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栃木県塩谷町

指定廃棄物最終処分場候補地と

周辺の様子

池田こみち
掲載月日:2014年11月23日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質の汚染は、現在も広範囲に亘り大きな影響を及ぼしている。その一つが、除染や廃棄物処理の過程で大量に排出され一時保管されている「指定廃棄物」の最終処分場の建設である。
※指定廃棄物とは
 1キロあたり8千ベクレル超のもの。稲わらや下水汚泥、家庭ごみの焼却灰などで発生し、平成26年9月末時点で12都県に計約15万トンある。量の多い宮城、栃木、群馬、茨城、千葉の5県では、国が1カ所ずつ最終処分場を建設することになっているが、立地選定は困難を極めている。

●環境省 指定廃棄物に関する説明サイト
http://shiteihaiki.env.go.jp/radiological_contaminated_waste/designated_waste/

 2012年に栃木県における最終処分場候補地として矢板市の塩田ダム周辺が突然名指しされ、全市的な反対運動へと発展していった。その際、環境総合研究所の青山貞一顧問が、この問題に対する第1回勉強会において講師を依頼され、現地を視察し講演を行っている。その後、環境省は候補地の撤回を余儀なくされた。

◆青山貞一:指定廃棄物最終処分場 環境・技術・特措法問題 
第一回勉強会(矢板市)

http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp10195...html
      @はじめに    D処分場の構造と課題
      Aがれき特措法  E周辺現地視察
      B基礎的知識   F全体とりまとめ
      C飛灰の生成過程とデータ

◆青山貞一:2つの特措法(災害廃棄物・指定廃棄物) その1You Tube
http://www.youtube.com/watch?v=RmFYWPMnjTs

 矢板市内での処分場建設を撤回した後、環境省は新たな処分場候補地を提示したがそれは、矢板市に隣接する塩谷町北部の水源地・湧水地一帯であった。またしても、自治体や市民の意向を無視して一方的に候補地を提示した環境省は塩谷町長以下、町民全体の激しい反対に直面している。これについては、すでに繰り返し報道されているが、いったいどのような場所なのか、水源を関東北部の森林や湧水地、河川・ダムに依存している都民として確認しておきたいと現地視察を計画した。



 なお、塩谷町には、既に「町民反対同盟会」が立ち上がり、充実した情報発信を行っている。

●塩谷町民指定廃棄物最終処分場反対同盟会
http://shioya-doumeikai.jimdo.com/

 また、塩谷町では、候補地周辺の現地見学会を開催し、積極的に案内も行っている。

●塩谷町役場 指定廃棄物関連サイト
http://www.town.shioya.tochigi.jp/forms/menutop/menutop.aspx?menu_id=1866

 今回は、連休前日の11月21日金曜日、塩原町から日光に向かう途中、紅葉で有名な竜王峡の玄関口、日光市藤原を通る会津西街道(国道121号)を県道63号に左折(東方向へ)、塩谷町に向かった。県道63号に入って5-6kmほどで日光市から塩谷町に入ると、とたんに、最終処分場反対の看板が目立つ。


日光市から塩谷町に入ったあとの沿道の様子 撮影:池田こみち


日光市から塩谷町に入ったあとの沿道の様子 撮影:池田こみち


日光市から塩谷町に入ったあとの沿道の様子 撮影:池田こみち


日光市から塩谷町に入ったあとの沿道の様子 撮影:池田こみち


日光市から塩谷町に入ったあとの沿道の様子 撮影:池田こみち


日光市から塩谷町に入ったあとの沿道の様子 撮影:池田こみち


日光市から塩谷町に入ったあとの沿道の様子 撮影:池田こみち


日光市から塩谷町に入ったあとの沿道の様子 撮影:池田こみち

 この周辺には、牧場を営む農家も点在しているようだ。そこから2kmほど進むと、右手に塩谷町営豊月平牧場の牧草地が広がっている。


県道63号右側に町営牧場が見えてくる 撮影:池田こみち


町営豊月平牧場の看板と反対の幟 撮影:池田こみち


その点前を右折して林道へ

 そのすぐ手間を牧場にそって右折し、2.5kmほど林道を進んだところに「候補地はこの付近」という看板があった。「候補地は標高約600mに位置する杉の造林地」とのことで、周辺は、針葉樹の植林地が広がるが、薪炭林もあって初冬の森には落ち葉が降り積もり、小鳥の声もそこここに聞こえていた。


候補地の看板の脇に立つ池田


候補地脇を流れる清流 撮影:池田こみち


候補地脇を流れる清流 撮影:池田こみち

 途中、営林署が杉の木の伐採作業を行っていたが、道路脇には、西荒川ダム(東古屋湖)に流れ込む西荒川の清流(荒川の源流)が続いていた。東古屋湖周辺には塩谷町東古屋キャンプ場も整備されている。また、周辺は環境省が名水百選に指定した尚仁沢湧水があり、「自然豊かな原生林の地中をくぐって湧き出る水は、四季を通じて11℃前後と水温は一定しており、湧水量は65,000tと、全国名水百選の中で日本一の湧水量を誇る」という。


林道の様子 撮影:池田こみち


林道の様子 撮影:池田こみち


林道の様子 撮影:池田こみち


候補地の林の様子 撮影:池田こみち


候補地の林の様子 撮影:池田こみち


清流の様子 撮影:池田こみち


清流の様子 撮影:池田こみち

 実際に現地を見て、沿道に立ち並ぶ看板の文字に刻まれた町民のみなさんの気持ちを思うと、すぐ近くで牧場を経営する方はもとより、水源地、湧水地を町の誇りに思う塩谷町の反対がいかに本気か、また、正当なものであるかがわかる。下流の東京都民や周辺の自治体の市民も関心をもって自分たちの問題として取り組む必要があると感じた。

 市民合意を無視した環境省の立地選定プロセスには改めて疑問を感じる。

栃木県塩谷町清流 動画撮影:池田こみち

 塩谷町長は、町の総意として、放射性廃棄物の最終処分場は福島第一原発の周辺にまとめて立地し、一括管理すべきであると提案し内外に発表した。もっともなことだ。宮城県でも、そうした議論に賛同する声が上がっている。町長のこの発表には「福島になんでも押しつけるな」という反対の意見やクレームも寄せられているようだが、栃木県ばかりでなく、宮城県や群馬県など他県でもなかなか候補地選定が難航する中、どのように最終処分場を決めるべきなのか、開かれた議論が必要なのではないかと思う。環境省はいい加減にいままでのやり方を反省し、出直すべきなのではないか。