エントランスへはここをクリック!    

原発耐震データの全面開示命令 
浜岡原発訴訟で静岡地裁


掲載日:2005.3.22

 静岡県にある中部電力浜岡原発の運転差止訴訟で東海地震による原発震災を未然に防ぐための原子炉機器の応力計算書や耐震性の計算書に関する「文書提出命令」申請が原告側から静岡地方裁判所に出されていた。

 被告、中部電力は今まで原告側に一部は開示はしたもののいわゆる黒塗りが多く、専門家の解析に耐えられず、専門家側から見て重要と思われる各種データは“企業秘密守秘義務”、“技術ノウハウ”として、提出を拒んできた。

 2005年3月16日、静岡地裁は決定で当該文書は個人情報にあたるもの以外、ほぼ全面開示を中部電力に求めた。

 決定文の中で、静岡地裁は「ひとたび原子力発電所に重大な事故が発生したときは、当該地域を超えて広い範囲に甚大な被害が及ぶ可能性があることに照らせば、原子力発電所の安全性の確保は、単に申立て人らや、これを稼働させている相手方の利害に関する事項というにとどまらず、社会共通の要請であり利益である」とし、「本件技術ノウハウは、それらが公開された場合、当該技術の有する社会的価値が下落し、これによる活動が困難になるもの又は当該技術を保持する企業に深刻な影響を与え、以後その活動が困難になるものとは認めることはできず、『技術又は職業の秘密』に該当するとはみとめられない。」としている。

 原告側は、静岡地裁の情報開示により、東海地震に対する原子炉建屋・周辺機器などの耐震強度について専門家など第三者による検証が可能になったと地裁決定を高く評価し、同時に地裁の原発安全性に関する認識が原告側の主張したものに等しいと言う論評を出した。

 以下、関連報道。

原発耐震データの全面開示命令
 浜岡原発訴訟で静岡地裁

朝日新聞2005年03月22日


 東海地震が起きれば直撃を受ける中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の運転差し止めを市民団体が求めた訴訟で、静岡地裁は原発の設計資料などをマスキング(白塗り)せず提出するよう中電に命じる決定をした。宮岡章裁判長は「原発の安全性の確保は社会共通の要請であり、利益だといえる」と指摘した。原発訴訟で耐震設計にかかわる重要データの全面開示が認められたのは初めて。決定は16日付。

 問題になっていたのは、原子炉炉心構造物や原子炉格納容器の耐震性についての計算書など。

 中電はいったん提出したが、原告側は「マスキングばかりで重要な部分が欠けており、検討材料にならない」と反論。全面開示を求めたが、中電側は「企業秘密やメーカーのノウハウにあたる。ノウハウを持つ外国企業から守秘義務違反に問われたり、国際的な不信を買うおそれがある」として拒んでいた。

 決定で宮岡章裁判長は「原発の安全性の有無が裁判の最大の争点。安全性立証のためにやむを得ず公開しても、守秘義務違反などの問題が生じるかは疑問」と述べた。

 原告弁護団は「データが提出されれば、東海地震の際の建物の耐震強度について専門的な第三者による検証が可能になった」と決定を評価。22日にも、中電に対して高裁に即時抗告しないように申し入れる方針だ。

浜岡原発:耐震性文書の提出命令
 差し止め訴訟で静岡地裁

毎日新聞2005年3月22日 

 静岡県御前崎市の中部電力浜岡原発の運転差し止めを市民団体が求めた訴訟で、静岡地裁は22日までに、市民団体側が求めていた原子炉格納容器の耐震性計算書などの提出命令を出した。中電側は文書を提出すると技術ノウハウが流出し、外国企業から損害賠償を求められたり信用度が低下すると主張していたが、宮岡章裁判長は「技術ノウハウは15年も前の情報で社会的価値は相対的に低下している。原発の安全性の確保は当事者のみならず、社会共通の要請」と判断した。

 同訴訟は、同市に隣接する同県相良町在住の長野栄一さんらが「東海地震の震源域にある浜岡原発は地震に耐えられず、放射能漏れなどを起こす可能性がある」として、同原発1〜4号機の運転差し止めを求めて提訴。訴訟の中で原告側が、同原発の耐震性を判断するうえで、原子炉容器や再循環系配管などの設計書や応力計算書などを裁判所に提出するよう求めていた。

 原告側弁護団によると、提出命令は求めていた文書のほぼすべてに及んでいる。弁護団は「実質的に全面開示決定にあたるもので、東海地震時の原発の耐震性について専門家による検証が可能になった」と評価している。【吉崎孝一】