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ホリエモン応援を釈明の
武部パパの自己撞着

 田中康夫

掲載日2006.1.25


「まっ、テレビで弟だ、息子だと、こういう所が何回も出ますけどね、私は若い方々に対しては、誰に対しても父親の心算で接しております。そして、二度とない人生、二つと無い命だと、嘘を吐くな、悪い事をするな、我慢を覚えろ、こういう事を申し上げている訳であります。堀江君に対しても同様の事を申し上げました」。

 堀江貴文容疑者逮捕翌日の24日、武部勤幹事長が発した“巧言”です。余りに青い内容で、拝聴する我々の方が、思わず赤面しちゃいます。「人の心は金では買えないよと」「杉村太蔵君にも同じように私から指導した」とも語る武部パパは今後、ニートやフリーターの若者を分け隔て無く、自分の書生として受け入れる覚悟なのでしょう。

 更に武部氏は以下の「証言」をも行っているのです。何とも正直な御仁ではありませんか。

「公認も推薦も出来ません。私は党としては、その事をきちっと貫いた」。「その代わり、私が個人の立場で応援に行こうと、この事は総理にも誰にも話しておりません」。「私は現地入りして、一所懸命、応援をした」。「私としては、この堀江君は磨けば光ると言ったら可笑しいですけどね、或る意味では大化けする素質が有るなと、そういう想いも感じました」。

いやはや、「政党政治」とは何ぞや、という基本認識すら持ち合わせぬ儘、自由民主党は結党50周年を迎えてしまったのでしょうか?

 公認も推薦も出来ない人物の立候補会見は、永田町に位置する自民党本部に於いてでありました。而も、党三役の武部幹事長が同席した上で。今後、市民運動家や国粋主義者が立候補表明する際にも、自民党は会見場所を提供するのでしょうか? 開かれた会見場所を提供するべく「『脱・記者クラブ』宣言」を5年前に発した信州・長野県知事の僕ですら未だ到達し得ぬ“解脱”の域です。

「堀江氏がやってきた事に政府保証を与えたという見方は、そのようには私は全く考えておりません」と24日の会見で「否定」しながら、以下の発言を行った竹中平蔵総務大臣も武部幹事長同様、自己撞着に陥り掛けています。

「党からの要請も受けて、郵政民営化の候補の応援を多数、私は行いました。広島6区から立候補された堀江氏についても、党側の要請を受けて応援に赴いた訳です」。

 百歩譲って、連立与党を構成する公明党所属議員の応援ならばいざ知らず、何らかの判断で「公認も推薦も出来なかった」候補者の応援に赴くべし、と「党側が要請する」矛盾を何故、世の中の全ての事象は数式で立証し得ると信じて疑わぬ新自由主義の申し子たる竹中大臣は訝らなかったのでありましょう。

 のみならず、竹中氏は党から要請され、武部氏は党の最高責任者たる小泉純一郎総裁にも告げる事無く、「公認も推薦も出来なかった」候補者ホリエモンの応援を「一所懸命」行ったのでしょう? 幹事長と総裁が意思疎通出来ぬ程、自民党本部の配管は動脈硬化を起こしているのでしょうか? 否、そんな筈も有りますまい。抑も、立候補会見に先駆けて総裁室で小泉・堀江会談が行われ、総裁は自ら握手を求めたのですから。

 とまれ、「公認も推薦も出来なかった」反郵政民営化候補者を「一所懸命」応援して党から処分を受けた地方の党員は、その御都合主義に怒るべきではないのかな。