魚介類のダイオキシン汚染「詳細データ」
が示す内湾汚染の実態

情報公開特集号の中の魚介類
平成13年5月15日(火)発行 ニッポン消費者新聞より抜粋

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 本紙(ニッポン消費者新聞)が今回請求した文書は、「魚介類のダイオキシン濃度の詳細データ(産地名、魚種、個体毎のデータ、最新の年度) 」。昨年10月20日に「平成11年度魚介類中のダイオキシン類の実態調査結果について」の文書名で記者発表されているものの詳細データの請求にあたる。

 「詳細データ」には、150の各検体について、魚介の種類、漁獲水域、一検体につき用いられた個体数など、記者発表資料にはない情報があった。だが、一見したところ、汚染実態についての目新しい事実は見えてこない。そこで、専門家の助けを借りようと、ダイオキシン問題に詳しい民間調査機関「環境総合研究所」の青山貞一所長を訪ねた。

 データを見た青山氏がまず関心を示したのは、「漁獲水域」。とくに内湾で漁獲された魚の汚染濃度が気になるらしい。が、「詳細データ」を見ただけでは実はこれが見えてこない。すでに公表されている「発表資料」と照らし合わせる作業が必要となった。

 「詳細データ」に掲載されている汚染データは、ダイオキシンの各異性体ごとの実測値データのみで、検体の汚染濃度を現す「TEQ」は記載されていない。つまり、データは詳細だが、肝心の汚染の実態がこれではつかめない。一方、「記者発表」の方には、個別データはない代わりに「TEQ」のみがある。そのため、両者に共通の検体ナンバーを頼りに、「詳細データ」において漁獲地を見ながら、その漁獲地で取れた魚の汚染濃度を「発表資料」で確認する作業を行った。

 作業をしていくうちに、記者発表資料からは見えない事実、「内湾で漁獲された魚介類の汚染が極端に高い」ことが浮かび上がってきた。東京湾、大阪湾、瀬戸内海の三海域についてみると、別表のとおり(魚及び貝類のみ、甲殻類などは除く)。とくにスズキ、ボラ、アナゴで高い数値を示している。これらの御名は、「発表資料」においては、「その他生魚」でひと括りにされているため、知ることはできない。漁獲水域についても、これら三水域は「沿岸・沖合い」とあるだけだ。

 仮に、体重50kgの人が各魚貝を100g食べることを前提に、一日体重1kg当たりの摂取量を計算してみると、三水域の魚類については、平均値で6.328ピコとなり、国の定めたTDI(耐容一日摂取量)の4ピコを大きく上回った。

 青山氏は「産地を特定してみると極端な汚染実態が見えてくる。スズキやボラは汽水域の魚で東京都の調査結果でも高い値となっており、これを裏付けた格好だ。アサリは、生育の途中で何度も産地から産地に移動して出荷されるケースが多いと聞いている。水域の汚染を反映しているかは疑問」と解説する。

 もう一つ、重要な点として、調査にあたって、対象海域にどこを選ぶか、対象魚種に何を選ぶかが、全体の数値に大きく影響することが、今回の作業を通じて如実に示された。こうした調査にはサンプルの選択が極めて重要と青山氏は指摘する。

表<内湾(海)3水域で漁獲された魚介類の汚染データ>
注 :()内は体重50kgの人が各魚貝を100g食べた場合の
   体重1kg当たりのダイオキシン摂取量
例:スズキの場合 4.248pg-TEQ/g×100g
            ÷50kg=8.496pg-TEQ/kg/日
水域 魚 種 毒性等量 体重50kgの人が
100g食べた場合の摂取量
(pg-TEQ/g) (pg-TEQ/kg/日)
東京湾 スズキ 4.248 (8.496)
スズキ 6.541 (13.082)
アサリ 0.162 (0.324)
アサリ 2.224 (4.448)
大阪湾 イカナゴ 0.538 (1.076)
イカナゴ 0.667 (1.334)
アナゴ 8.308 (16.616)
コノシロ 9.148 (18.296)
瀬戸内海 クロダイ 0.388 (0.776)
マダイ 0.527 (1.054)
クロダイ 1.226 (2.452)
エソ 0.699 (1.398)
エソ 1.010 (2.020)
ボラ 3.439 (6.878)
タチウオ 4.397 (8.794)
カキ(養殖) 0.446 (0.892)
ノリ(養殖) 0.004 (0.008)
3海域平均 魚類 3.164 (6.328)
貝類 0.944 (1.888)


<記者発表資料にある平均値>
毒性等量 体重50kgの人が
100g食べた場合の摂取量
(pg-TEQ/g) (pg-TEQ/kg/日)
魚類 1.018 (2.036)
   うち国内産(沿岸・沖合) 1.216 (2.432)
うち遠洋・輸入 0.433 (0.866)
貝類 0.309 (0.618)
   うち国内産(沿岸) 0.362 (0.724)
うち輸入 0.070 (0.140)

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