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靖国強硬派を三役に揃えた
”大惨事”小泉内閣


 田中康夫

掲載日2005.11.3

 
今春に中国の王毅(ワン・イー)駐日大使が明かした「紳士協定」の存在を十分認識した上で猶、「郵政民営ワンワン思考停止共和国・小泉オオカミ少年独裁党・大政翼賛イエス中央委員会最高忠臣幹部会議」(?畏友・勝谷誠彦)と囁かれる大惨事改め第三次小泉内閣を、「朕・小泉純一郎」は組閣したのでしょう。

 即ち、王大使は半年前の427日、「政府の顔である首相、外相、官房長官の3人は靖国神社に参拝しない」との、中曽根康弘内閣時代の86年に日中政府間で結ばれた「紳士協定」に、自民党外交調査会に於ける講演で言及しています。

中曽根首相の公式参拝が物議を醸した翌年に後藤田正晴官房長官が発表した、「戦争への反省と平和友好への決意に対する誤解と不信さえ生まれる恐れが有る」との談話と相前後して結ばれた「紳士協定」です。

無論、20年近く前の話です。反故にする云々という次元の事柄ですらない、と一笑に付す向きも居られましょう。とは言え、逆に王大使は今春、「(首相、外相、官房長官以外の)他の政治家が(A級戦犯を合祀する靖国神社に)参拝する事は問題にしない」とシグナルを送ってもいるのです。

 その“3役”に何れも揃って参拝強行派の小泉・麻生・安倍トリオが就任した今回の組閣を、中国と韓国に留まらず、香港の中立系メディアも警戒感を表明しているのは、天然資源無き島国ニッポンとして少しく深刻に捉えるべきではありますまいか。

 良くも悪くも、今後の国際関係は、アメリカと中国を基軸に展開していくのです。面積的にも人口的にも産業的にも軍事的にも。何れの国家共に、一筋縄では行かぬ厄介な存在です。が、であればこそ、その間に位置する日本は、EU諸国とアメリカの間で“同時通訳”を務めるイギリスを、学ぶべきと考えます。

 良い意味で中国の突出を防ぐ事は、中台紛争の勃発を防ぐ上でも肝要です。それは、極東の安定にのみエネルギーを注ぎ続けられぬアメリカにとっても、望ましき日本の貢献なのです。

 思い起こせば、フランスはドイツの突出を防ぐべく、EUを創設しました。が、その点を深く認識すればこそイギリスは、国内の反対を敢えて押し切ってもEUに加盟し、それは結果としてフランスの突出を防ぐ展開へと繋がっています。更には、アメリカとEU諸国との緩衝国として、様々な問題の“同時通訳”を務める努力が結果として、国際関係に於けるイギリスの地位向上を齎しているのです。

 アジアの東端に位置する日本が学ぶべき点は多々、存在します。にも拘らず、「民営化」の美名の下にマーガレット・サッチャーの市場原理主義的改革が齎した、貧富の差が拡大し、社会階層が固定化された“実績”のみをイギリスから学ぶ朕・小泉は、夜の歌舞伎町で肩が当たったチンピラが、眼付けやがったな、と言い掛かりを付けるが如き風情で、中国を挑発しているのです。

 その心智は、アイスクリーム好きな安倍晋三官房長官とて同じです。而して、僕は思います。その彼が5月の連休にワシントンを訪れ、複数の要人と会談して以降、果たして歴史観や政治家としての哲学や言葉を安倍は持ち合わせているのか、とアメリカ政府中枢部が憂慮し始めている事実をこそ、日本のメディアは調査報道すべきなのだと。