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高病原性鳥インフルエンザの
「H5N2亜」型について

あしがら農の会 笹村 出

掲載日:2005.6.30


 茨城県水海道市の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出された問題で、農水省は29日、家禽疾病小委員会(委員長・喜田宏北海道大教授)を開き、鶏の抗体検査で過去のウイルス感染が確認された近接する養鶏場5施設について、鶏計約9万4000羽と鶏卵すべてを処分することを決めた。

 農水省は近く専門家チームをつくり、ウイルスが検出された養鶏場と近接5施設にひなを納めている業者を含む全関連施設を対象に感染経路を調査。鶏の異常を把握するための全国のサンプル調査も対象を広げる。

以上の様に報道は伝えております。弱毒の鳥インフルエンザは私の予測では、過去繰り返し鶏に感染が起きていると考えており、予測通りの結果です。しかし、それほど危険なものではなく、抗体を作り、終息する。それは自然のありようそのもので、自然と折り合いをつけた鶏の飼い方の範囲であったに違いありません。それは鴨やガンの抗体の状態から想像される所です。

問題が起きたのはウイルスの強毒化が頻繁に起き始めた為です。何故ウイルスが強毒化するかのプロセスは、確定されていませんが、感染の連鎖の中で起きると言う事は確かです。つまり、薬剤でコントロールされた、密室的環境の中に、弱毒の鶏インフルエンザウイルスが落とし込まれた時、何万という感染の連鎖の中で、ウイルスの変異が起こる可能性が高まった為、起きているのでしょう。近年アジアでの大規模養鶏業の広がりと共に、頻発するようになった、と推測する事ができるでしょう。

今回、水海道市で起きた「H5N2亜」型感染は、発見された経緯も、疑いを持って見つけた訳ではなかった。産卵低下が、40%まで落ちた事。その後の周辺5養鶏場での、抗体保持の鶏の発見された経過は正に、この病気のあり様を現しています。健全な経過の中で、実はこの病気を克服しようとしていたのです。もちろんこの間にウイルスが変異しなかった事は幸いでしたが、もし、このまま過ぎていれば抗体を得て、終息して行くはずでした。

所が、家禽疾病小委員会は、抗体を得た鶏もすべてを淘汰しろと、命じました。

この事は私達のように、自然と折り合いをつけ、生き物を飼育して行く事を仕組みにして養鶏業を営むものとしては、青天の霹靂です。

もしこのように、理由もなく生き物を殺す事が、正義とされる事になれば、すべての道徳は地に落ちる事になるでしょう。もし、淘汰する事に必然があるなら、まずその理由が示されるべきです。所が、早速問い合わせた私に対し、農水省の担当官のO氏は何の理由も語らず、家禽疾病小委員会の決定だから淘汰する。の一言で電話を切ってしまいました。

鳥インフルエンザの経過は、何十万、何百万、と生き物をまとめて飼うことができない事を示しています。畜産は自然との折り合いの範囲で、できる限り小規模で行う事が望ましいと言う事を示しています。日本の農水省の方向では、完全管理できる、密封養鶏だけにしてしまおうという、明らかに間違った判断をしています。ヨーロッパでは、大規模畜産への反省がなされ、ケージ飼育を禁止する方向です。

現在、県単位で血液検査をする動きが出てきております。その過程で、抗体を持った鶏が発見されれば、又淘汰という事が命じられるでしょう。これは間違った選択です。抗体を得た鶏、あるいは同じ場所にいながら感染をしなかった鶏、これは価値ある鶏なのです。強毒化した鳥インフルエンザウイルスに対しても、相当の対応力のある鶏のはずです。私のように自然養鶏を営むものにとって、ありがたい財産となる鶏です。将来そこから素晴らしい品種の作出もできるかもしれません。それを見つけしだい淘汰では、自然養鶏の存続はあり得ません。

以上の様に憤慨しておりますが、何処にもやり場がありません。この間違った進行を何としても止めなくてはなりません。が、自分の無力が残念でなりません。

私は鶏血液検査を拒否します。もし強制力を持って行なわれる事になったときが、私の養鶏の終わる時です。

連絡先 笹村 出 sasamura.ailand@nifty.com