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原発が危険と分かりながら
推進する理由(拡充版)

青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2011年5月15日、2013年5月17日追記
独立系メディア E−wave


 「原発を危険と分かりながら推進する理由」ですが、もちろん原子力村の政官業なり、「政官業学報」に係わる権益、利権もあります。

 しかし、もう少し広い見地からこの問題を考察して見ると、やはり原発推進→プルトニウム確保→原爆・核弾頭ミサイル→国防・外交での優位性という政治・外交・軍事力学が垣間見えてきます。

 実はこの3月イタリアから帰国した際、世界の原発立地、稼働状況をすべて調査してみました。

◆世界の原発の開発状況  詳細資料

 すると、原発を所有、稼働させている国は米国、ロシア、イギリス、フランス、英国、中国の国連安保理事会常任国はもとより、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ブルガリア、ウクライナ、ルーマニア、アルメニア、スロベニア、リトアニアなど旧ソ連衛星国(東欧)諸国、さらにスウェーデン、フィンランドなどスカンジナビア諸国、インド、パキスタン、台湾、ベトナム、イスラエル、イラン、カザフスタン、トルコ、韓国、北朝鮮などのアジア諸国、さらにアルゼンチン、南アフリカ、エジプトなど、これらを見ると軍事的抑止力で外交上優位に立とうする国々が大部分であることが今更ながら分かります。

 以下は、世界の原発の開発状況を表す世界原発地図の一部です。

旧ソ連諸国


東欧諸国


アジア諸国


中東諸国


中南米諸国


 「原発を危険と分かりながら推進する理由」は世界史、とりわけ近代史をひもとけば、容易に分かります。

 ポーランド、ウクライナ、ハンガリーなど旧東欧諸国やフィンランド、バルト三国は旧ソ連との関係、インド、パキスタンは両国の地域紛争との関係、アルゼンチンは英国、台湾は中国、韓国と北朝鮮との関係など、歴史を見れば自国を侵略、蹂躙されたり、あるいは宿敵の当事国となっています。

 一方、第二次世界大戦で負けた、ドイツ、日本、イタリアのなかで、イタリアは国民投票で原発をもたない稼働させない法案を通過させてきました。ドイツは、政権交代のたびに揺れ動いていますが、基本的に原発立地に反対する国民感情は強いなど戦勝国グループと異なったスタンスとなっています。

 私達はここ数年、ポーランド、フィンランド、リトアニア、ラトビア、エストニアなど、かつてドイツのヒットラーに蹂躙され、その後、ソ連に蹂躙され多くの犠牲者を出してきた国々を現地調査してきました。それらの国々の国民は、その悲痛な近代史を石に刻み、心に刻んでいます。

◆青山貞一・池田こみち:ポーランド強制収容所現地調査
◆青山貞一・池田こみち:バルト3国強制収容所現地調査

 
下図は核兵器(核弾頭数)から見た世界の大量破壊兵器の保有状況です。

図 誰が大量破壊兵器を持っているか? 国別核兵器力比較
 Source:Kalla:Stop the War Coalition

 さらに、以下のリストは、核保有国だけでなく、ひょっとすると核を保有しているのではないかという疑惑がある国のリストです。

◆世界の核保有国・核保有疑惑国リスト

 上図やリストを見れば明らかなように、核弾頭、原発などの核兵器の保有数では、圧倒的に米国、ロシア(旧ソ連)、中国、フランス、英国など、第二次世界大戦の戦勝国が大部分となっています。

  おそらく小国が大国に対抗する手っ取り早い方法が、核武装であると考えるのでしょう。その先例がパキスタン、北朝鮮などにあります。ただし、以下のデータは、古いので北朝鮮は含まれていません。

 その中で実質半世紀、自民党政権が政治を支配してきた日本でこれほど狭小で人口が多い国で、54基もの原発を立地してきた背景には、間違いなく、エネルギー政策や原子力産業の利権とは別に、将来必ず原爆や核弾頭ミサイル保有国になるぞ、という野望、願望が間違いなくあると推察されます。

 こう考えていたところ、つい最近、私の考えとほぼ同じことを実証的に書かれた論考を見つけました。

 また京大の小出助教への神保さん(VideoNews.com)と首都大学東京の宮台教授のごく最近のインタビューの最後で、小出さんが日本がかくも多くの原発を立地してきた背景として1時間のインタビューの最後で、私の考えに近い発言をされていました。

 したがって、私たちは、原点に戻り、単なるエネルギー政策や利権だけでなく、原爆、核弾頭ミサイルなどの保有という自民や民主の右派の政治家などの考えを徹底的に洗い出し、批判しなければならないと考えます。

※追伸 以下は、2013年5月17日に追記したものです。

 2012年12月3年ぶりに自民党が政権に復帰した現在、私の仮説はますます現実味を帯びてきています。自民党以外に、石原、橋下両共同代表が率いる日本維新の会も核武装の必要性を公然と述べています。

 たとえば、日本維新の会の代表に就任したばかりの石原慎太郎氏はは2012年11月20日、都内の日本外国特派員協会で講演し、尖閣諸島をめぐり対立する中国への対応に関し「日本は核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらよい。これが一つの抑止力になる。防衛費は増やさないといけない。防衛産業は裾野が広いので、 日本の産業も、中小企業も助かる」

 「軍事的な抑止力を強く持たない限り外交の発言力はない。今の世界で核を保有しない国の発言力、外交力は圧倒的に弱い。北朝鮮は核を開発しているから存在感がある」。「あのシナの覇権主義に侵され、日本が第二のチベットになることを絶対好まない。ノーというときはノーと言う」と発言してしまいます。

 しかも、石原共同代表は核武装の話をしただけではなく、中国との関係で抑止力として防衛費の増強と核兵器の話を持ち出しました。

 これは日本が憲法を改正し、軍備を拡大する一環として核武装を明言したことになります。このことを東京の有楽町の外国特派員協会における講演で明言したのです。

 もちろん、世界の世論を押し切り日本が核武装をすればCTBT(包括的核実験禁止条約)やNPT(核拡散防止条約)から脱退することになり、間違いなく世界の孤児になります。

 これは世界で唯一の被爆国として日本が世界に核廃絶を訴えてきたことがフイとなり、当然、世界各国の信用を失うことになります。