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リナックス型
水平補完の精神を

 田中康夫

掲載日2006.1.17


 今回の豪雪に際し僕は、全国で最初に飯山市への自衛隊の災害派遣を6日夜半に要請し、東海大学救命救急センター所長から副知事に転身し、豪雪対策本部長を務める澤田祐介と共に、7日、8日の両日、災害救助法の適用申請を行った飯山市、栄村、野沢温泉村、小谷村、白馬村、信濃町、木島平村の7市町村を視察しました。

 更に、新潟県津南町を経由して集落へと通じる国道405号が通行止めとなった栄村の秋山郷へ、県立病院の医師、看護師をヘリコプターで9日に派遣し、10日午前8時前からガラス張り知事室で打ち合わせを行った上で新幹線で90分、上京した僕は、平河町に位置する新党日本のヘッドオフィスで11時から、荒井広幸、滝実の両議員等と共に年頭会見を行いました。

 挨拶(あいさつ)の冒頭、畏兄・高橋彦芳村長の率いる栄村に脈々と流れる自主自律の精神を、であればこそ、高齢化率41%の栄村が今回も一際、沈着冷静にコモンズと呼ばれる地域の絆(きずな)で対応し得ている卓越性を語りました。

 それは、国・県・市町村がピラミッド型に組み込まれた従来のウィンドウズ型垂直補完ではなく、優れてリナックス型水平補完の精神です。国からの垂直指示を仰ぐまで自ら判断・行動出来ず、逆に補助金や交付税は貰(もら)えるだけ貰っておこう、と考え勝ちな垂直依存の自治体とは極めて好対照で、故に全国から心ある自治体関係者が数多く、学びに訪れる栄村たり続けているのです。

 その詳細なる説明は次回以降に行うとして、翻って、国家としての日本は、外交も財政も、問題先送りの他律的な末期状況に陥っています。
「外交迷走、財政破綻、教育混迷、格差拡大、不安急増、増税3兆。すべてが国民負担。なんだか変だぞ。日本の『改革』。」と惹句(じゃっく)を記したポスターを作成し、「ここから、日本をつくる。信じられる日本へ。新党日本」と大見出しを打ったのも、地域=リージョン=コモンズを起点に、的確な認識・迅速な行動・明確な責任を伴う真の社会変革を実現すべき、との考えに基づきます。

 定率減税廃止分は本来、基礎年金の安心・安全・安定に充当されるべきです。にも拘(かかわ)らず、他律的な国家運営の下、1時間に66億円も借金が増大している財政赤字の財源確保へと転用する魂胆なのです。早い話が、「官から民」ならぬ「民から官」への召し上げが、改革を伴わぬ痛みに終始する昨今の日本なのです。

 新規国債発行を30兆円以下とする公約を06年度には達成、と政府は胸を張るものの、その額は29兆9700億円。僅(わず)か5時間で増大してしまう借金300億円分に過ぎないのです。而(しか)も、借り換え債108兆円、財投債27兆円を加えて実は、06年度の国債発行額は165兆4000億円にも達するのです。羊頭狗肉、ここに極まれりです。

 即ち、国家財政運営の失敗の露呈を先送りしているのが実態で、「三位一体の改革」なる美辞麗句の元に、税源移譲ならぬ税源削減を地域自治体に押し付けているのが真相です。

 中韓両国のみならず米国からも日本外交の迷走を懸念されるや、「心の問題」だと居直り、改革に終わりはない、と嘯(うそぶ)く宰相には、いやはや、貴方の「頭の問題」なのですよ、と囁いて差し上げねばなりますまい。