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メアリー・スチュアートの足跡を追って
スコットランド
2200km走破

スコットランド議会2


青山貞一 Teiichi Aoyama  池田こみち Komichi Ikeda
2018年10月30日公開予定
独立系メディア E-Wave Tokyo 無断転載禁
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 以下はスコットランド議会その2です。本文の主な出典はWikipediaです。

◆スコットランド議会の議場  


議場における席の配置は扇形になっており、大臣は議長と議会職員の席の真向かいにあたる、前方の議席に座ります。
Source:Wikimedeia Commons

 スコットランド議会の議場は半円形の座席配置になっており、これは選出された議員の間での合意を推進しようとする考えを反映したものであります。

 議場には131の席があります。この合計131の席のうち、129には選出された議員が座り、残りの2つにはスコットランドの法務官である法務総裁 (Lord Advocate) と法務次長 (Solicitor General for Scotland) が座ります。

 この2人は議会の議員ではありませんが、スコットランド自治政府の一員です。

 これらの法務官は本会議に出席して発言することはできますが、選出された議員ではないので投票することはできません。議員は議場のどこにでも座ることができますが、一般的には政党別のグループに分かれて座ります。

 スコットランド自治政府の首相・大臣・法務官は議場中央の前列に座る。議会で最大多数の政党は中央付近に座り、野党は両脇に座ります。議長と議会職員は議場前部で議員に相対して座る。

 議長の机の前には議会を象徴するメイス(鎚矛)が置かれており、これは銀で作られスコットランドの川で抽出された金により知識 (wisdom)・慈悲 (compassion)・正義 (justice)・誠実 (integrity)の文字がはめ込まれています。

 またスコットランド法の最初の言葉である「スコットランド議会を設置する」(There shall be a Scottish Parliament) という言葉が矛の先端に掘り込まれています。

 このメイスは議会において公的に象徴的な役割を持っており、法を制定することのできる議会の権威を強化しています。このメイスは、1999年7月の公式なスコットランド議会の設置に際して女王から渡されたもので、ガラスのケースに入れられ蓋から吊り下げた状態で展示されています。各議会の会期始めに蓋をひっくり返してメイスがガラスの外に出され、議会の本会議が開かれていることをあらわします。


立法機能

成立と権限

 スコットランド議会は法を制定し、限られた範囲で税金を変更する権限を持っています。また、スコットランド自治政府を監督するというもう1つの役割も有しています。

 スコットランド議会の機能と役割を規定し、その立法権限の範囲を定めているのは、イギリス議会通過後の1998年11月19日にエリザベス2世の女王裁可を得ました

 「1998年スコットランド法」である。スコットランドにおける最高の立法権限は、議会主権 (Parliamentary sovereignty) のために、ウェストミンスターのイギリス議会が保持し続けますが、スコットランド法の条件により、イギリス議会はスコットランドにおける内政に関する責任の一部を、新しく直接選挙されるスコットランド議会に委譲することになっています。

 このような事項は「委譲事項」(devolved matters) と呼ばれ、教育、健康、農業、司法などが含まれます。こうした事項について、スコットランド法ではスコットランド議会が議員立法を通すことを可能としています。

 一方で、ある程度の国内事項と外交のすべてに関しては、ウェストミンスターのイギリス議会が権限を保持している(留保事項)。

 委譲事項は、スコットランド法の第5表で留保事項として明示的に示されているもの以外すべてで、農業、漁業、林業、経済開発、教育、環境、食品規格、健康、内務、スコットランド法(司法)、警察、消防、地方自治、スポーツ、芸術、運輸、訓練、観光、研究、統計、社会福祉などがあります。スコットランド議会はまた、所得税を1ポンド当たり3ペンスまで変更する権限を持っている。

 スコットランド議会の立法権限の範囲外にある事項は、留保事項となってい。留保事項には、人工妊娠中絶、放送政策、公務員、イギリス製品およびサービスの共通市場、憲法、電力、石炭、石油、ガス、原子力、防衛および国家安全保障、麻薬政策、雇用、外交政策、ヨーロッパ関係、運輸安全規制に関する大半の事項、宝くじ、国境警備、社会保障、イギリスの財務・経済・通貨システムの安定が含まれます。留保事項に関する立法権限はウェストミンスターのイギリス議会にあり、また行政権限もイギリス政府とその大臣にあります。

 スコットランド議会においては、議員ではない一般人が議会に参加する方法が2つあり、これはイギリス議会にはない制度です。

 1つは公衆請願であり、もう1つは関連する一般人が参加・出席する政策事項に関する会議における超党派グループです。スコットランド議会は、イギリス議会の留保事項も含めていかなることでも議論することはできますが、立法権限外にある問題については立法することができません。

法案


法案がすべての立法手順を通過すると、スコットランド議会の法となる
Source:Wikimedeia Commons

 法案がすべての立法手順を通過すると、スコットランド議会の法となる委譲事項に関してスコットランド議会は法律を制定できることから、立法手順は議会に提出された法案から始まります。 

 法案を議会に提出する方法はたくさんある。スコットランド自治政府は新しい法律や既存の法律の修正案を法案として提出できます。議会の委員会はその付託分野における法案を提出できます。また議員個人としても法案を提出することができます。個別法案は外部の提案者から議会に提出できます。ほとんどの法案は、与党の大臣が提出する政府法案で、法案は議会でいくつかの段階を通過します。

 第1段階は、法案の導入段階で、大臣またはその法案を担当する議員が公式に議会に対して法案を関連文書と共に提出します。関連文書は、その法案の背景となる政策を記した政策覚書と、法案に関連する支出増大または削減を記した財務覚書です。

 また議長と法案を担当する議員からの法案がスコットランド議会の立法権限の範疇であることを示す説明書も提出されます。第1段階は通常まず関連する1つあるいは複数の委員会で始まり、それから法案の一般原則に関して議場での議論を行うために本会議に提出されます。もし本会議の採決で法案の一般原則が承認されると、法案は第2段階へ進みます。

 第2段階のすべては通常、関連委員会内で実施され、委員により法案に対する修正が提案されます。この段階では、法案は詳細に検討され、一部の法案と緊急法案のすべては、議場において議会全体による委員会によって詳細に検討され、この場合議長は委員会の委員長としての職責を果たすこととなります。

 第3段階は法案の最後の段階で、議会全体の会合で検討されます。この段階は、一般討論による法案の修正検討と、法案に対する最終的な採決の2つの部分から構成されます。

 野党議員は法案に対する「破壊的修正」(Wrecking amendment、法案を実質的に無意味にしてしまうような修正)を提案して、審議の更なる進行に抵抗し、最終的な採決を行わずに法案を廃案に追い込むために会期の残り時間を使い果たしてしまおうとすることができます。

 法案の最終案に対する一般討論の後、最終的な法案の一般原則に対しての賛否を問う採決を行います。

 法案が議会を通過すると、議長は女王裁可を得るために法案を女王に提出し、スコットランド議会の法となります。しかし議長が法案を女王に提出できるのは4週間後で、この間にスコットランド自治政府またはイギリス政府の法務官が枢密院司法委員会 (Judicial Committee of the Privy Council) に対して、この法案が議会の権限の範疇であるかどうかを諮問することができます。

 スコットランド議会の法は、伝統的な制定条項(enacting formula、法の冒頭にある決まり文句)で始まっているわけではありません。

 その代わりに"The Bill for this Act of the Scottish Parliament was passed by the Parliament on [Date] and received Royal Assent on [Date]"(このスコットランド議会法の法案は議会を○日に通過し、○日に女王裁可を得た)という言葉で始まります。

・政府の監督

 スコットランド議会において多数を占める政党が、スコットランド自治政府を構成します。

 他の多くの議会制度とは対照的なことに、スコットランド議会は総選挙後、各会期の最初に多くの候補者の中から首相を選挙します。議員は誰でも首相候補になることができ、議会全員での選挙が行われます。通常、最大多数の政党の党首が首相として選出されます。

 理論的には、議会はスコットランド自治政府を構成し内閣の一員となる大臣も選挙しますが、実際には大臣は首相によって指名されています。内閣の一員ではない閣外大臣も、その分野で大臣を補佐するために選出され、ほとんどの大臣・閣外大臣は議員の中から選ばれるますが、スコットランドの法務官である法務総裁と法務次長は例外です。首相は大臣を選び、またいつでも罷免することができますが、公式には指名と罷免は主権によってなされることになります。

 スコットランド議会が自治政府を監督する方法がいくつかあります。首相と大臣は、議員の質問に応じて議会に対して説明を行います。たとえば、各議会年度の始まりに、首相はその年度における政府の立法予定を明らかにした声明を議会において発表します。声明が発表された後、野党の党首やその他の議員が声明の内容に関連する問題について首相に対して質問を行います。

 また、議場における質問時間も確保され、「一般質問時間」(General Question Time) は火曜日の11時40分から12時までの間に開かれ、スコットランド自治政府の誰に対してでも、議員が直接質問をすることができます。

 14時30分からは、40分にわたってある主題を設定した質問時間 (Question Time) が開かれ、その日の質問対象として選ばれた、たとえば健康と司法、あるいは教育と交通といった部局の大臣に対して議員が質問をすることができます。

 議会の会期中火曜日の12時から12時30分には首相質問時間 (First Minister's Questions) が開かれます。この時間に議員は、首相の管轄事項に関する問題を直接首相に対して質問することができます。

 野党の党首はまず首相に対して一般質問を行い、それから補足質問を行います。これが、それに続けて首相に対してあらゆる問題について補足質問を行う人にとっての前置きとなります。野党の党首が行う4つの一般質問は、以下のようなものがあります。

その日の以後の予定。

 次にいつイギリスの首相に会う予定で、どのような問題について議論する予定であるのか、次にいつスコットランド大臣に会う予定で、どのような問題について議論する予定であるのか。次のスコットランド自治政府の閣議においてどのような問題について議論する予定であるのか。

 一般質問、主題質問、首相質問において質問しようとする議員は、事前に議会職員に申し出なければならず、議長によって選考が行われます。質問は書面で議員から大臣に提出されることもあります。質問と答弁は公式報告書として出版されます。

議員・選挙区・選挙制度

 1998年スコットランド法では、スコットランド議会通常総選挙は4年ごとに5月の第1木曜日に実施されることになっていいます。これまでは1999年、2003年、2007年、2011年に実施されています。

 選挙の日付は議長の提案に基づき女王が最大で1か月まで前後させることができます。議会の3分の2の賛成で議会自らが解散を決定した場合、または総選挙や首相の座が空席になった後28日以内に首相を選ぶことができなかった場合、議長は臨時総選挙の日程を提案し、女王の宣言によって議会が解散されます。

 通常総選挙の予定日から6か月以内に実施される場合を除き、臨時総選挙は通常総選挙とは別に行われます。通常総選挙の予定日から6か月以内であった場合は、通常総選挙の代わりに臨時総選挙が行われます。それ以降の通常総選挙は、元通り1999年から4年おきの年の5月第1木曜日に戻されます。

 スコットランド議会の選挙は、イギリスにおいて小選挙区比例代表併用制を採用した最初のものです。イギリスにおいては、比例代表制を利用したアディショナルメンバーシステム (Additional Member System) として知られます。この方式では有権者は、1票を特定の候補者に、もう1票を政党に投票します。

 129人の議員のうち、73人は小選挙区制によって選ばれ、「選挙区議員」(Constituency MSPs) と呼ばれます。有権者はその選挙区を代表するにふさわしい候補者を1人選んで投票し、もっとも多くの票を集めた候補者がその選挙区の議員として選ばれます。

 2005年にイギリス議会のスコットランドにおける議員定数が削減される前は、スコットランド議会の73の選挙区はスコットランドにおけるイギリス議会の選挙区と同じ区割りであったが、オークニー諸島とシェトランド諸島が例外で、それぞれがスコットランド議会議員を1人ずつ選んでいました。

 現在は、1つのスコットランド議会選挙区には平均すると55,000人の有権者がいます。スコットランドにおける地理的な人口分布のために、スコットランドの人口の多くが住むスコットランド中央低地 (Central Lowlands) では選挙区は小さく、人口密度の小さな北部および西部ではかなり大きな選挙区となっています。

 オークニー諸島、シェトランド諸島、アウター・ヘブリディーズなどの島嶼部の選挙区は、人口が分散していることとエディンバラのスコットランド議会からの距離が離れていることから、かなり少ない有権者しかおりません。選挙区議員が辞職すると、その選挙区において補欠選挙が行われ、小選挙区制により再度1人が選出されます。

 残りの56人は「比例代表議員」(List MSPs) と呼ばれ、選挙区における選挙結果の歪みを補正して、最終的な結果がより有権者の意思に比例する形になるようにするために、比例代表制によって選出されます。8つの選挙地区からそれぞれ7人ずつの比例代表議員が選ばれます。小選挙区制の選挙区は、それぞれの選挙地区の下位区分となっています。

 ハイランドおよび島嶼部 (Highlands and Islands)
 北東スコットランド (North East Scotland)
 中部スコットランドおよびファイフ (Mid Scotland and Fife)
 西部スコットランド (West of Scotland)
 グラスゴー (Glasgow)
 中央スコットランド (Central Scotland)
 南部スコットランド (South of Scotland)
 ロージアン (Lothians)

 各政党は各選挙地区に立候補する候補者名簿を作成し、この中から比例代表議員が選ばれます。比例代表議員が辞任すると、辞任した議員の所属政党で名簿順位が次の人物が議席を得ます。

 政党に割り当てられる議席数は、投じられた票数に比例するようにドント方式によって割り当てられます。たとえば、比例代表で最初の議席を得る候補者を決定するためには、各政党に投じられた票数をその地区の小選挙区においてその政党が獲得した議席数に1を足した値で割ります。

 この値が最も大きな政党が議席を得て、この政党のその選挙地区における獲得議席数を1増やした状態で2人目の議席を割り当てる計算を同じく行うのです。すべての議席が決定するまでこの方式が繰り返されます。

 イギリス議会庶民院と同様に、スコットランド議会議員になるためには多くの制約があります。こうした制約は、1975年庶民院欠格条項法 (House of Commons Disqualification Act 1975) と1981年イギリス国籍法 (British Nationality Act 1981) によって導入されました。

 具体的には、議員は18歳以上でなければならず、イギリス・アイルランド・イギリス連邦諸国・イギリス海外領土の国民であるか、欧州連合諸国の国民でイギリスに住んでいなければなりません。警察官と軍人はスコットランド議会議員になることができず、また同様に公務員と外国において議員であるものもスコットランド議会議員になることができません。

 1983年精神保健法 (Mental Health Act 1983) の基準で精神状態に問題があると診断されたものは、議員になることができません。

選挙


スコットランド議会の外にはためくイギリスの国旗・スコットランドの国旗・欧州旗
Source:Wikimedeia Commons

 スコットランド議会の発足以来2016年までに、1999年、2003年、2007年、2011年、2016年の5回の選挙が行われています。

 その次のスコットランド議会総選挙は、2021年5月6日木曜日に実施されることになっています。

 1998年スコットランド法によれば、スコットランド議会の総選挙は普通、前回の総選挙から4年後の5月の最初の木曜日に実施されることになっており、2016年の総選挙の次は2020年5月です。しかしこの日付では次回のイギリス議会の総選挙と日程がぶつかってしまいます。

 2015年11月に、スコットランド議会はスコットランド選挙(日程)法を提出し、議会の任期を5年に延長することを提案しました。この法案はスコットランド議会を2016年2月25日に通過し、2016年3月30日に女王裁可を得て、次の選挙は2021年5月6日に実施されることになりました。

 イギリスにおけるすべての選挙と同様に、適格なイギリス連邦諸国民には選挙権があります。しかしながら他の多くのイギリスの選挙とは異なり、イギリス連邦諸国ではない欧州連合諸国の国民で、スコットランドに住んでいるものは、スコットランド議会議院選挙の投票権があります。しかし、スコットランドに有権者登録している海外居住者には投票権がありません。2016年の選挙から、スコットランド議会選挙への投票権は16歳以上に拡大されました。


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2016年スコットランド議会総選挙
政党 小選挙区比例代表併用制 合計議席数
小選挙区 比例代表
得票数 得票率 得票
増減率
議席数 議席
増減数
得票数 得票率 得票
増減率
議席数 議席
増減数
合計
議席数
議席
増減数
議席
比率
  スコットランド国民党 1,059,897 46.5 +1.1 59 +6 953,987 41.7 -2.3 4 -12 63 +6
  スコットランド保守党 501,844 22.0 +8.1 7 +3 524,222 22.9 +10.6 24 +12 31 +6
  スコットランド労働党 514,261 22.6 -9.2 3 -12 435,919 19.1 -7.2 21 -1 24 -13
  スコットランド緑の党 13,172 0.6 +0.6 0 - 150,426 6.6 +2.2 6 +4 6 +4
  スコットランド自由民主党 178,238 7.8 -0.1 4 +2 119,284 5.2 ±0.0 6 +4 6 +4
  イギリス独立党 0 ±0 46,426 2.0 +1.1 0 ±0 0 ±0 0.0
  連帯 0 ±0 14,333 0.6 +0.5 0 ±0 0 ±0 0.0
  スコットランドキリスト教徒党 1,162 0.1 ±0.0 0 ±0 11,686 0.5 -0.3 0 ±0 0 ±0 0.0
  RISE 0 ±0 10,911 0.5 +0.5 0 ±0 0 ±0 0.0
  女性平等党 0 ±0 5,968 0.3 +0.3 0 ±0 0 ±0 0.0
  無所属 0 ±0 4,420 0.2 0 -1 0 -1 0.0
出典 Wikipedia


2016年総選挙によるスコットランド議会の議席構成 ■ スコットランド国民党 (63) ■ スコットランド保守党 (31)
■ スコットランド労働党 (24) ■ スコットランド緑の党 (6) ■ スコットランド自由民主党 (5)
Source:Wikimedeia Commons