エントランスへはここをクリック!

ダイオキシン対策特別措置法改正の方向性   青山 貞一


 2004年2月、民主党の環境部会に呼ばれ、ダイオキシン類対策特別措置法の見直しの必要性と方向性について持論を述べた。2003年春にも衆参議員でつくる議員連盟に呼ばれ、やはりダイオキシン類対策特別措置法の改正について話している。

 呼ばれた民主党環境部会には、環境省から7人役人が来ていた。私からの話の前に、報告があった。聞いていて分かったのは、今の環境省の報告は、まさに「大本営発表」であることだ。これはここ数年、国際ダイオキシン会議における環境省やその系統の研究者の発表でも強く感じることだ。

 そもそも世界一の焼却大国である日本は、結果として世界一のダイオキシン排出大国となっている。1999年7月、議員立法により制定されたダイオキシン類対策特別措置法は、日本が安直にゴミを燃やし続け、その結果、あまりにもダイオキシンまみれとなっている。そんなこともあり、各種規制基準、環境基準、耐容一日摂取量(TDI)等の値は当面、やむなく甘めに設定せざるをえなかった背景がある。

 法律を制定する過程で低い目標を設定せざるを得なかった事情があったわけだ。にもかかわらず、環境省はその低い目標を達成した、達成したと、ことさら人前で強調している。これはまさに恥の上塗りと言うべきものである。

 もし、本当に環境省が言うようにダイオキシン汚染が改善されているのなら、たとえばTDIを現行の4ピコからまず2ピコ、さらに1ピコと改訂すべきである。すでにEUは実質2ピコまで下げている。世界保健機関(WHO)は1〜4ピコを1999年に先進国に勧告しており、何もいつまで4ピコにとどまる必要はない、2ピコ、1ピコと厳しくしてゆけばよいのである。また日本固有のダイオキシンに関する大気環境基準も、現行の1立方米中、毒性等量で0.6ピコグラムを0.3なり0.15ピコグラムに厳しくすべきである。この大気環境基準は、TDIに連動させているので、もしTDIが2ピコとなれば、大気は0.3ピコ、1ピコとなれば大気は0.15ピコとなる。

 仮に、TDIが1ピコとなれば日本人の90%以上は未達成となる。大気環境基準を0.15ピコグラムとなれば大都市を中心に基準は未達成となるのである。要するに基準の達成は、設定する目標の厳しさと連動しており、いくら緩めの基準を達成したと宣伝してみても、はじまらないのである。
 
 さらに、先進諸外国では、食品・飼料中のダイオキシンについて各種規制指針、基準を設定している。しかし、日本ではこれだけ食の安全が叫ばれながら、食品・飼料について一切の指針、基準がない。日本の近海魚類が高濃度にダイオキシンに汚染されていることは環境省、水産庁などの調査でも明らかである。にもかかわらず、国は何の対応もしていない。あの米国ですら10年も前から厳しい魚類摂取警報指針を制定し、施行している。

 1999年7月、議員立法で、やむなく緊急避難的に設定した甘い各種指針、基準だが、環境省があちこちで喧伝しているのは、そのアマアマの指針、基準をそこそこ達成したと言っているだけのことである。環境省は大本営発表をするのではなく、より厳しい目標を達成すべきである。