エントランスへはここをクリック

初秋の

「信濃の鎌倉」を行く

(3)北向観音

青山貞一・池田こみち

掲載日:2014年9月19日
独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁


初秋の「信州の鎌倉」を行く
(1)はじめに (4)別所温泉 (7)中禅寺薬師堂 (10)塩田城跡
(2)信濃国分寺 (5)常楽寺 (8)龍光禅院
(3)北向観音 (6)安楽寺 (9)前山寺 日本史年表

 上田市の中心市街地の一角にあります信濃国分寺を後に、私達は一路、「信濃の鎌倉」がある別所温泉と塩田・前山前地区に車で移動します。

 おおよそ14km、車で20分の距離です。上田から別所温泉までは、上田鉄道別所線もあり、容易に別所温泉まで行けます。


上田鉄道別所線   出典:グーグルマップ ストリートビュー


上田駅、長野道上田ICから別所観音までの地図  出典:グーグルマップ

 別所温泉は、長野県上田市にある温泉であり、標高570mの高地にある長野県、信州最古の温泉でもあります。別所温泉は起源は日本武尊が7か所に温泉を開き「七苦離の温泉」と名付けたという伝説であることから「七久里の湯」とも呼ばれています。

 北向観音は、別所温泉のメインストリートから一旦、階段を下り、下の写真のようにお土産屋さんがある石畳の道を少し行き、今度は階段を登ったところにあります。


別所温泉のメインストリートから北向観音に向かう狭い参道
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 下の写真は北向観音の境内から見た上田市街です。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 ところで、その北向観音は、天台宗の寺院であり近くにある天台宗常楽寺が所有・管理している観音です。

北向観音とは

 寺伝によれば、平安時代初期の天長2年(825年)円仁(慈覚大師)によって開創されたという。800年代にも火災の伝説が残る。安和2年(969年)平維茂によって大伽藍として大改修が行われたが、木曽義仲の兵火により焼失したのち、源頼朝により再興。鎌倉時代の建長4年(1252年)には北条国時(塩田陸奥守、塩田国時)によって再建されたと伝えられる。

 江戸時代に至って正徳3年(1713年)に焼失し、8年後の享保6年(1721年)に現在の堂が再建された。その後度々修復を加え、昭和36年に増改築を施し、善光寺の本堂と同じ「撞木造り」となる。

 北向観音という名称は堂が北向きに建つことに由来する。これは「北斗七星が世界の依怙(よりどころ)となるように我も又一切衆生のために常に依怙となって済度をなさん」という観音の誓願によるものといわれている。 また、善光寺が来世の利益、北向観音が現世の利益をもたらすということで善光寺のみの参拝では「片参り」になってしまうと言われる。

 観音堂に隣接する温泉薬師瑠璃殿は火災の後、文化6年(1809年)に地元の薬師講により再建された。 愛染堂の近くに縁結びの霊木として崇められている愛染かつらの巨木がある。(樹高22m)

出典:Wikipedia

 興味深いのは、北向観音という名称は堂が北向きに建つことに由来すること、そして「北斗七星が世界の依怙(よりどころ)となるように我も又一切衆生のために常に依怙となって済度をなさん」という観音の誓願によるものといわれていること、さらに、善光寺が来世の利益、北向観音が現世の利益をもたらすということで善光寺のみの参拝では「片参り」になってしまうと言われていることです。

 とくに3つ目の善光寺が来世の利益、北向観音が現世の利益をもたらすということで善光寺のみの参拝では「片参り」になってしまうと言われていることは、言われて見ればその通りです。とかく宗教は、現世より来世を重視しますが、北向観音は、現世における利益をもたらすのだそうです!

 下の写真は北向観音の本殿です。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 本殿から文化財の愛染カツラの方に歩くと、鐘楼があります。


北向観音の鐘楼
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


北向観音の鐘楼
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 ところで、北向観音には、以下の文化財があります。

 ・愛染カツラ(上田市指定天然記念物、以下の解説も参照)


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 そして下の写真が天然記念物の愛染カツラです。


樹齢1200年の愛染カツラ
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


樹齢1200年の愛染カツラ
撮影:池こみち Nikon Coolpix S6400 2014年9月16日

 また北向観音の本坊である常楽寺には以下の文化財があります。

 ・常楽寺石造多宝塔(国の重要文化財) - 弘長2年(1262年)の銘あり。
 ・常楽寺本堂(上田市指定有形文化財)
 ・常楽寺石造多層塔(上田市指定有形文化財)
 
 上記のうち愛染カツラですが、愛染カツラといえば川口松太郎さんの小説「愛染かつら」です。その小説は、境内にある「愛染堂」と樹齢1200年のカツラの霊木をヒントに生まれたのでは…と言われています。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 私達が別所温泉を訪れたのは、北向観音の一角に人間国宝そして日本芸術院会員。文化功労者でもあります花柳 章太郎さん(本名:青山章太郎)の供養碑があります。

 そして、新派を代表する女形役者で人間国宝の花柳章太郎さんは川口松太郎さんと親交があり、川口松太郎さんらは、北向観音の一角に花柳 章太郎さんの供養碑を建てたのです。

 供養碑には「北向に かんのん在す 志ぐれかな」の句が添えられています。下はその花柳 章太郎さんの供養碑です。

 
花柳 章太郎さんの供養碑の前で
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


花柳 章太郎さんの供養碑の前で
撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400  2014年9月16日



撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 北向観音には、花柳 章太郎さん以外にも数名の供養碑や歌碑があります。下は、1923年に別所温泉を訪れた北原白秋の歌碑です。「観音の この大前に 奉る 絵馬は信濃の 春風の駒」が白秋の顔とともに刻まれています。


北原白秋の歌碑
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 上田市指定天然記念物の愛染カツラ(樹木)の斜め後ろには、懸造りが素晴らしい瑠璃殿があります。現在の瑠璃殿建物は、江戸時代の1809年に再建されたものであり、崖に沿って建つ瑠璃殿はすばらしいの一言と言えます。

 
懸造りが素晴らしい瑠璃殿
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

 下の写真を見てください。瑠璃殿はこんな場所に建っているのです。


瑠璃殿(右)
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


瑠璃殿
撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400  2014年9月16日

 愛染カツラや瑠璃殿がある小径をさらに進むと、別所温泉のメインストリートにでますが、その途中に「かしわや」旅館のすばらしい佇まいがありました。ぜひ、一度宿泊してみたいものです。


「かしわや」旅館のすばらしい佇まい
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


つづく