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若狭湾岸原発銀座視察

もんじゅ3
青山貞一
Teiichi Aoyama
池田こみち Komichi Ikeda

掲載月日:2018年8月
独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁


 施設・訴訟概要  敦賀原子力館  ふげん  三方五湖
 美浜原子力PRセンター  もんじゅ1  もんじゅ2  もんじゅ3

 最後に魅せられたのは、床に落ち燃えてている金属ナトリウムの消火訓練だ。下の写真は訓練の一部である。

 下は金属ナトリウムが流れる冷却管の模型。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900

 下は2次冷却パイプの模型。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900

 以下は金属ナトリウム片。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900

 消火訓練を受ける大学の学生たち。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900

 下は消火の際のコスチュームなど。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900

 ここまで見せられると、私たちは「何か違うだろー」という感じになった。

◆視察全体まとめ

 たまたま起きた金属ナトリウム漏れについては、その原因、対策などが分かったが、個別具体の金属ナトリウム漏れとは別に、組織としてこの種のリスクに常日頃からどう対応しているのか、組織としての事故対応へのガバナンスがどうなっているのか? である。
 
 IZAというメディアが「廃炉目前の「もんじゅ」に記者が潜入取材 資源小国日本を救う「夢の原子炉」だったはずが、今では…」という記事を書いていたが、信じられないほど湯水の予算を使い、六ケ所村同様、おそらく恵まれた給与を得て、高学歴の研究者が行ってきたことが、いとも簡単に挫折したのはなぜかという本質的な疑問を抱かざるを得ない。

 おそらく多くの生え抜きの研究員は、配管設置、管理作業はじめ具体的な作業はせず、下請け、孫請けの作業員が行っていたものと思える。これは5人もの作業員が亡くなった美浜原発でも同じだ。美浜原発でも、事故で亡くなったのは、関西電力の社員ではなく、外注先の作業員の方々だったという説明を聞いた。

 高速増殖炉(FBR)が諸外国で撤退したのに、一度始めたらどんなことがあっても止めないのは、日本だ。六ケ所村も20回近くもオープニングセレモニーを計画しながら、いまだに満足に稼働していない。

 技術面だけでなく青天井の支出で各国が撤退した後、日本とフランスはともに形式的には民主主義国であるが、極度な中央集権的国家である。しかも、権力中枢、関連省庁と関連業者との関係は深い。

 「政官業のトライアングル」さらには「政官業学報のペンタゴン」」という言葉があるが、日本、フランスともに原発開発は中央集権制度のなかで、「政官業」さらには「政官業学報」が一丸となって推進してきたのだ。

 原理的、理論的には可能であっても、実際にはその開発がもたらすマイナスの影響で止まったビッグプロジェクトはコンコルド(巨大超音速航空機)はじめ、欧米には多数あるが、なぜか日本では、いつの間にか、開発が地域経済振興策となることが多い。これは何も「もんじゅ」だけでなく、BWRやPWRの原発でも同じだ。

 そういえば、1982年に青山貞一、池田こみちが翻訳して学陽書房から上梓した「ノーマンの技術文明論―持続可能社会への展望」という本がある。その前書きで、原著者コリン・ノーマン氏は、ギリシャ神話の神々のなかで、唯一、火を使って道具をつくり、「技術を司る」神と言われたヒファースタス(日本語ではヘパイストス)だけが、容姿は醜く足が不自由だったという逸話を例にとり、技術のもつ弱さを指摘している。

 技術(人間が作り出した道具)というものには完全なものはなく、跛行性を内包するものであり、時としてその跛行性が重大かつ取り返しのつかない事故を引き起こすと指摘している。すなわち、科学技術への過信・慢心を強く戒めているのである。

 技術は人間や組織での使い方次第だというひとがいるが、彼は、ヒファースタスを例に、原子力・バイオテクノロジー・エレクトロニクスといった技術に依存する現代社会がどれほど脆弱なものであるか、技術文明論的視点から警鐘を鳴らしている。

「ノーマンの技術文明論
〜持続可能社会への展望から
 

コロン・ノーマン著
青山貞一・池田こみち共訳 
学陽書房
(すでに絶版)

 私たち日本人の多く、なかでも技術者、研究者、事業家、官僚、政治家らは「不完全な神であるヒファースタス」を知らず、まさに「ふげん」、「もんじゅ」という名をつけたように、神そして仏を恐れぬことをしてきたと言える。

 その意味では、IZAの記者がついけたタイトル「資源小国日本を救う「夢の原子炉」だったはずが、今では…」はまさに正解である。

 今後の廃炉を含めおそらく2兆円はくだらない「もんじゅ」だが、それでも美浜原子力PRセンターで青山、池田をセンターから追い出した所長がいうように、原発は「一番廉価な電気」なのだろうか?

 
 この後、副所長は、「ふげん」全体がよく見える場所でご自身の経歴はじめ東京から単身赴任で福井に来ていることなどを含め、「ふげん」とのかかわりについて詳しく話してくれた。


 この日、私たちは関西電力の大飯、高浜原発を外観だけでも写真を撮るべく、「もんじゅ」から大飯、高浜原発に向かった。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900


「若狭湾岸原発銀座」における原子力関連施設立地図
出典:グーグルマップをベースに青山が作成

 しかし、ものすごい風雨で運転そのものが危険となってきたので、大飯原発と高浜原発の中間地点で三方五湖まで引き返した。この日の予定は、米原でレンタカーを返却し、東京まで新幹線で帰る。

 昼食を食べていなかったので、三方五湖の名物、ウナギを食べようということになり、探した。あちこちで聞いた結果、最終的に下の看板にある「うなぎ料理 徳右エ門」を見つけた。午後3時までは休憩だったが、私たちがここにたどり着いたのは、ちょうど3時であった。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900


出典:グーグルマップ


出典:若狭路かんたんナ美

 下は「うなぎ料理 徳右エ門」の献立だ。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900

 私たち以外、まだ客はなく、2階の個室に通された。頼んだのは、もちろん、うな重、これほど美味しいウナギは、久々だ! とはいえ、そう簡単に「うなぎ料理 徳右エ門」に行けないが。

 私たちは思う存分「うな重」をたいらげ、一路、石田三成が関ケ原の戦い後でがんばった米原まで走り、米原の新幹線駅で車を返却し帰京した。
 

本稿終了