宮古毎日新聞 2003年11月23日付掲載(同社HPから)

2003平成15 1123日  日曜日

「実効性ある条例の制定を」環境保全条例で意見交換

 平良市(伊志嶺亮市長)主催の「市環境保全条例案に係る市民討論会」が21日夕、JAおきなわ宮古支店大ホールで行われ、詰め掛けた多くの市民らが同条例の起草理由や内容について学んだ。討論では市民から「なぜもっと早く制定しなかったのか」「議会で継続審議となっている理由は」「市民への説明が不十分」など、活発な質問が出され、当局に対しては美しい環境を子、孫たちに残すためにも実効性のある市民のための条例が要望された。

写真説明・多くの市民や町村民が参加して活発な意見交換が行われた市環境保全条例案の市民討論会=21日夕、JAおきなわ宮古支店大ホール

 今回の市民討論会には、同条例案の起草に協力した理学博士でもある梶山正三弁護士、産業廃棄物問題の専門家で地質学者の関口鉄夫氏の講義の後、討論会のコーディネーターを務める東京農業大学亜熱帯農業研修センターの中西康博助教授も宮古の地下水問題等について説明を行った。

 参加者から出た質問としては「私の住む自治体にも環境保全の条例はあるが誰も守ってはいない。ぜひ実効性のある条例を制定してほしい」

 これに対して梶山弁護士は「条例というのは行政と住民との緊張感が大切。市民が真剣に自分の問題としてとらえないと実効性を持ち得ない。地域の住民のやる気と問題意識が重要」と述べた。

 「なぜ、議会では継続審議が続いているのか」の質問に後藤浩行市生活環境課長は「議員は推進派と慎重派に分かれ、議論が尽くされていない。市民に説明不足や市町村合併後にすべきとの意向がある」と説明。また、個人的に訪問して得た業者社長の回答として「未来に美しい自然を残すことは私たちも同じ気持ち。しかし、条例の規則にあるモニタリング調査にはかなりの経費がかかる。今の厳しい社会情勢では難しい」との見解も紹介した。

 また、伊志嶺市長も「議員も条例そのものに反対ではなく施行規則を問題視している。これは後の問題と説明しても理解が得られていない」と現在の議会における状況を説明した。

 平良市議の真栄城徳彦氏は「行政としてこの条例の持つ意味、意義、中身、方向性をもっと早く市民に説明する義務があった」と当局の姿勢を批判した。

 これに対して伊志嶺市長は「全庁体制で取り組み、これまで住民説明会を開催しても慎重派の出席が少なかった。この討論会(慎重派含めた)を一番最初に力を入れるべきだった。反省している」と述べた。
そのほかの意見として「当局が条例案を通したいのならどの部分が反対なのかを突き詰めるべき。これまで以上に真剣に頑張ってほしい」「美しかった昔の宮古と今は大きく違ってしまった。もっと早く環境を保全する条例を制定すべきだった」などが要望された。

 今回の市民討論会は、市議会や文教社会委員会で継続審議が続く同案について法制度、他の条例とのかかわりなど広く市民・郡民で議論し条例案の条項を理解促進し、平良市の環境保全を推進することを目的に開催された。

  

「県調査信頼できない」西原産廃火災問題

 平良市西原の産業廃棄物最終処分場火災問題で、昨年11月に調査報告書を市に答申し、解散していた平良市調査委員会のメンバーが22日午後、今年六月までに県がまとめた「処分場に係る地質調査報告書」について協議した。委員らは県の報告書中で数々の問題点を指摘。とくに市調査委で結論付けた処分場内からの汚水流出の有無について、県が報告書に記載していないことを強調。その上で「県が出した報告書はおかしな点が多い。信頼できない」などとし、県の姿勢を痛烈に批判した。

 この日の委員会は平良市が開催。県の報告書を各分野の専門家に分析させるとともに、市独自の方針を検討することも兼ねた。委員会には元委員長の関口鉄夫さんをはじめ、元委員の松崎治さん、下地博和さん、依田彦三郎さん、池田こみちさんが出席。会場となった市中央公民館には三十人以上の市民が詰め掛けた。

 冒頭、関口さんは「われわれの委員会は解散しており、実質これが最後の検討会になる。これからは皆さん自身が県と交渉しなければならないということを認識してほしい」と参加住民に呼び掛け、この日の検討会の内容を住民説明会の中で生かすよう促した。

 この後、各委員が県の報告書に対する問題点を指摘した。関口さんは処分場から流出している汚水について「下地さんを中心に、われわれは汚染水が流れ出ているという証拠を県に何度も突きつけてきたが、報告書には明確にされていない」と批判。さらに委員の下地さんが県の地質調査検討委員会委員を務めたことに関し「委員の下地さんが汚染水が流れていると指摘しているのに、報告書の中に記載されていないのはなぜか」と報告書作成に至る経緯も疑問視した。ボーリング調査の報告についても「今回の報告書を見る限りでは、ダイオキシン類は焼却灰から調べられていない」と指摘した。

 下地さんは「県の報告書は、(地質調査検討委の)一委員として容認できない。汚染水の流出についても記載されておらず、これに関しては県に抗議文も出した」などと不快感を示した。

 ほかの委員も次々と報告書の問題点を指摘。旧調査委員会の調査データを踏まえ、多角的に県の報告書を検討し、その調査結果を疑問視した。

写真説明・平良市の旧調査委員会が県の報告書を検討した=22日、平良市中央公民館