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福岡県筑紫野市の産廃業者
株式会社産興の業許可取消へ

梶山正三 
丹沢やまなみ法律事務所

掲載日:2005.5.22


●硫化水素ガスによる中毒(1999 福岡県)
●関連資料(産業廃棄物処分場に関する県への要望書:筑紫野市HP)
●関連記事(赤旗HP)

筑紫野の産廃不法投棄疑惑:
国に業者許可取り消しを要望−市民団体/福岡


 筑紫野市の民間産廃処分場への家庭ごみ投棄疑惑問題で、市民団体などでつくる「県営山神ダム上流域産業廃棄物処理場対策連絡協議会(産廃連)」は13日、環境省に民間業者「産興」の中間処理の許可取り消しを求める要望をした。
 武石清一会長ら7人は「不法投棄が続いており、早期の裁決を求めたい」と訴えたが、南川秀樹・廃棄物リサイクル対策部長は「検討中で片方の当事者だけに言えない」と答えるにとどめた。
 産興には、県が中間処理業(選別、焼却)を許可。産廃連は行政不服審査法に基づき同省に許可取り消しを求め、同省は昨年12月、現地検証をした。

〔福岡都市圏版〕5月14日朝刊 (毎日新聞) - 5月14日17時25分更新

福岡県 産興の業務許可取消へ 筑紫野市
(TVQ九州放送 2005年5月20日 17時30分)
福岡県は、筑紫野市の産業廃棄物処分場を運営する産興に対し、業務の許可を取り消すことなどの行政処分手続きを開始しました。産興は、ことし3月、定められた中間処理を行わずに、産業廃棄物を埋め立てるなど、廃棄物処理法違反が確認されたということです。県では、今月下旬に産興に対して聴聞を実施した上で、最終的な処分を決定する方針です。

  筑紫野市住民らは高濃度な硫化水素(H2S)の発生で3名の死者を出した福岡県筑紫野市の「株式会社産興」の処分場に関し、環境省に行政不服審査請求を提起し、産廃業の許可取消を求めてきた。

 2005年5月20日、福岡県は遂に自ら、廃棄物処理法に基づく許可取消の手続を開始し、産興に対して当該手続の開始と弁明書提出を催促する通知を出した。地元の反対運動では2005年5月21日に総会を開催し、今後の対策と運動についての協議が行われる。

 この件では、環境総合研究所の青山貞一さん、池田こみちさんも深くかかわられた問題だが、私(梶山正三弁護士)が代理人となって審査請求した環境省の行政不服審査請求では2時間近い長時間のプレゼンテーションを交えての意見陳述が認められ、環境省による「現地検証」(行政不服審査法に基づく)も昨年暮れに実現した。その点でも異例の展開だった。

 その後も環境省に地元も私も何度か日参し「許可取消」への働きかけをしてきた。今回のことは、福岡県が環境大臣による裁定で県側が環境省の示唆を受けて開始した手続と考えられるが、いずれにしても歓迎すべきことだ。

 県が自ら「産興」の許可取消の手続を開始したわけだが、これには以下の事情があったためと思われる。すなわち、県が「取消」に動かざるを得なかったのは、環境省から示唆を受けたためと推測される。

 @ 審査請求に現われた無数の違法行為
 A 県による「厳重注意」の繰り返し。
 B そして、不法投棄に対する福岡県警の強制捜査、
 C さらにはごく最近明るみに出た、関東の一般廃棄物の埋立など

 このように到底見過ごすことのできない重大な事実が次々と出現し、環境省の裁定でもおそらく住民側に立った結論を出さざるを得ない。そうすると、福岡県の面目丸つぶれとなる。したがって、そうなる前に「県自ら取り消した方が良いのではないか」という役所同士の「思いやり」からの示唆があったのことはほぼ確実と考えられる。

 私が、以前、新潟県で県知事を被告にして、産廃業者の許可取消の裁判をやっていた際に、判決予定日のわずか一週間前に新潟県知事自ら許可の取消をしたことがある。それはやはり、判決によって取り消されたのでは県の面目が潰れるということが強く意識されたためと思われる。今回のこともそのように理解できる。
 
 となると、今回の県の動きは、「産興」の違法行為を次々と摘発して、審査請求し、さらにはその後もねばり強く違法行為を監視して、県や環境省に訴えてきた住民運動の成果であると言える。

 前にもご説明したが、「下流域への汚染の拡大」は役所の建前論では許可取消しの要件にはならない。だが、このような水道水源の汚染が住民団体にとって最も懸念されることだから、今回の許可取消は、水源汚染の防止のための「最初の一歩」であると言える。

 このように「大きな一歩」を獲得した住民の皆さまに心から敬意を表わしたい。しかし、気を緩めては居られない。放置すれば水源の汚染は確実に進行するからです。

 今後は、許可取消後に県行政との交渉の場を早急に持つ必要がある。そこで、水源汚染拡大防止のための具体策を県と協議することが出発点になるだろう。「産興」自ら、又は行政代執行による違法埋立廃棄物の全面撤去を求めることになる。

 もちろん県がすんなりと応じるとは考えられない。しかし、不法投棄による原状回復のための特別措置法が時限立法とはいえ、まだ生きている。さらには、2004年及び2005年の廃棄物処理法の改正で、「重大な事案」の場合には、環境大臣が自ら県に対策を指示したり、環境省が自ら対策に動くことができるという規定ができた。

 環境省にも働きかけることにより、これらの規定が県の重い腰を動かす役目をするはずだ。

 上述の新潟のケースでは、頑強に行政代執行を拒んできた県を相手に公害紛争処理法に基づく、公害調停を提起し、2年後には行政代執行を実現した。場合によってはこのような手続も視野に入れる必要がある。

 今回のことは、「最初の一歩」であり、「新たな運動の始まり」だ。今後もねばり強い運動で、水源汚染の防止という大きな成果を挙げるために皆さんに期待する。私も微力ながらできる範囲で皆さんのお手伝いをしたいと思う。