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青山貞一最終講義
〜環境調査と環境アドボカシー
で歩いた世界(4)〜
掲載月日:2012年1月24日
 独立系メディア E−wave Tokyo


 環境調査や国際会議などで世界50カ国以上を歩いてきた青山だが、最後に歩いた現場から得たことを伝えたい! 

 そのポイントはひとつは地方分権の地域社会づくりである。

 またひとつは物質的成長にとらわれない経済社会つくりである。

 さらに最後のひとつは小さくてもキラリと光る地域づくりである。
 

言ってはみたものの、3つめのあくせくしない生活は、なかなか難しい。ただ、この春からは、時間に縛られない生活が送れそうなので、あくせくしない生活を実現したい!


本来、基礎自治体など行政は、住民のために存在しているはずだ。それがうまくいっている小さなまちをいくつか紹介しよう!


●徳島県上勝町


徳島県の上勝町。人口は2千人である。



今日も菖蒲さんは特製パソコンで朝から仕事に精を出している!このまちのおばあちゃんは、スーパーおばあちゃんと言われている。

わずか2000人の住民しかいない小さな過疎で高齢化したまちだが、この上勝町では、他のまちでは成功しないことがうまく行く。高齢者はいきいきしている。

環境系の弁護士100人でつくるゴミ弁連の総会が茨城県水戸であったとき、懇親会の冒頭挨拶で上勝町長の笠松氏は、挨拶の変わりに突然歌を歌い出した。これが上勝町流だ。


私が上勝町に行くと、いつものように夜は宿泊先の旅館(月ケ谷温泉)で笠松町長と延々と議論。これが何よりも宝だ!飲食費は各自もち(念のため)


●ドブロブニク、クロアチア


アドリア海の真珠とよばれるクロアチアのドブロブニク

 日本ではまだそれほど有名ではない。しかし、EU諸国のひとびとには、さまざまな観点で知らないひとがないほど著名である。



 マイ・フェア・レディなどで有名な
英国のかの劇作家バーナードショウは「ドブロブニクを見ずして天国を語ることなかれ」と言っている。

 さらに旧市街に入る門に、「自由はお金では購えない」と書かれていることは、欧州であまりにも有名である。


今や世界のひとびとが行ってみたい場所のナンバーワンとなっているドブロブニク、専守防衛を守り、9世紀以来構築してきた城壁の高さは30mにも及んでいる。その城壁は、オスマントルコの進入だけでなく、津波の被害も防いできた。この町には、欧州の住民自治の原点が今なお息づいている。敬老の精神も。欧州で最初に薬局ができたのもドブロブニクである。民主政治の原型もここにある!


大理石で出来たプラッカ通りを行く、クロアチアの子供たち。


これがプラッカ通り。中世の町並みがそっくり残り、しかも今なお住民が住んでいる!

 クロアチアの国旗
ドブログニクの女性市長さんは大学教授からの転身だ。


「アドリア海の真珠」を背景に クロアチア・ドブロブニクにて 2007.3
ローマ、ウィーンなどからひとっ飛びでドブロブニク国際空港に行ける。ぜひ、皆さんも出かけて欲しい!


●ノバスコシア州、カナダ


カナダ最東端のノバスコシア州


●アマルフィ海岸、イタリア


イタリアのアマルフィ海岸

アマルフィ海岸を教科書的に紹介すると次のようになる。世界遺産登録年は1997年。海沿いに断崖絶壁が続くこの一帯は海岸線が変化に富み素晴らしい美しさをみせる。中世初期から人々が定住を始め、中世の海洋共和国として栄えたアマルフィやラヴェッロなどの街では秀逸な建築物や芸術作品も創出した。

    
ソレント半島及びアマルフィ海岸の位置

険しい岩壁の続く地形を、人々はブドウやレモンの段々畑、果樹園、放牧地など様々に活用し、紺碧の海とあいまって、地中海的でドラマチックな独自の美しい自然景観がここに展開している。世界一美しい海岸。


夢にまで見たアマルフィに到着。ご満悦の青山貞一!


海洋都市国家、アマルフィの象徴、アマルフィ大聖堂


●デンマーク、フィンランド、北欧諸国


自然エネルギー利用でトップを走り、幸福度調査で世界一となったデンマーク

 北欧4国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、表では赤色)は、環境面から見た持続可能性(Environmental Sustainability Index)で絶えず世界のトップクラスにランキングされている。たとえば環境政策のランキングに米国のコロンビア大学とエール大学が第三者的に調査し、スイスのダボス会議で毎年発表しているものがある。日本やドイツは到底、およびじゃないのである! なぜおよびじゃないのか、が極めて重要である。 


コペンハーゲン中央駅

デンマークは環境問題というより風力など自然エネルギーの利用で世界最先端を行っている。北欧諸国はいうまでもなくデンマークに限らず、米、英、仏、日、伊などG7経済大国と違った国づくりをしてきた。政治、経済、福祉、環境、教育はじめ男女格差問題でもG7とは違っている。

 その総合的な指標として、たとえば、昨年、米国のミシガン大学が世界の「幸福度GDP」ランキングを出した。何とデンマークは堂々第一位に輝いた。これはネパールが一位となったランキングとは別物である。米国16、日本43位と日米などG7の多くはおよびじゃないのである。 小学生、中学生の世界教育ランキングでは、フィンランドがいつも1位〜3位にいる。これも大いに気になる。
 

世界ランキングでいつも環境政策や教育政策で上位を占めるフィンランド


ヘルシンキ大聖堂


●リトアニア、ラトビア、エストニア、バルト3国

 最後はバルト3国だ。日本人には大相撲のバルトがエストニアの生まれというくらいしかなじみが薄い。

 しかしバルト3国は、北欧同様、人口は少ないが、それぞれ歴史と文化を生かしたキラリと光る国づくりをしてきた。とりわけ中世の町並みをそのまま保存した旧市街は秀逸だ。

 まさに小さいが歴史と文化を大切にしてきたキラリと光る国々である!

 しかし、戦前戦後は、ヒットラーのドイツ、スターリンのソ連に蹂躙、支配され、それぞれ悲惨な歴史を繰り返してきた。

 古いものを次々と壊す日本人が大いに見習うべきことがたくさんある。もともとものと大切にしているから深刻な環境問題など存在しない。個性豊かな小さな国が3つ縦に並んでいる。


川崎市ほどの人口だが、歴史、文化を大切に新たな国づくりをすすめるバルト三国のエストニア


ハンザ同盟の一大拠点、ラトヴィア・リーガ旧市街のブラックヘッド会館


ナチスドイツのラトヴィア攻撃時に炎上するリーガ大聖堂
出典:火薬塔にあるラトヴィア軍事博物館所蔵


ラトヴィアの首都リーガ旧市街にあるリーガ大聖堂。ヒットラー率いるナチス・ドイツ軍によって破壊されたが、市民の力で修復した!欧州ではあちこちで、戦争などで破壊された建築物や町並みを市民の力で復元している。


リトアニアの夜明けの門


数万の十字架、ロザリオがあるリトアニアとラトビアの中間地点にあるシャウレイの十字架の丘。何度となく侵略者により十字架の丘はブルドーザーで破壊されたが、それでもひとびとが十字架やロザリオをもちより丘をつくったという「シャウレイの十字架の丘」だ。その精神力の強さに驚くばかりである。


十字架の丘にて


●ワルシャワ、ポーランド

 
市民の手によってナチスドイツにより破壊された町を復元したといえば、ポーランドのワルシャワは、まさにその典型だ。

 第二次世界大戦で破壊された聖十字架協会を市民と建築家の努力で寸分違わず復元している!


復旧された聖十字架教会





ライトアップされた聖十字架教会

 ポーランドの小さいがきらりと光る5つの美しいまちを動画で紹介しよう!




 学生諸君は、ぜひ欧州の小さいがキラリと光るオンリーワンのまちづくりをしている国や都市を訪れて欲しい。