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 荒川区東尾久

高濃度ダイオキシン対策計画

住民無視の報告会A

 青山貞一 (東京都市大学名誉教授)
 池田こみち(環境総合研究所顧問)


掲載日:2014年8月19日
独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁

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 500人ほど入れる首都大学東京荒川キャンパスの講堂ですが、何と青山が目視で調べたところ、東京都、荒川区の役人などを除外した住民の参加者は、高齢者の男女ばかり30〜40人ほどでした。500人の会場に30〜40人しか参加していない理由は上記のように東京都側が説明会を一方的かつ地域の実情をまったく勘案せずに決めたことにあります。下は閑散としている会場の写真です。


写真 会場の様子

 しかも説明会の開催は一回のみ、さらに当日は全体が1時間半のうち、実質1時間が行政側の説明、それも分かり憎い説明で、住民からの質問はわずか30分、さらにその半分は都側の回答でした。そして8:30を少し過ぎたところで終了宣言となり、集まった高齢者の住民はいずれも怒り心頭となりました。目黒から車を飛ばして開催直前に到着し参加した池田、青山も東京都の誠意のなさ、意図的に開催したというアリバイ作りのやり方に怒り心頭となりました。


当日、東京都から配布された次第

 さらにわずか一回しか開催しない説明会の直後の8月下旬に公聴会を開催する、しかもひとり10分、10人のみ多い場合は抽選と言い出したことで,住民達はさらに怒り出しました。公聴会に公述人として応募できるのは周辺地域に居住、在勤している人に限られています。都立公園であるにもかかわらずです。

 上記はあくまでも手続き論についですが、内容にいたっては、杜撰そのものでした。住民がもっとも知りたがっていた日本でおそらく過去最高の高濃度ダイオキシン汚染の原因については、当初の説明では全く触れず、30分の質疑の中で2人に住民が食い下がったところ、最後に担当者が口頭で少しだけ話すだけでした。

 また対策は、まさに「臭いものに蓋」そのもので、公園部分の表土(地表から5cmまでの土壌)で1000pg-TEQ/gを超えている場所だけに、汚染土壌の上から50cm土壌をかぶせる、すなわち覆土する/アスファルトで覆うだけと言う安易なものです。


当日、東京都から配布された対策計画資料より

 以下の配付資料上は公園部分の対策箇所。横線が入っている部分、3箇所を覆土するだけです。当然、これには住民から、後から他の箇所で1000pg-TEQ/gを超える箇所が発見されたらどうするんだ! という質問が出ました。


当日の配付資料より

 下図は、公園の覆土のエッジ部分です。何とアスファルト舗装した上に覆土するだけの安易な構造です。


当日の配付資料より

 もとより、東京都はたまたま見つかった1000pg-TEQ/g以上の公園の土壌しか対策の対象としていません。しかし、1000pg-TEQ/gという環境基準は、1999年時点、日本中がダイオキシン汚染まみれとなっていた時期に、所沢ダイオキシン事件そしてテレビ朝日報道ががきっかけとなり、ダイオキシンル対策特別措置法のなかで設定された環境基準です。しかも、自民党政権下、いやがる自民党を当時の公明党が説き伏せ、基準をすべて緩くして通した議員立法なのです。

 ちなみにドイツ、イタリアなどではこどもの遊び場は100pg-TEQ/gとなっています。EU諸国より10倍緩い基準を金科玉条に、東京都の課長が説明する姿は実に滑稽ですらありました!


出典:青山貞一、北イタリア・セベソ〜化学工場大爆発による
ダイオキシン飛散事故から30年〜現地視察(検証)概要報告書 2006年3月
ドイツもほぼイタリアと同じ、さらにその後EU指令としてEU諸国の指針となっている!


<参考>
青山貞一(武蔵工業大学環境情報学部 、池田こみち(環境総合研究所)
セベソのダイオキシン大事故から30年:イタリア、EUはセベソから何を学んだか〜現地調査を踏まえて〜

 もし、イタリアやドイツの基準(100pg-teq/g)で荒川区東尾久のダイオキシン汚染の対策を行うとすれば、ほとんど全地域が対象となるはずです。

 会場の区民から、「ダイオキシンと言えば猛毒ですよ。そんな簡単な話じゃないでしょう。どうなんですか。」などと声が飛ぶと、壇上の環境局の課長は、しばらく逡巡してから「猛毒とも言われています」とオドオドしながら返事をしました。

 ダイオキシン類に対する環境基準やその毒性に対する考え方がそんな程度であれば、およそ区民のことを考えた対策などができる訳もありません。お粗末を通り越しています。

 当然、大降雨などがあれば、上部から地下にダイオキシンや重金属類が浸透するのに、帯水層の位置や不透水層の位置などについての説明はゼロ、青山がしつこく聞いたら、後日請求して欲しいというのみでした。

 池田が昨年確認したところ、地下水からも1.1pg-TEQ/Lのダイオキシンがでていることがわかりました。しかし、排水基準の10pg-TEQ/Lで評価したとのことでその時点で汚染を隠蔽しようとする体質が明らかと感じました。その後、地下水の流向を調査し隅田川方向に流れていることがわかったので水処理装置をとりつけたとも話していました。こうした事実については、説明会では全く触れていませんでした。何故かと言えば、それはダイオキシン特措法の対象外である下水道局の敷地内のことだからです。

 表層土壌で1000pg-TEQ/gを超えている地域は大きく3箇所あり、それぞれ広大な公園内に島状に点在しています。そこを50cmも覆土すると、鱗片部でスロープとなっている部分から土壌がずり落ちたり、雨などで流出するから鱗片部はアスファルト舗装した上に土壌を覆土するという、まさに安易そのものです。

 一方、深さ2m地点で100万pg-TEQ/g超の下水道局用地の土壌汚染や公園内の池(トンボ池)についても、水質ダイオキシン基準を超えているにもかかわらず、今回の説明会の対象外としたことで、さらに住民達は何のための説明会かと怒っていました。


写真 建設局の説明

 これは、おそらく東京都はダイオキシン類対策特別措置法による対策のみとして,表面から5cmまでの土壌汚染についてだけを対策するとして説明会を開催したのでしょうが、誰もそんなことは知るよしもありません。

 またトンボ池汚染問題について質問した住民に対し、建設局の担当者は30年間毎日池の水を飲んでも問題ない濃度であるなど、およそ信じられない回答をするありさまで、住民の怒りを増幅するだけでした。

 池の底の底質からも基準以下ではありましたが高濃度のダイオキシンが検出されていましたが、それについては、基準以下で問題ないとし、対策はこれから検討するとして、「万一、子供が池に入って水を飲まないとは言い切れないので、入らない方がよい。眺めるだけの池ということに・・・」などと軽々しく述べたことも有り、ますます会場は騒然となりました。

 また説明及び質疑の回答の中心にたった環境局の役人は、ことごとくこれは審議会の専門家の方々からのご指導...というので、私から「一体だれが、ダイオキシン類の専門家が東京都環境審議会にいるのか」、上述の委員の誰が国際ダイオキシン会議や学会に論文をだしているのかと追求すると黙ってしまいました。

 東京都の課長は委員は、ホームページに掲載している、と言うのです。どこの自治体でもそうですが、およそ専門家でもない審議会委員の肩書きや委員会を開催して協議した、ということを政策決定の隠れ蓑にしているのです。

つづく