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「容器包装リサイクル改正法」
最終審議へ
〜省益対立で妥協の産物!?〜

池田こみち

掲載日:2006年6月5日


 6月は環境月間、あちこちで環境関連イベントが開催されている。この週末、私は函館市で開催された市民主催による学習会に呼ばれ、函館市役所が昨年度実施した廃棄物処分場周辺での松葉ダイオキシン調査についての解説とゴミ問題についての講演を行ってきた。

 新聞・テレビなどでも環境関連の記事や番組が多いようだ。

 ちなみに、お父さんたちが大好きな夕刊紙、日刊ゲンダイでも以下のような記事が掲載されたとか。


日刊ゲンダイ 2006.6.3号より

◆モスフード 持ち帰り用ポリ袋全廃 他にも広がるか

 「モスバーガー」を展開するモスフードサービスは1日、商品持ち帰り用ポリ袋の使用を7月に全面的にやめると発表した。資源保護や温暖化防止に貢献するのが狙いで「(コンビニ、スーパーなど)チェーン店では初の試み」としている。

 昨年度のポリ袋使用量は4478万枚。全廃すれば減量の石油を約352キロリットル(ドラム缶1760本分)節約できるという。変わりに紙袋を提供する。

 ポリ袋廃止に合わせ、透明アイスカップの原料を石油からでんぷんに切り替える。同社のプラスチック容器包装類のうち、ポリ袋とアイスカップが占める割合は約42%。今後はドリンクのふた、フォーク類などの原料も見直し、3年後に約9割を非石油系にしたい考え。

 レジで配られるポリ袋をめぐっては、有料化を促す容器包装リサイクル法改正案が国会で審議されている。モスフードの全廃措置は関係業界に大きな影響を与えそうだ。


 モスバーガーの英断にエールを送りたい。

 消費者はハンバーガーを食べるなら、マックよりモスバーガー、という選択を是非徹底したいところである。

 ところで、こうした企業の取り組みを見るにつけ、5月23日、衆議院環境委員会であっさりと可決してしまった(通称)「容器包装リサイクル改正法」の問題点を改めて指摘せざるにはいれない。

 政府案に対して、民主党ががんばって附帯決議はつけたものの、19項目も附帯決議(下記参照)があること自体が、この法律が欠陥法であることを露呈している。はっきり言ってゴミ問題・リサイクル問題の本質を見誤ったひどい法律である。

 要するに、容リ法改正政府案は、次の2点を目玉として、EPR(拡大生産者責任)を強化したとされている。

(1)効率的なリサイクルによって得られた余剰金(推定60〜120億円)を、自治体と生産者で折半する新たな制度創設

(2)レジ袋有料化への誘導

 果たしてこれが目玉と言えるかどうか・・・。今直面している課題の解決にはまったく結びつかないばかりか、大量生産→大量消費→大量リサイクルをさらに進めただけで、本来の発生抑制、排出抑制には繋がらない制度ではないだろうか。

 現行の容リ法により自治体は「資源化貧乏」と化し、生産者も消費者も本来の責任を問われてこなかった、という限界、課題をどこまで解決できたのだろうか。

 カナダのノバスコシア州では、埋立焼却禁止物を明確に規定したうえで、飲料容器はデポジット・リファンドシステムを法制度化し、税金による容器回収は行われていない。そこでは、生産者・流通業者と消費者がそれぞれ一定の金銭的な負担を甘受し安定的なリサイクルシステムを軌道に乗せている。

 韓国では木製の爪楊枝や割り箸の使用を禁止し違反者には罰金が科せられる。

 台湾でもプラスチック製の容器包装に対して課税措置に類する対策が導入され大きな効果を出している。

 規制すべき処はしっかり規制し、金銭的負担を求めるところは求め、実効性のある法制度こそ今必要であるにもかかわらず、またしても中途半端な法律が自治体や消費者、そして事業者の本質的な取り組みの足をひっぱることになるのではないかと危惧される。

 6月の6日〜8日の3日間で参議院の審議が行われるとのことだが、どこまで本質的な議論審議が行われるのか心許ない。

 附帯決議に盛り込まれたないようこそ、今回、しっかりと制度化すべきだったのではないのか。19項目の附帯決議をいつまでに誰がどう具体化するのか、はっきりしてもらいたい。

 結局、1年間もかけて、環境省と経済産業省両省の審議会で議論してきてこの程度ということは、両省の利害が対立がめだっただけで、審議会として本来の役割を果たしていないと言われても仕方があるまい。


○容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

@循環型社会形成推進基本法の基本原則に則り、発生抑制を最も優先すべきであることを、地方公共団体、事業者、消費者等に徹底するとともに、レジ袋の使用の合理化等に関する事業者の取組状況について十分に把握し、適切な指導を行うこと。

 また、発生抑制・再使用の取組みについて、積極的に推進し、その取組状況について公表すること。

Aコ−ヒ−ショップやファストフード店等販売施設内で供される容器などについて、再使用容器の利用が望ましい形態について事業者及び消費者双方の立場から幅広い検討を行い、必要な措置を講ずること。

B再使用容器と使い捨て容器とのコスト・環境負荷等について比較を行い、本法に基づく再使用容器の利用促進措置について検証を行うとともに、必要な措置を講ずること。

Cペットボトルの再使用について、諸外国の実情と課題を勘案し、国内における定着の可能性に.ついて検討すること。

D海外への輸出や不法投棄等、リサイクル名目で不適正な処理が行われることがないよう、現行の規制を徹底するとともに、必要に応じて規制の在り方等について検討すること。

  また、国内のペットボトルなどのリサイクル体制の確保を図るため、市町村に
 よるペットボトルなどの安易な輸出を抑制するための措置を講ずること。

E様々な再商品化手法に係る環境負荷の程度について調査を行い、その結果を公表すること。

Fプラスチック製容器包装の再商品化手法については、循環型社会形成推進基本法の原則を堅持すること。

G質の高い分別収集及び再商品化を推進するため、排出方法等の周知を消費者に徹底するとともに、市町村間における分別方法の標準化など、消費者にわかりやすい回収の在り方についても検討すること。また、消費者による適正な分別排出を促進するため、事業者における素材ごとに分離しやすい容器等の開発及び利用の推進を図ること。

Hリサイクル製品・再使用容器に関し、特に公共事業におけるリサイクル製品の調達の拡大など、国・地方公共団体におけるリサイクル製品等の調達を更に進め、リサイクル製品等の市場拡大を促すよう努めること。

I事業者による容器包装廃棄物の排出抑制促進措置を実効あるものとするため、自主的取組が不十分な事業者に対しては勧告・公表・命令等の措置を的確に講ずること。

J各市町村の分別収集費用の透明化・効率化に資するため、容器包装廃棄物を含めた一般廃棄物の処理コストの分析手法を示す等、技術的な支援に努めること。

 また、再商品化の合理化に資する分別収集が促進されるよう、資金拠出制度の運用を工夫するとともに、その制度の検討に当たっては、透明性を確保すること。

K市町村における質の高い分別収集・選別保管体制の構築を図るため、循環型社会形成推進交付金等を活用した財政的支援により必要な施設の整備を推進すること。また、プラスチック製容器包装の分別基準適合物の質の向上を図るため、循環型社会形成推進交付金等の仕組みを活用して都道府県又は地方ブロック単位で廃プラスチック選別保管施設の整備を行うこと。

L消費者が環境負荷の少ない消費行動を行うことが重要であることにかんがみ、関係者に対し本法の内容等について周知徹底を図るとともに、事業者に対して、製品に分別排出やリサイクル製品の利用の促進等に資するような表示を行うなど、必要な情報提供を積極的に行うよう促すこと。

M再商品化義務を果たさない「ただ乗り事業者」に対して、法に基づく公表、命令等の措置の迅速な実施など、厳格な対応を行うこと。また、「ただ乗り事業者」対策として、本法に基づく再商品化義務を履行しているかどうかを表示する等の取組みの促進を図ること。

N事業者に対する使い捨て食器などの使用抑制措置の必要性について、諸外国の法令も参考にしながら検討を行うこと。

O本法の対象ではない事業系の容器包装に係る3Rについても、事業者による自主的な取組みの促進等を積極的に推進すること。

P特定事業者の委託を受けて分別基準適合物の再商品化を行う指定法人は、平均落札単価や、市町材の保管施設ごと・品目ごとに落札した事業者の名称、再商品化手法等の公開を行っているが、関係省庁の連携協力の一下に、指定法人の業務の効率化・透明化を一層徹底するよう努めること。

Q本法附則第四条に基づく次回の見直しにおいては、より効果的な容器包装廃棄物の3Rの推進を図ることができるような各主体の役割分担の在り方について検討を行うこと。

Rレジ袋の有料化に伴い発生した収入について、その使用方法について透明性を確保しつつ社会貢献の観点等から環境対策等に資する使途となるよう事業者に対し必要な助言を行うこと。