮蔽や吸収は考慮していません。

地上高による放射線量測定値の違いに関する理論的考察

 以下の条件でシミュレーション(数値計算)をしてみたところ、やはり地表面と、地上1mの高さでは放射線量が約10違う、すなわち地表面の方が高くなることがわかりました。

 地表面の放射線物質から、地上0.1mと地上1mの場合の相対的な線量をエクセルを使って簡単に計算してみました。

 10m×10mの格子点上に放射線物質があると仮定し計算したところ、0.1mと1mでは、約10倍の割合となりました。

 空中に浮遊している放射線物質の割合が多い場合には上記とは異なるはずですが、地面に降り積もった放射性物質ら受ける影響は、距離減衰によって地上近くと1〜1.5m離れた地点では1桁違うということになります。

 添付ファイルは概算用に使ったエクセルです。

鷹取 敦 

 以下の図は、地面と地上30cm、1mなどに放射線検知器を置いて測定した場合のイメージ図です。


出典:環境総合研究所(東京都目黒区)

 上記の仮説と単純な数値モデルがそれなりに合理性をもつとすると、たとえば、この間、福島県だけでなく、原発が立地されている各地で大問題となった日本政府による「子供の外部被曝を年積算の限度を20mSv」問題は、どうなるのでしょうか?

 仮に福島県浪江町で毎時20マイクロシーベルトと行った場合、これは地表1.6mの高さで測定したものですが、もし、地表で測定すると毎時240マイクロシーベルと12倍高いことになります。

 仮に日本政府が「子供の外部被曝を年積算の限度を20mSv」とした場合、1mの高さでの測定値をベースにしていたとすると、小中学生は背の高さも大人より低く、また校庭などの地表面で遊び回ることが多く、さらに泥遊びも好きなので、実際に受ける放射線量は、10倍、すなわち200mSvとなります。

 たまたま上記のメーリングリストに福島健在中の方がおり、
国、福島県は、通常測る時は地上1m中学の校庭では、これと同じ地上1mで判断、小学校、幼稚園等では、身長が低いことを考慮して、地上50pで判断としています。」と情報提供してくれました。

 となると、やはり中学生の場合は、放射線検知器で計測した値の約10倍、小学生、幼稚園生の場合には、50cmとして、6〜7倍の放射線を受けることになり、とんでもないことになりかねません。

 ちなみに10倍は年間200mSv、6〜7倍で120〜140mSvとなり、まるで原発労働者の年間限度値のような値となります。


 上記の仮説と検討について、メーリングリストで、ある大学の教員から次のような意見が出されました。


 表面汚染密度が一様な場合のガンマ線による空間線量率を、空気中でのガンマ線の吸収とビルドアップを考慮した放射線遮蔽の教科書的な式で計算すると、地上1メートルでの線量率に対して、10センチで1.4倍、1センチで1.8倍、1ミリで2.2倍程度です。格子点からの距離の逆数の二乗の単純な和(積分)にはなりません。

ですから、地表近くで10倍、地上1メートルの10倍放射線が高いというのは、ガンマ線源による一様密度での汚染という前提とは違う条件になっているということだと思います。


◆読者の皆様へのお願い

 読者ご自身が計測、実験した結果(データ)や上の仮説に関するご意見を募集します。

 実験にご協力いただける場合は、

1)測定年月日、
2)測定場所、たとえば福島県いわき市中央など、
3)天気(晴れ、曇り、雨など)、
4)測定高(cm)別の放射線量、
5)地表面の性状(土壌、アスファルト、板、校庭など)、
6)検量器の型番(わかれば)
7)測定者のご氏名、連絡先
などをご記入いただけると幸いです。

 寄せられた意見は本Web(独立系メディア E−wave)上で公開しますが、ご氏名はご本人の承諾なしには公表いたしません。

 aoyama@tcu.ac.jp


 以下は、あくまで参考としてください。

 ところで、冒頭に書いたように、政府、自治体さらにNHKなどの報道機関が福島第一原発からある地域における放射線量を伝えるとき、水戸で1時間当たり何μシーベルト、東京で1時間当たり何μシーベルトとしてきました。

 これらの測定は地上何mで行っているのかが気になります。以下は、地域別の測定高さデータです。実際に現地で確認したわけではありませんが、地上1〜1.5mは北茨城・高萩・太子だけであり、宇都宮や前橋、新宿、横浜などは地上20m前後にあることになります。

県     区・市町村     MP地上からの高さ
==========================================
茨城県 北茨城・高萩・大子 約1.3m(可搬型)
     その他         約2.7m 
栃木県 宇都宮           20m
     その他         ビル屋上
群馬県 前橋            20m
埼玉県 さいたま          18m
千葉県 市原          約6〜7m
東京都 新宿             18m
神奈川 横浜             23m 

 そこで、上記のように計測地点が高い場合について試算するため、100m四方を対象として、測定高ごとの相対放射線量を計算してみました。格子の間隔は1mのままです。

 すると以下のようになりました。

地上高さ 相対線量
================
5cm    428
10cm   128
50cm    31
1.5m    23
10.0m   11
20.0m    7
30.0m    5

 ただし、上記の計算では空間における放射線の吸収、遮蔽は考慮していません。地表と地上1mの場合に比べて距離があるので、この場合には放射性物質の移流、拡散なども考慮しなければなりませんので、あくまで放射線量が距離の二乗に反比例するという法則だけに基づいたものです。

 上記については、まだ実験で検証しておらず、おそらく大気の組成や吸収、遮蔽をもたらす要因により、これだけ著しい違いがあるとは思えません。

 しかし、最低限、地上高が高くなると地表面に残存する放射性物質からの放射線の累積的な影響を受けることは間違いありません。

 上記の仮説に基づけば、政府、自治体、NHKなどが連日出している大気系の放射線量は、地表、地上で生活する人々が受ける放射線量よりも遙かに小さい(少ない)値となっていることになります。