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リトアニアの原発事情
Masao Fukumoto(berlin)
掲載月日:2012年10月16日
 独立系メディア E−wave Tokyo

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 日立の受注はすでに内定していると思います。

 リトアニアには、旧ソ連時代に設置されたチェルノブイリ事故原子炉と同型の原子炉が2基ありました(イグナリナ原発)。ただ、1基当りの出力は事故原子炉の1.5倍(1500MW)。

 チェルノブイリ事故後、制御棒の装填時間を短縮するなどの改造工事が日本政府の支援で行われましたが、リトアニアがEUに加盟する時に2基原子炉の廃炉が条件とされ、1号機が2004年末に、2号機が2009年末に停止しています。それに伴い、リトアニアは電力輸出国から輸入国に転じています。それによってエネルギーのロシア依存が高まります。

 リトアニアは旧ソ連領とはいえ、本来母国語はロシア語ではなく、ソ連に占領されたとの意識が強くて今もロシアに対する反感のたいへん強い国で、小生が行った時も経済エネルギー省の役人はロシア依存は絶対いや、ロシア製の原子炉も買わないと豪語していました。

 さて新原発はイグナリナ原発の隣に建設される計画ですが、何とこのエリアは大きな湖のある国立公園です!!冷却水はこの湖から取水し、湖に排水していました。そのため、湖の水量、水温調整をするために特別にダムまで用意されていました。このダムは今はリトアニア領ではないのですが、特別に原発職員が派遣されているということでした。

 イグナリナ原発の所長に聞いたところでは、たとえ新しい原発ができても新原発の技術が違いすぎるので、イグナリナ原発の職員のほとんどは新原発で再就職できないだろうといっていました。イグナリナ原発のあるところは原発以外に何もないところで、原発近くに原発職員のための巨大団地ができていましたが、廃炉のために残る職員以外は、現地を去るしかなく廃墟になるだろうともいっていました。

 それと、イグナリナ原発で驚いたのは非常用電源のディーゼル発電機の多さです。確か10基くらいあったと記憶していますが、それが単に真横に並んでいるだけなのです。それじゃ、どこかで火事になったら何基あろうが意味がないだろうにとぞっとしたのを覚えています。

 炉心の上に立ったことのある唯一の原子炉である上、出入りの検査も一番厳しかったので、いろんな意味でたいへん思い出のある原発です。

 リトアニアを含むバルト3国とポーランドは原子力発電で協力することになっているのですが、今後どうなるかですね。

 ポーランドは90年代はじめに原発の建設を中断してそれ以降断念していて、新しい原発を建設するのに躍起です。ただもうノウハウがないので、まずはバルト三国と協力してノウハウを蓄積し、自国で独自にという目論見なのですが。

 東欧諸国では、民主化前に公害の排出源だったたいへん老朽化した石炭火力がたくさんあった、まだあるので、一般市民には依然として火力発電に対する嫌悪がたいへん強く残っています。まあポーランドでは風力が増えているとはいえ、東欧諸国では再生可能エネルギーを増やしていくだけの国と市民の経済力がまだないのが問題です。

 それに対して、原子力となると工業先進国がいろいろ援助してくれるのでそこにうま味があります。

 リトアニアの日立にしても、国際協力銀行など日本の政府金融機関がどう絡んでいるかですね?

 スロベニアでは、前々から原子炉をもう1基建設したいという意向があるのですが、まだ計画が具体化していない段階で国際協力銀行がもう融資のレター・オブ・インテンドを出していました。

 こうした諸々の環境を考えると、リトアニアで市民が原子力にノーというのはたいへんな重みがあると思います。