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清掃工場での環境教育の限界  
池田こみち

 掲載日:2004.6.12

 平成13年度末現在、全国の一般廃棄物焼却炉の数は1680と報告されている。平成14年度規制に対応するため、多くの清掃工場が少なからず改修を行い、また多くの新規焼却炉・溶融炉が建設されたこともあり、全国各地でピカピカの清掃工場が市民の訪問を待っている。

 今、清掃工場は「環境学習」のメッカと化している。立派なプレゼンテーションルームにAV機器、子供たちの関心を集めるための模型、パネル、学習室などが整えられ、インターネットでは、「見学に来ませんか」というPRにも余念がない。本体工事費とは別にこうした環境教育インフラにもそれなりのお金がかかっていそうだ。

 折しも、6月9日、武蔵工業大学横浜キャンパスの1年生を対象に横浜市内の公共施設3カ所(動脈系施設としてYCC(横浜港流通センター)と静脈系施設として北部第二下水処理場と隣接する鶴見清掃工場)を訪問する学外授業が行われ、同行させて頂いた。学生たちは職員の説明をよそに、清掃工場のゴミピットからごみをつまみ上げる巨大クレーンがまるでUFOキャッチャーと大はしゃぎし、一番盛り上がった。

 鶴見清掃工場は横浜市内に6カ所ある清掃工場のひとつ、鶴見川河口にあり、みなとみらい地区や鶴見つばさ橋など横浜港が一望できる立地にある。  http://www.toda.co.jp/kenchiku/bukken/k_bukken906.html
 (戸田建設のWEBだが工場の空撮となっていて景色がよいので採用)

横浜市鶴見工場(ゴミ焼却場)

 横浜市では、市内の小学校4年生が全員見学にくることになっているということで、所長をはじめ職員にとって「環境教育」が仕事の中でも大きな比重を占めつつある。特に横浜市の場合には、平成15年1月に中田市長のもと、平成22年までにごみ排出量を30%削減するという「横浜G30プラン」を発表したこともあり、一層「環境教育」に熱心に取り組んでいるという訳である

 しかし、清掃工場見学における「環境教育」は、一歩間違うと技術至上主義のプロパガンダになりやすい。案の定、今回の見学でも、工場長は誇らしげに、「当工場は、ダイオキシン対策を講じているため、排ガス中のダイオキシン濃度は基準値の100分の1から1000分の1のレベルであり、全く問題ない」と言い放った。

 しかし、現実に目をやれば、横浜市では可燃ごみの40%弱が紙ゴミ、30%が生ごみという組成となっており、貴重な資源をトン当たり概ね5000万円の建設費をかけた焼却炉で煙りと灰にしているのである。他方、年間5億円を東電に買電するほどの電力を生みだし、火の車となっている市の財政を支えていると自負しているが、裏返せばごみ発電のために一定量のごみが常時必要という矛盾をはらんでいる。また、「最終処分場の残余年数はあと5年」と危機感を煽りながら、焼却のツケとして毎日2炉から160トンの焼却灰・飛灰が排出され、横浜港の南本牧最終処分場に埋め立て続けている。焼却処理がごみゼロ(530=G30)に寄与するわけはないことは自明である。
 
 清掃工場での「環境教育」はごみ焼却という処理技術の正当性や先進性を説明するのではなく、行政がかかえるゴミ処理の矛盾と課題についてより正しい情報を提供して問題解決に向けて考える機会を与えることが重要だろう。そのためには、清掃工場での「環境教育」を事業者にまかせず、しかるべき第三者が主導することが第一ではないだろうか。松葉によるダイオキシン調査に参加する市民グループでは、学校主導の安易な清掃工場見学に危機意識を強めている。学校や工場に任せずに、地域で子供たちに正しいごみ問題を教える動きが広がりつつあるのも頷ける。