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何かにつけて血脈を
誇示したがる安倍の悪癖


日刊ゲンダイ

掲載:2006年9月22日


 「父が挑戦して果たせなかったこと。感無量だ」――新総裁になった20日夜、安倍晋三(52)は、陣営の慰労会でこう話したという。安倍の父・晋太郎は総理総裁のイスに指を掛けていながら、すい臓がんで亡くなった。その無念を晴らしたと強調したのだ。

 安倍という人物は、いつもこんな調子である。何かにつけて父とか祖父とか、政治家一族をイメージさせるキーワードを発したがる。初出馬の際に「父の志を受け継ぎ、石にかじりついても勝ちたい」と宣言したのは世襲議員の習いでも、その後もずっと「親父は」「祖父は」と会話や演説に織り込んできた。

 特に祖父・岸信介だ。登場の機会がやたら多い。幼いころ、岸の前で「アンポ、ハンターイ」とふざけて両親にたしなめられたというエピソードは、あまりに安倍が好んで話すため、永田町では有名になってしまった。

「日本も核を持てる」というビックリ仰天の発言をしたときも、「1960年の岸総理答弁で、違憲でないとされている」と説明。自らの考えを明かすときでも、祖父の名前を使うのだ。

「戦後の歴代首相で、首相経験者の血を引くのは近衛文麿の孫の細川護煕ひとりだし、3世議員は現職の小泉だけ。そのどちらにも当てはまるのは“安倍首相”が初めてです。『どんなもんだ』と自慢したくなるんでしょう」(政界関係者)

 しかし、血脈を誇示したがる安倍の悪癖は、政治家としては致命的欠陥だ。無能の証しになる場合が多いからである。立正大教授の斎藤勇氏(心理学)が言う。「伝統を重んじる日本では、世襲を好み成り上がりを嫌う。だから、『父の遺志を受け継いで』は美談と受け止められるのです。

 普通の若造が野心むき出しで首相になろうとすれば反発は大きいが、政治家一家に生まれた人なら好感を持って迎えられます。2世、3世をちらつかせることは、父や祖父を知る年寄りと良好な関係を築くには効果的。しかし、それは本人の力のなさや弱さの表れでもある。自分に自信がなく、ついつい一族の威光にすがりたくなっているのかもしれません」

 安倍がゴリゴリの改憲論者なのは、岸の考えをそっくり頂いているからだ。信念も政策も、自分のじゃなく借り物。こんなことだから50歳を過ぎても自信が持てず、政治家としての能力に疑問が持たれるのだ。

 総裁選でも議員のひとりに「安倍晋太郎」と書かれてしまった。強烈な皮肉なのか、マジで間違えられたのか。どっちにしたってなめられているのは間違いない。

 国民新党の綿貫代表も「みんなにカワイイって言われている。子犬みたい」とハナからバカにしていた。

 この国は、何代にもわたって無能無責任首相がデタラメ政治をやってきたが、今回もまた、無能だからイヤになる。

◆ 法律も国民の意識も戦争容認狙う ◆

 実際、安倍首相には何も期待できないし、国民にも期待するムードはない。当然だろう。世論調査では福祉や年金問題を求める声が圧倒的なのに、安倍は総裁就任会見で「臨時国会は教育基本法の改正を最重要課題として取り組む」と宣言したからガックリだ。

 教育問題に関し、安倍は教育バウチャー(利用券)制度の導入とか大学生のボランティア義務化などを掲げている。しかし、どれも実効性に乏しいし、そもそも教育基本法改正の主眼が愛国心教育の復活にあるのはミエミエなのだ。政治評論家の浅川博
忠氏が言う。