月刊ファイブナイン誌 2002年12月号

高速ADSL自宅導入記

           青山貞一
              
 
 インターネット全盛である。ここ1年、ISDNに比べ20倍から100倍高速のADSLが使えるようになってきた。

 ADSLは非対称ディジタル加入者線(Asymmetric Digital SubscriberLine)の略で、既存の電話回線で高速通信を実現する技術である。利用者端末で送信と受信に圧倒的な通信量の違いに着目し、受信速度を送信速度に比べ高速化している。

 「非対象」は送受信速度が非対称であることを意味する。通常電話の周波数帯域は4KHz付近の周波数を使うが、ADSLでは4KHz以上、ハムのトップバンドの下までの周波数を使っているようだ。

 今年になり8MbpsのADSLサービスが自宅地域(東京都品川区)でも開始された。そこで1月に申請し2月上旬に連絡が来た。我が家では娘も妻もモデムで接続していたので、この際、一家でADSLが使えるようにと考えた。幸い自宅ではISDN回線は使っていなかったので、ADSL化に伴う電話番号の変更はなく電話とADSLが1回線で使えることになった。

 工事はすべて自分たちで行った。通常のモジュラージャックから電話と分けるスプリッタを入れた後、モデムに結線し、モデムの直後にルーターを入れた。秋葉で買ったルータには4回線のLANジャックがついている。ここから鉄骨3階建の自宅の各階に8芯ケーブルを引き回した。我々ハムにとっては朝飯前の工事である。ルーターとケーブル関係実費約1万円で自宅のどの部屋でもADSLが使えるようになった。無線LANも考えたが、鉄骨ビルであること、ハムの送受信での障害を考慮しケーブルとした。

 ところで8MのADSLには重要な落とし穴がある。それは電話局から距離があると、ケーブル内減衰により大幅に通信速度が著しく低下することだ。また屋内外でISDN回線と併設されているとノイズ等の影響を受け使用できなくなる。

 これは1Mより8Mの方がより高い周波数を使っているため顕著となる。実際、私の場合、電話局からの実質距離は2km以上となるらしく、実測速度は受信が4Mbpsであった。8Mのちょうど半分である。半分でも従来に比べ、約100倍の通信速度を一家で月に数1000円で常時接続できるのはよかった。

 これからADSLに加入する方のために示すと、ADSLでは通信速度は電話局→利用者が1.5〜9Mbps、利用者→電話局は16〜640kbpsで、最大伝送距離は5.5km(下り1.5Mbps)〜2.7km(下り9Mbps)とされている。日本ではISDNとの混信が起きるなどの理由から実用化が遅れていたが、99年12月に東京めたりっく通信により、大都市で限定的に商用サービスが開始された。

 最後に、一時期、電力会社の電灯電力ケーブルを使ったインターネット利用がもちががった。我々ハムは、インターフェアの懸念からこの案に大きな危惧がある。

 今後、光ファイバーの実現とともに、最高100Mbps、現在のさらに10倍以上の超購読通信が可能となり、既存の電話線を使ったADSLは、それまでの「つなぎ」である。その意味からも電灯電力ケーブル利用は邪道である。