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参議院議員選挙結果をどう読む その3
青山貞一

掲載日:2004.7.12〜7.20

政権交代から見た結果

 今回の参院選挙では、国民が自由民主党にお灸を据えたことは間違いない。選挙後の世論調査では、民主党の支持率が自民党を超えたことからも、良く分かる。

 しかし、政権交代と言う面から見ると、昨年秋の衆議院議員選挙同様、民主党の勝利はけっして地滑り的なものとは言えない。同時に自民党の敗北も決定的なものとは言えない。

 今回の結果によって政権内部で多少ゴタゴタは起きたとしても、決定的なものとはならないことも事実だ。

 ここ数年、小泉政権が行ってきたことからすれば、昨年秋の衆議院議員選挙そして今回の参議院議員選挙と言い、ともに民主党が地滑り的な勝利を得てよいはずだ。それは政権政党、自民党が昨年の衆院選挙同様、公明党を徹底的に利用すると言った「選挙戦術」面で老獪なこともあるが、やはりにわかづくりの民主党への不安も大きいこともある。

 民主党が大幅に議席を増やしたとはいえ、政権交代という面から見ると、まだまだ自民党勢力の底力が強いことは間違いな。

 今後、これまで一貫して「観客民主主義」を決め込み羊の群れと化してきた日本の有権者が、一気に自ら体を張り、日本社会を根底から変革するために動くことはないと思う。

 後述するように、これは民主党そのものがもつ課題にも原因がある。

 今後、5年以内に本格的な政権交代を実現するためには、与党による「敵失」からではなく自らの政策能力と人材の確保によって衆参議院議員の議席を得ることができる「民主党への脱皮」が問われることになることになる。

民主党に横たわる本質的な課題

 筆者は、常々、民主党には、自民党から出られないから民主党から出るひとが多いと指摘してきた。 また、自民党より「右」そして社民党並の「左」と思える議員が混ざっている、とも述べてきた。 これらは民主党がいわば「第二自民党」に過ぎないことを意味する。

 実際、友人、知人でもある民主党の衆参議員に直裁的にそう述べてきた。それらの民主党議員も、このような批判に本格的に反論しなかったことを見ると、図星であるのだろう。 さらに、今までの民主党は外交や原子力で党内のブレが激しい。

 たとえば、自民党の新潟と福島を選挙区とする衆議院議員等が中心となって制定を推進した原発立地域振興法案では、民主党の衆議院議員は党内議論、ネックストキャビネットとの議論なしに趣旨賛同した。実はこの衆議院議員は茨城県の日立の電労連の出身であった。

 市民団体、NPOがこれを批判すると、ネクストキャビネットは原発立地域振興法案に反対するようになった。しかし、その時点では自民党側は民主党の足下を見ており、その法案が通過することになった。ことごと左様に、出身母体の労組などの意向によって民主党がブレることがままある。

 さらに、これは公共事業問題でも大きい。

 たとえば菅直人前代表らががんばった諫早湾問題でも、地元の民主党国会議員は諫早湾開発に賛成していた。これは土木系公共事業の弊害を徹底批判する党幹部の意向に反し、実は地元では膨大な国費を投入する土木事業を同じ民主党議員が強引に推進していることを意味する。

 日本の地方では民主党には自民党顔負けの利権構造に浸っている議員=利権議員もいることを意味する。

 そんなことから、国民の多くは、従来の民主党にどれだけ今の与党に代わりうる政権担当能力があるか、分からないのである。

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