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やはり焼却処理される
低濃度PCB廃棄物


池田こみち 

 2009年3月3日 無断転載禁

 2009年3月2日、中央環境審議会専門委員会が開催され、大量に保管されたままとなっている微量PCB混入廃棄物の処理方針についての検討が行われたことが日経新聞に報じられた。

 これについては、既に2008年9月にとりまとめた「微量PCB混入廃電気機器等の処理方策について(中間的整理)」として処理方法が(案)として提示されていたが、それがいよいよ動き出す
ことになるようだ。
 http://www.env.go.jp/council/03haiki/r0316-01.pdf

 中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会
 微量PCB混入廃重電機器の処理に関する専門委員会 委員名簿
 http://www.env.go.jp/council/03haiki/meibo03-16.html

 重要なことは、低濃度PCB廃棄物の処理として焼却処理が提案されていることである。環境省は、焼却実証試験において、「確実かつ周辺環境へ影響を及ぼすことなく安全に分解されることを確認」したとしているが、果たして問題はないのだろうか。

平成21年2月27日
微量PCB混入廃電気機器等の焼却実証試験(第5回)の実施結果について
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=10831

[1]周辺環境への影響について(「別紙」表2参照)
・ 施設の敷地境界における大気中のPCB濃度、施設の周辺における大気中のダイオキシン類濃度については、関係法令に定める基準値等よりも低いことを確認しました。

[2]排ガスについて(「別紙」表3参照)
・ 排ガス中のPCB及びダイオキシン類の濃度については、関係法令に定める基準値等よりも低いことを確認しました。

・ また、排ガス中のPCB及びダイオキシン類の濃度については、試験試料を投入せずに施設を運転した場合(通常運転時)と、試験試料を投入して施設を運転した場合(本試験時)において顕著な変化がないことから、試験試料を投入したことによる排ガス中のPCB及びダイオキシン類濃度への影響はないことを確認しました。

 高濃度PCB廃棄物については、すでに国営企業(JESCO:日本環境安全事業株式会社)による処理施設が全国5カ所(北九州・豊田・東京・大阪・北海道)に設置され処理を開始している。そこでもいろいろな問題が発生しているようだが、それ以上に、膨大に保管されている(ことになっている)低濃度PCB廃棄物の処理をどうするのか、は大きな問題である。

 審議会での結論はすでに「焼却処理」と決まっているようだが、微量PCB混入電気機器に分類されるトランスやコンデンサの数は120万台と推定され、それらの中のPCB含有絶縁油は膨大な量にのぼると考えられる。処理方策(案)では850℃以上の高温で焼却処理できる施設を環境大臣が認定することとなっているが、産業廃棄物焼却施設に限定するのか、一般廃棄物焼却施設も認定される可能性があるのか、これから、認定基準についての詳細が定められることになるようだ。

 いずれの場合も住宅地に隣接している施設も多いことから、慎重な認定、監視体制の整備が求められる。一般ごみが減少傾向を示す中、格好の高カロリーごみとして絶縁油などを受け入れることになっては大変だ。

 ところで、東京都内では江東区青海(中央防波堤内側埋立地内)にPCB処理施設が建設され、平成17年から処理を開始している。この施設での処理は焼却ではなく脱塩素化分解方式によるPCBの化学分解である。

 そこでは、以下のような委員会が設置され、安全性については十分な監視と管理が行われている事となっているが、そこで、平成19年平成19年9月11日の敷地境界(北西端)における大気中ダイオキシン類の測定において、ダイオキシン類が環境基準として定められている0.6pg-TEQ/m3を超過し0.62pg-TEQ/m3という高濃度を記録している。

資料1 東京PCB処理施設における操業状況について
http://www.jesconet.co.jp/facility/tokyo/environment/pdf/15sougyoujoukyou.pdf

 この資料の中で、次のように説明している。「敷地境界の大気測定において、ダイオキシン類(DXNs)濃度が、自主管理目標値の定めはないものの大気環境基準(0.6pg-TEQ/m3)を超える値が測定された。図1に示すとおりDXNsの成分は、ジオキシン類(PCDDs)、フラン類(PCDFs)であり、PCB処理に起因するコプラナーPCB(Co-PCB)由来のものは少なく、また当日の風向きから当事業所由来のものとは考えにくい。」と。

 委員会ではどのような議論がなされたのか、興味深いところである。

 おりしも、その年は9月3日から7日まで東京で国際ダイオキシン会議が開催され参加者が7日に同施設の見学を行った直後の事だったようだ。これについて、何が原因だったのか十分な説明が行われたという話は聞いていない。さもなくても江東区中央防波堤一帯には、世界に類を見ないほど大規模なごみ処理施設が集中している。PCB処理施設しかり、廃溶融施設しかり、江東区の一般廃棄物焼却施設、そのほか、産業廃棄物の廃プラ焼却と医療廃棄物のガス化溶融炉、不燃ごみ処理センター、粗大ごみ破砕処理施設、破砕ごみ処理施設などである。

 東京PCB廃棄物処理事業環境安全委員会
 東京ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理事業環境安全委員会委員名簿
 http://www.jesconet.co.jp/facility/tokyo/environment/pdf/meibo.pdf

 「焼却実証試験」なるものがほんとうに焼却処理による安全性を保証するものかどうか、もうすこし開かれた議論が必要なのではないだろうか。少なくとも委員会のメンバーの議論は明らかにされる必要がある。

(日経夕刊:2009/03/02)
低濃度PCB混入の電気製品、無害化へ処理促進 環境省
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090302AT2G0200102032009.html

 環境省は有害物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)がわずかに混入した電気機器などを無害化する処理制度を新たに整備する。高濃度のPCBを含む機器の処理は進んでいるが、低濃度のPCBが混入した変圧器や電力ケーブルが大量に残っている。保管している企業などの負担が大きいほか、環境汚染を招く恐れが指摘されていた。2009年度にも処理を始められるよう整備を急ぐ。

 処理対象とするのは数十PPM(PPMは100万分の1)という低濃度のPCBに汚染された電気機器など。国内には変圧器や蓄電器などが120万台、電力ケーブルが1400キロメートルある。(Webではここまで)

 環境省は2日に開く中央環境審議会(環境相の諮問機関)の専門委員会で処理案をまとめる。環境相が認定した施設で高温焼却することなどが柱。09年度から認定を始める。処理は対象機器を保管している企業が専門業者に委託する。

 環境相は対象機器を安全に収集・運搬するための指針やPCBの混入を特定するた
めの測定法もまとめる。

 PCBは電気を通しにくい性質から電気機器に使う絶縁油として普及した。毒性が強く国内では1972年製造を停止したが、汚染された機器が大量に残っている。

 高濃度のPCBを含む古い機器は既に処理が進められており、2016年までに終了する予定だが、低濃度のPCBが今夕下機器が存在することが02年に発覚。処理体制の整備が遅れており、企業などから対策を求める声が強まっていた。