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何か変な気象庁による地震情報
青山貞一 Teiichi Aoyama
東京都市大学大学院環境情報学研究科教授
環境総合研究所所長

掲載月日:2011年7月31日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 今日(2011年7月31日)の明け方午前3時58分頃、東京でもかなり強い揺れが長く続いた。すぐにテレビを付けると、当初、NHKはじめどのテレビ局からも以下のような情報が提供されていた。

 午前3時54分の福島県沖を震源とする地震では、福島県の楢葉町と川内村で震度5強、郡山市やいわき市で震度5弱を記録したほか、岩手県から千葉県までの広い範囲で震度4、東京でも震度3を観測しました。

 ここ数ヶ月、福嶋第一原発事故問題で福島県内に放射線測定や被災地視察で何度もでかけ、福島県内の地理に詳しくなっている筆者は、上記の地震速報を聞いて直感的に何か変と感じた。

 それは何かと言えば、福島県沖を震源とする地震であり、福島県の楢葉町と川内村で震度5強、郡山市やいわき市で震度5弱であるにもかかわらず、第一原発がある大熊町、双葉町、さらに第一原発から20km圏に入っている浪江町、飯舘村、南相馬市などの震度がまったく表示されていなかったことである。

 表示にある楢葉町は福島第二原発がある市町村であり、第一原発から20km圏に入っている市町村である。にもかかわらず、第一原発が立地している大熊町、双葉町、第一原発から10km圏に入っている浪江町、飯舘村、富岡町、20km圏にある南相馬市などの震度がまったく表示されていなかったのは地震情報の提供の仕方としてきわめて不可思議である。


福島県市町村図 出典:マピオン
 
 まさか上記の市町村で地震測定をしていないなどということはないだろう。

 もし、10km圏や20km圏はほとんどの住民が避難しているから市町村名を速報しなかったとしても、日本そして世界中が注目している福島第一原発がある大熊町と双葉町の震度が速報されず、そのすぐ第二原発があり、第二原発のすぐ隣にある楢葉町のすぐ隣りの市町村の震度が速報されるのは合点が行かないのである。

 にも係わらず、テレビ各局は当初、「福島第一原発については、現在東京電力で調査中」としか伝えなかった。

 朝八時過ぎになって、新聞、テレビを見ると概ね以下の毎日新聞の記事にあるような内容になっており、ここでも大熊町、双葉町など福島第一原発がある町村の震度は示されていなかった。

◆福島で震度5強 第一、第二原発ともに異常なし(07/31 07:36)
 テレビ朝日

 31日午前3時54分ごろ、福島県沖を震源とする震度5強の地震がありました。東京電力によりますと、福島第一、第二原発ともに異常はないということです。

 午前3時54分の福島県沖を震源とする地震では、福島県の楢葉町と川内村で震度5強、郡山市やいわき市で震度5弱を記録したほか、岩手県から千葉県までの広い範囲で震度4、東京でも震度3を観測しました。東京電力によりますと、福島第一原発、第二原発ともに今のところ地震の影響は確認されておらず、原子炉への注水や汚染水の処理にも影響は出ていないということです。警察や消防によりますと、郡山市で女性2人がけがをしたものの、大きな被害の報告はないということです。

◆地震:福島県で震度5強 土砂災害に警戒を…気象庁
 毎日新聞

 31日午前3時53分ごろ、福島県で東日本大震災の余震と考えられる強い地震があり、同県楢葉町、川内村で震度5強を観測したほか、東北地方を中心に北海道〜近畿の一部にかけて5弱〜1の揺れを感じた。気象庁によると、震源地は福島県沖で、震源の深さは約57キロ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は6・5と推定される。この地震による津波の心配はない。

 気象庁によると、同日午前5時までに、体に感じる余震が6回発生するなど、やや活発な地震活動がみられるという。記者会見した永井章・地震津波監視課長は「激しい降雨と地震の相乗効果で、土砂災害の危険性が高まっていると考えられる。警戒してほしい」と話している。【飯田和樹】

 各地の主な震度は次の通り。

 震度5弱=福島県郡山市、白河市、田村市、いわき市、茨城県日立市、常陸大宮市、栃木県大田原市▽震度4=盛岡市、仙台市、福島市、水戸市、宇都宮市、千葉県香取市

 その後、ホームページで気象庁のサイトを開き当該地震の情報を見てみた。

 すると下の2枚の震度図を見ると間違いなく第一原発がある大熊町、双葉町、それに20km圏にひっかかる南相馬市なども震度5強に含まれていることが分かった。


出典:気象庁


出典:気象庁

 新聞社、テレビ局が地震直後に「午前3時54分の福島県沖を震源とする地震では、福島県の楢葉町と川内村で震度5強、郡山市やいわき市で震度5弱を記録したほか、岩手県から千葉県までの広い範囲で震度4、東京でも震度3を観測しました。」という速報の中で市町村名を出す、出さないの判断をするわけがない。

 となれば気象庁がそのような判断をしたことになるが、上記の震度図を見るに付け、気象庁が出した震度別の市町村名がきわめて不可思議であり、恣意的であるとともに、ひょっとして福島第一原発との関連において市町村名を敢えて取捨選択しているのではないかと危惧するものである。

 また震度5強と言えば、相当な揺れであり、今回はそれがかなり長く続いていた。とすれば「原子炉への注水や汚染水の処理にも影響は出ていないということです。」という報道も伝聞であり本当かなと思える。

 というのも、この種の情報は、周知のように今やいわば東電なり経産省系、すなわち当局による情報提供だけで国民が信頼する状況にない。となれば、大マスコミ各社も当局発表だけでなく、何らかの手づるで独自に現地情報を得て報道する姿勢がなければならないだろう。

 いずれにせよ、地震情報や事故情報において「大本営発表」があってはならず、また当局による「情報操作による世論誘導」があったはならない。