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真夏の箱根
Bよみがえった箱根関所
〜役割と施設の詳細〜

池田こみち 

13 September 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載金

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 以下は、現地で撮影した写真とパンフレットを元にした論考です。

 出典: http://www.hakonesekisyo.jp/data_limg/data_02.jpg

箱根関所の役割


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 箱根関所が現在の場所に置かれたのは、江戸時代の初期、元和5年(1619)のことと言われています。徳川幕府は、全国53カ所に関所を設けましたが、その中でも中山道の木曽福島(長野県)、碓井(群馬県)、東海道の新居(静岡県)、そして箱根(神奈川県)の4カ所は、規模も大きく、最も重要な関所と考えられていたようです。

 関所の役割は、一般に「入り鉄砲に出女」を取り締まるところ、つまり江戸に入る武器類と江戸から出て行く女性に対して監視の目を光らせていたと言われていますが、ここ箱根関所では、入り鉄砲検査は行っておらず、「出女」に厳しい関所よという特徴がありました。

箱根関所復元の軌跡

<復元のきっかけ>

 江戸時代末期に行われた箱根関所の解体修理の詳細な報告書である『相州箱根御関所御修復出来形帳(慶応元年:1865)』が、静岡県韮山町(現、伊豆の国市)の江川文庫から、昭和58年(1983)に発見されました。

 箱根町でこの資料の解読を行った結果、当時の箱根関所の建物のや構造物などの全貌が明らかになりました。そこで、平成19年(2007)春の完成を目指して発掘調査を行い、その成果や資料の分析結果に基づき、建物の復元や関所周辺の環境整備を行うことになったのです。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

<箱根関所跡保存整備事業の歩み>

 平成11年度から平成13年度にかけて、箱根関所の跡地一帯の発掘調査を行い、資料との整合性や遺構の残存状況の確認を行った上で、大番所・上番休憩所・厩・雪隠・京口御門などの建物や石垣、石段などの構造物の復元を行い、平成16年(2004)4月から、これらの建物の公開を始めました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 平成16年度からは屏風山側の整備を進め、遠見番所や足軽番所、江戸口御門や足軽番所雪隠、京口御門から芦ノ湖へと続く石垣や京口千人溜斜面の石垣の復元工事を行い、さらに周辺環境整備として電線の地中化の準備や杉並木の保全を行い、平成19年春の全面公開に至りました。

◆調度品の復元

 江戸時代に箱根の関所役人が書き残した「箱根御関所日記書抜」などの資料を詳細に分析すると、箱根関所の各建物の中に、さまざまな調度品や武器・武具などが置かれ、どのような役割の役人や足軽が何人いたかなどという事がわかりました。

 箱根関所の復元工事では建物や石垣などのほか、これらの調度品や武器・武具などの復元を行うとともに、当時の様子がわかる人形などの配置を行い、往時の様子を偲ぶことが出来ます。

◆シルエット展示

 役人の人形などについては、当時の人の身体的特徴や衣服の色、模様などが明らかになっておりません。このため、リアルに展示することは逆に史実とは異なったイメージを与える可能性があるため、シルエット展示という淡い色で表現する展示方法となっています。

●伝統の技術も復元する

 箱根関所の復元整備は、単に建物や石垣などを江戸時代に存在した姿に再現するといったことだけではありません。江戸時代の職人が身につけていた木工技術や石工技術といった「わざ」を使い、その技術によって建物や石垣を復元していくものなのです。そこでは、炭壷や曲尺といった古来の大工道具を使い、継手や仕口と呼ばれる加工を施した木材を組み、あたかも一本の木であるかのように木材をつなぐ職人の技術が受け継がれています。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

●箱根関所の建物とその役割など
 出典: http://www.hakonesekisyo.jp/data_limg/data_02.jpg


@大番所・上番休息所
 大番所には面番所と呼ばれる部屋があり、小田原藩から出向した関所役人がこの部屋に詰め、ここを通る旅人の関所改めを行った関所の中心となる建物です。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 上番休息所は、大番所の西側に位置し、棟続きの建物です。1ヶ月交替で勤務する関所役人の日常生活の場として使われました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 ・面番所  関所役人や定番人が詰めており、部屋の前の縁側では、
        人見女が「出女」の取り調べを行っていました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 ・上の間  客間であり、人はいませんでしたが、旅人を脅す道具として
        鉄砲や弓が飾られていました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 ・上番休息所 主に関所役人の寝室に使われていました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 ・勝手板の間 囲炉裏が置かれ、関所役人の食事や休憩に使われ
        ました。また、
        部屋の奥には戸棚があり、茶碗や汁椀、皿などのさまざま
        な食器や持ち運び用の各種灯りの道具がしまわれてい
        ました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 ・湯殿   風呂桶が置かれていたわけではなく、たらいに湯を汲んで、
        湯浴みをしていました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

 ・台所土間 関所役人の食事が作られていた場所。水屋の吊り棚には
        調理道具が置かれていました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

A厩(うまや)
 5頭の馬をつなぐようになっていましたが、実際には2頭しかおらず、空いた場所に掃除道具や火消し道具などが納められ納屋と兼用でした。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

B足軽番所雪隠
 トイレのこと。関所役人が使用するためのもので、旅人は利用できませんでした。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

C京口御門とJ江戸口御門
 京都側、江戸側にそれぞれ位置する関所の門で、形や大きさは同じです。高麗門という形式の門で、その高さは大番所・上番休憩所を凌いでいます。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

D京口千人溜・K江戸口千人溜
 それぞれの側から来た旅人が関所改めを待つ待機場所として利用されていた広場でした。

E矢場
 弓や鉄砲の練習場で、江戸口御門の外の芦ノ湖側にありました。

F御制札場
 関所の役割が記載された高札が掲げられていました。

G遠見番所
 江戸時代、旅人が芦ノ湖を船で通行することは禁止されていましたので、この遠見番所から足軽が昼夜を問わず交替で四方の大きな窓から芦ノ湖や街道沿いを見張っていました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

H足軽番所
 @の大番所・上番休息所の次に大きな建物で、大番所・上番休息所の向かい側、江戸口御門の脇にありました。昼間は足軽が控えていたり、夜は足軽が寝ていた場所です。

 建物内には足軽のための部屋や休息所、関所破りをした罪人などを一時的に拘置する獄屋(牢屋)などがありました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

I三つ道具建
 刺股(さすまた)、突棒(つくぼう)、袖搦(そでがらみ)という捕り物道具が旅人を威嚇するように立てられていました。

L外繋(そとつなぎ)
 足軽番所と京口御門の間にあり、馬をつなぎ止めるために、頑丈な太い柱と桁を組んだものです。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

●役所の役人たち

 関所には、伴頭(ばんがしら;関所の責任者)1名、横目付(伴頭の補佐をする人)1名、定番人3名、足軽15名などがいました。また、女性の通行人を厳しく取り締まったため「人見女」という役の女性の役人がいました。


撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 2010.9.3

つづく