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島嶼地域の
ごみ処理のあり方を問う

池田こみち
環境総合研究所副所長

 2008年10月18日 無断転載禁

 筆者は、これまで沖縄県の廃棄物問題に少なからず関与してきた。

 宮古島の産廃処分場火災に伴う村民の健康影響や隣接海域の汚染問題、沖縄本島読谷村では、産廃安定型処分場から高濃度のクロルデンが検出され、処分場のさらなる拡張計画をめぐり、地元住民と行政、事業者を巻き込んだ大問題に発展するなど、いずれも難しい課題に直面している。

 ※池田こみち:沖縄県による産廃調査の問題点

 日本自体、島国であることから、取り囲む海域の保全や山間部の水源地域の環境保全、資源保護などの観点からアメリカや中国などの大陸でのごみ処理とは異なる処理のあり方が模索されるべきである。しかし、沖縄をはじめとするいわゆる離島や、島嶼地域では、これまで、全国一律の中央集権的ごみ処理を推進してきたことによりあちこちで様々な問題が噴出している。

 東京都内には大島をはじめとする島嶼地域があり、現在、八丈島に建設が予定されている一般廃棄物管理型最終処分場の建設をめぐり議論が沸騰しているという。同じ都内といえども島嶼地域に起こっている問題はほとんどニュースにもならずほとんどの都民はその実態を知らない。

 島嶼地域の生活は漁業と観光によって支えられており、なんと言っても周辺を取り巻く海域の環境を守ることが漁業資源や観光資源を守ることに通じることは言うまでもない。また、飲料水の水源の保全や地震など自然災害等による斜面の崩壊をいかに防ぐかが課題となっている。

 ところが、今回計画されている八丈島の一般廃棄物最終処分場は、八丈島の水源の上部に位置し、地形・地質的にも非常に脆く、主として、島嶼地域から排出される焼却灰や不燃ごみを埋め立てることに対する不安が広がっているというのである。この点については、八丈島の地質、火山噴火史を研究して20年になる千葉大学大学院理学研究科の津久井雅志准教授や環境地質学が専門の日本環境学会前副会長・坂巻幸雄氏が現地を訪れ、立地位置の問題点を指摘している。

 すでに「生活環境調査」(パシフィックコンサルタントが受注)が終了し、公表されているが、その内容はきわめておざなりであり、島嶼地域における環境の特殊性などが考慮されていないようである。

 そもそも、離島は島自体の面積が限られている。しかも水源はどの島でもきわめて貴重であり、島民の生活や産業を支える命綱でもある。なおかつ、離島の産業は主として漁業、農業、観光であり、それらの資源を汚染させることは経済的にも自滅の道を歩むのに等しい。そのような地域で、なぜ大島に次いでまた八丈島に巨大な廃棄物処分場を作ろうとしているのか、抜本的な廃棄物政策の見直しが必要である。

 現在、ごみの収集及び中間処理(主として焼却処理)はそれぞれの島の町村が独自に行っているようだが、そこから排出される焼却灰の処理、不燃ごみの処理を東京都島嶼町村一部事務組合(以後、「一組」と略称)が行っているためにごみ処理の一体性、整合性が取れていないことが見て取れる。島嶼地域であればこそ、焼却灰などが出ないようなごみ処理のあり方、煙や灰で限りある島の資源を汚染しなくても済むような資源管理のあり方が検討されなければならないだろう。

 島嶼部では、本土以上の廃棄物の排出抑制、発生抑制、資源化の取り組みが島民参加のもとで行われなければならない。

 これを機会に是非、八丈島だけでなく、島嶼地域の住民が一丸となって、これからの島嶼地域の新しい資源管理のあり方を模索すべきである。本土の都市部と同じような焼却・埋立を行うことのコスト面の課題、環境面の課題、そして何より、住民や観光客も含めた開かれた議論を踏まえた政策立案が望まれる。

<関連サイトの紹介>

一般廃棄物管理型最終処分場にかかる生活環境調査書
 http://8jogomisyobunjo.sakura.ne.jp/tyosasyo/index.html

事業の概要は以下の通りである。

 ・事業の種類:一般廃棄物管理型最終処分場
 ・埋立対象物:償却残渣、不燃物
 ・埋立期間 :平成23年度〜39年度までの17年間
 ・処分場規模:敷地面積 70,400u
       埋立面積  6,000u
       埋立容量 49,500m3
       埋立構造 準好気性埋立構造
 ・立地位置:神湊港から東南方向に約2km、標高400m以上の山林内
      水海山(みずみやま)の旧集落周辺の町有地

 東京都の条例では、埋立容量が5万立方メートルを超えると環境アセスメントの対象となるが、今回は500m3規模を小さくすることによって環境アセスメントの対象から外れており、明らかなアセス逃れとの非難を免れ得ない。

 もっとも、一組では、すでに2006年4月にほぼ同規模(49,500m3)の管理型処分場を大島に建設しているので、同じ要領で着々と建設を進めようとしているのである。
http://8jogomisyobunjo.sakura.ne.jp/2006/04/2006428.html

東京都島嶼町村一部事務組合
 http://www.tosho-ichikumi.jp/

 事業主体は、東京都島嶼町村一部事務組合である。
この一組は島しょ9町村(大島町・利島村・新島村・神津島村・三宅村・御蔵島村・八丈町・青ヶ島村・小笠原村)で構成されており、主な業務内容は;

1.島嶼会館の管理運営に関すること
2.一般廃棄物の最終処分場の設置・管理運営に関すること
3.島嶼の振興を図るため、共同で実施する調査・研究等となっている。

八丈島の一般廃棄物管理型最終処分場に関するページ
 http://8jogomisyobunjo.sakura.ne.jp/

南海タイムス社が取り上げた記事のホームページ
http://www.nankaitimes.com/news_photo/photo08/photo/topnp_08.html 
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