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2014 初夏の浅間高原

(8)野反湖とキスゲ

青山貞一 Teiichi Aoyama
池田こみち Komichi Ikeda
斎藤真実 Mami Saito

August 7, 2014
Alternative Media E-wave Tokyo
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(1)下久保ダム・神流湖  (2)JAL墜落現場再アタック (3)鬼押出し園-1
(4)鬼押出し園-2  (5)八ッ場ダム工事7-1  (6)八ッ場ダム工事-2 
(7)八ッ場ダム工事、温泉移設  (8)野反湖とキスゲ  (9)碓氷峠とおぎのや


 翌、7月18日(金)、朝から小雨、霧まじりの曇りだ。 朝は気温も20℃程度で涼しい。

 朝食後、青山、池田、斎藤の3人は、下の地図にあるように予定通り国道146号線から国道292号線を通り、途中、中之条町の赤岩養蚕集落を通り、さらに北上した。 その後、国道405号線を標高1500m近くまで登り野反湖(のぞりこ)に向かった。


野反湖とその周辺の3次元図
出典:グーグルアースにより作成

 野反湖は、下の図にあるように群馬県、長野県、新潟県の3県の県境の高い標高の盆地にあるダム湖である。下図で野反湖より手前は、群馬県、左上は長野県、真上が新潟県、さらに右上奥は福島県となる。 


野反湖とその周辺の3次元図
出典:グーグルアースで作成した

野反湖・野反ダム(のぞり)

 群馬県吾妻郡中之条町を流れる信濃川水系中津川に建設されたダム。高さ44メートルのロックフィルダムで、東京電力の発電用ダムである。ダム湖(人造湖)の名は野反湖(のぞりこ)という(ダム湖百選)。上信越高原国立公園に属する。湖を一周する遊歩道は遊歩百選。

 群馬・長野・新潟の3県を流れる中津川は、まず群馬県中之条町六合(くに)地区北端で源を発し、秘境・秋山郷を流れ、新潟県津南町で信濃川へ合流する。その水源に野反湖があり、その北端で水をせき止めているのが野反ダムである。

 ダムが完成する以前は湿原であって、その中に池が点在し野反池(のぞりいけ)と呼ばれていた。大正時代の電力会社・信越電気は野反池を含め中津川の水資源を水力発電に利用することを計画し、水利権を取得。中流部において中津川第一・第二・第三発電所を完成させた。その後、相次ぐ合併のたびに各社を渡り歩いてきた水利権は、最終的に戦後発足した東京電力が継承した。

 東京電力は中津川の既存水力発電所の再開発を計画し(高野山ダム#昭和の再開発も参照)、これまで手つかずだった野反池にも開発の手が伸ばされた。水源である野反池にダムを建設して大量の水を貯えておき、水不足の際に放流して下流の水力発電所の補給とすることで年間発生電力量の増大を見込んだのである。

 建設工事は1953年(昭和28年)に着手され、1956年(昭和31年)に完成した。日本の発電用ダムとしては初めてのロックフィルダムで、材料となる岩石を高所から落下させ、その衝撃で締め固めつつ高く築き上げるという投石工法で建設された。

 出典:Wikipedia



野反湖とその周辺の3次元標高図(地形図)
出典:グーグルアースで作成した

 何しろ今日は霧、小雨まじりの曇天である。最後の最後まで野反湖が見えるかどうか心配だった。

 というのも、、野反湖は太平洋性の気候と日本海側の気候がぶつかり合う地点にあるからだ。

 国道292号線を少し上がったところに赤岩集落がある。その集落の真ん中の道路を通り、かつての一大養蚕集落を視察した後、私達は292号線から国道405号線に入った。


左斎藤、右池田。トヨタアクア(ハイブリッド車)で野反湖に向かう
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2014-7-18

 非常に天気が変わりやすく、綺麗に野反湖が見えていることもあれば、やっとのことで湖岸まで車で登ったものの、霧でまったく湖が見えないことが多々あるからだ。

 そしてやっとのことで野反湖に到着した。

 国道292号線から野反湖までは登り一本でもあり、結構大変である。距離は下の図にあるように別荘から48km、長野原町役場からでも30kmある。草津温泉からでも25kmほどある。


出典:グーグルマップ

 下は野反湖が一望できる駐車場である。雲が低く垂れ込めている様子が見える。赤い車が池田こみちのトヨタアクア(ハイブリッド車)である。


撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2014-7-18

 下は到着後すぐに撮影した写真ある。何と、曇り空の合間に、野反湖がはっきりとその穏やかな姿を現してくれたのである! まるで鏡のような湖面である。


野反湖がはっきりとその穏やかな姿を現してくれた
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2014-7-18


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S6400  2014-7-18

 この後、天気は霧、小雨と曇りを繰り返すことになる。

 野反湖周辺は、さまざまな高山植物のメッカとなっている。有名なのは夏のキスゲ(ニッコウキスゲ、野反キスゲ)、コマクサ、シラネアオイ、秋のヤナギランなどである。


上信越国立公園にある野反湖
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8

 この時期、野反湖を訪れた大きな目的は、7月に咲く通称、ノゾリキスゲを見るためだ。今まで10回以上、野反湖に来ているが、いずれもゴールデンウィークか8月中旬〜9月中旬、標高にもよるが5月上旬から8月上旬に咲くキスゲには、ついぞお目にかかれなかった。

◆ノゾリキスゲ

 ゼンテイカ(禅庭花)は、ユリ科(APG分類体系ではキスゲ科(ワスレグサ科))の一連の多年草。一般には、「ニッコウキスゲ」の名前で呼ばれることも多い。また、各地で別々に同定されたため、和名、学名ともに混乱が見られる。

 日本の本州などでは高原に普通に見られるが、東北地方や北海道では海岸近くでも見られる。関東では低地型のムサシノキスゲや、奥多摩、埼玉、茨城県でも低地型の自生のニッコウキスゲが見られる。

 花期は5月上旬から8月上旬。草原・湿原を代表する花で、群生すると山吹色の絨毯のようで美しい。 高さは50cm?80cm。花茎の先端に数個つぼみをつける。花はラッパ状で、大きさは10cmぐらい。花びらは6枚。朝方に開花すると夕方にはしぼんでしまう一日花。ムサシノキスゲは開花の翌日まで開花する。

 日光の霧降高原、尾瀬ヶ原、霧ヶ峰などの群落が有名である。 花が黄色で葉がカサスゲ(笠萓)に似ているため、地名を付けてニッコウキスゲと呼ばれだし、全国に広まった。 ただし、栃木県日光地方の固有種というわけではなく、ゼンテイカは日本各地に普通に分布している。

 日光地方では、霧降高原を中心に「日光キスゲまつり」が毎年開催されている。府中市 (東京都)では、ゴールデンウィークの頃に「キスゲフェスティバル」が開催される。

出典:Wikipedia

 何と、下の写真のように霧深い湖畔には山吹色のキスゲがたくさん咲いているではないか!

 これには3人、大感激。


湖畔には山吹色のキスゲがたくさん咲いていた!
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2014-7-18

 いつものように、湖面近くまで雨でぐしゃぐしゃになった道を降りる。湖面近くにも下の写真のように沢山のキスゲが所狭しと咲いていた。傘は前が斉藤、後ろが青山。


沢山のキスゲが所狭しと咲いていた
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S6400  2014-7-18

 こんな感じで、いたるところにノゾリキスゲが咲いていた! 夏の終わりになると、ヤナギランの大群落が咲き誇ることになる。


野反湖の湖畔で
撮影:斉藤真実


沢山のキスゲが所狭しと咲いていた
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2014-7-18

 下は、湖畔に咲くノゾリキスゲの群落。白い猫のしっぽのようなのは、イブキトラノオである。


湖畔に咲くノゾリキスゲの群落。白い猫のしっぽのようなのは、イブキトラノオ
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2014-7-18

◆イブキトラノオ(伊吹虎の尾)

 タデ科イブキトラノオ属の多年草。イブキトラノオ属は、広義のタデ属 Polygonumに分類する場合もある。

 北海道から九州の山地帯から高山帯に分布し、日当たりのよい草地に群生する。花茎は30cmから高いものは100cm以上にまで伸び、先端に長さ6cm前後の白色か淡紅色の花穂をつける。花期は7?8月。

 特に伊吹山に多く、花穂を虎の尾に見立てたことからこの名がついた。

 湖畔にはたくさんのノアザミも咲いていた。

出典:Wikipedia

 今年の9月18日は、スコットランドが英国から独立するか否かを決める国民投票日だが、そのスコットランドの国花がアザミである!
 
 こんなすばらしいアザミを見たことがない!


こんなすばらしいアザミを見たことがない!
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S6400  2014-7-18

アザミ

 アザミ(薊)は、キク科アザミ属 (Cirsium) 及びそれに類する植物の総称。標準和名を単にアザミとする種はない。スコットランドの国花。

 葉は深い切れ込みがあるものが多い。また葉や総苞にトゲが多く、さわるととても痛いものが多い。頭状花序は管状花のみで作られていて、多くのキクのように周囲に花びら状の舌状花がならばない。花からは雄蘂や雌蘂が棒状に突き出し、これも針山のような景色となる。花色は赤紫色や紫色をしている。種子には長い冠毛がある。

 若いときには根出葉があり、次第に背が高くなり、茎葉を持つが、最後まで根出葉の残る種もある。草原や乾燥地、海岸などに出るが、森林内にはあまり出現しない。別名刺草。名前の由来は、アザム〈傷つける、驚きあきれる意〉がもとで、花を折ろうとするととげに刺されて驚くからという説がある。

 世界に250種以上があり、北半球に広く分布する。地方変異が非常に多く、日本では100種以上あるとされるが、現在も新種が見つかることがある。さらに種間の雑種もあるので、分類が難しい場合もある。

出典:Wikipedia

 下はイブキトラノオとアザミである。


イブキトラノオとアザミ
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2014-7-18

 下はアザミ群落と本当にうれしそうな顔をしている斉藤真実。


アザミ群落と本当にうれしそうな顔をしている斉藤真実
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S6400  2014-7-18

 湖畔を半周して戻ると、雨が激しくなってきたので、一路、草津方面に向けて出発となった。

 野反湖も神流湖同様、ダム本体側から見ないと、まるで自然湖のように自然に溶け込んで美しい。

 ところで、群馬県には膨大な数のダムがあるが、これらは総理大臣を3人も輩出している群馬県で建設省、国土交通省、東京電力がそれこそやりたい放題自然を破壊しつづけ、一部はそれなりの必要性があったのだろうが、どうみてもそれほど必要性のないダムを次から次と官僚の言いなりにつくってきた結果である。

 これほど大きなダムではなくても、中小のダムも多数あり、砂防ダムに至っては数知れないほどである。建設省、国土交通省は、群馬県内の巨大ダムをつくるとき、必ず持ち出すフレーズがある。それはカスリーン台風である。 

 カスリーン台風(昭和22年台風第9号、国際名:カスリーン〔Kathleen〕)は1947年9月に発生し、関東地方や東北地方に大きな災害をもたらした台風のことであり、カスリン台風や、キャサリン台風などとも呼ばれる。台風本体の勢力の割には降水量が多い雨台風の典型例とされている。

 しかし、カスリーン台風から67年もたち、膨大な数のダムを利根川水系につくりつづけてきた国土交通省は、世界有数の債務大国(借金大国)となった今でもこのカスリーン台風をもちだすことで流域住民に印象操作をしている。もう、いい加減にダムづくりはやめ、つくってきて膨大な数のダムの維持管理さらには廃ダムをしたらどうなんだろうか? 


(9)碓氷峠とおぎのやにつづく