エントランスへはここをクリック   

日本変革のブループリント





第三章 グローバルな小日本主義
「ミニマ・ヤポニア」(14)


佐藤清文
Seibun Satow

掲載日:2007年1月元旦


無断転載禁
本連載の著作者人格権及び著作権(財産権)
すべて執筆者である佐藤清文氏にあります。



全体目次



2節 ポータルとしての政党の役割

 ユニバーサル社会の到来に伴い、多くの政治組織がその役割を果たしていくでしょう。そこで、政党について改めて考える必要があります。

 日本の政党は、自覚していなければ、時代に即効して自らの役割を果たすのではなく、既得権益や主導権を確保したいために、後ろ向きなことをしかねません。実際、政党を邪魔に思っている市民運動の活動家も少なからずいます。

 政党の政治における役割は相対的に低下しています。それは当然であるとしても、その歴史的意義が完全に消えたわけではありません。これからの政党は「ユニバーサル・デモクラシー」を踏まえ、体勢を整えていかなければならないのです。

 かつて啓蒙主義者たちがチーム・ワークで、「万能人(ユニバーサル・マン)」たらんとしていました。現代社会はあらゆる領域で複雑化・細分化しています。そのため、政治・経済・文化など多くの領域で、個人ではなく、プロジェクト・チームを組んで物事にあたるのが主流です。

 けれども、チーム・ワークはたんに足並みをそろえることではありません。それは画一的でマス型社会の発想です。日本を代表する企業のホンダは、ホンダ共創フォーラムの吉田恵吾事務局長の『共創のマネジメント─ホンダ実践の現場から』(2001)によると、「共創」という企業文化を持っています。

 ホンダは、元々、偉大な「本田宗一郎」の会社ですから、彼も不老不死ではありませんから、ポスト本田宗一郎になった時に、いかに発展させるかが課題でした。そこで考案されたのが「共創」です。創造性は基本的に個人の発想によりますが、それを共同作業によって高めていくことができるというわけです。

 「目的・理念の共有」・「平等」・「異質の許容」を三原則とし、個人=組織の軸と志=科学の軸をうまく調整していくのがホンダの共創です。吉田事務局長は「共に成長しつつ、創造する」のがホンダの企業文化だと言っています。

 専門領域には詳しいけれども、それ以外には関心を持たず、自分の信じる政策の優先順位を頑として譲らないという態度を政党はとるべきではありません。

 政党だけが政治を担っているわけではありません。NGONPO、市民による草の根の連帯なども極めて重要な政治活動を行っています。そういったやる気に溢れた方たちが裁量行政や立法の腐敗を監視してきた功績は大きいのです。

 情報公開や環境アセスメント、景観条例は、元々、住民の要求に押されて地方自治体が主導で始まっています。しかし、議会において政治活動をするとしたら、政党を通じなければ、困難です。

 国会に議席があれば、ゲリラ的に国会の質問趣意書も活用し、政府与党の責任を明らかにしていくことができるのです。現行のものがそうであるかどうかは別として、政党は議会の内外をつなぐポータルたらなければなりません。

 各種の学説にも注意を払い、独善性に陥らないように気をつけ、公共性への意志を持ち、社会の諸矛盾・諸問題に立ち向かう活動とは、個人であれ、グループであれ、これからの政党は協力を惜しんではなりませんし、積極的に共闘していく必要があるのです。

 日本の現状に対する特効薬も万能薬もありません。よく政治家は自らを医者に見立てて、「内科的治療」=「外科的治療」の比喩を用います。

 問題が起きているから、それを治療すればいいという対処療法が政策だというわけです。しかし、日本は、むしろ、生活習慣病に苦しんでいる状況であり、さらに老人退行性疾患的な社会に向かいつつあるのです。それには「ユニバーサル」の力が不可欠なのです。

 たたけよ、さらば開かれん。これが本書の結びとして、私が記したく思う言である。

(石橋湛山『湛山回想』)

〈了〉

参考・引用文献リスト