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 メアリー・ステュアートの足跡を追って
スコットランド
2200km走破

なぜ、スコットランドか

青山貞一 Teiichi Aoyama  池田こみち Komichi Ikeda
2018年12月10日公開
独立系メディア E-wave Tokyo 無断転載

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出典、翻訳等について

 本稿では、現地調査時に入手した資料、撮影した写真以外に、概要、歴史などでは日本語、英語のWikipediaを、また写真についてはWikimedia Commonsを、さらに地図についてはグーグルマップ、ストリートビューを使用しています。その以外については逐次出典を付けています。さらに、Wikipedia の英文版など外国語版などについては、逐次池田、青山が日本語訳しています。

 私たちは現地調査、視察、学術会議などで世界各地にでかけていますが、スコットランドへ(Scotland)行くのは初めてです。2012年7月、かねてから一度視察してみたかった、そのスコットランドに行くこととしました。

 せっかくスコットランド行くならなら、「悲劇の女王、メアリー・スチュアート」に関連する地域、城などの大部分を現地視察したいという強い思いもあり、10日間の予定をとりました。メアリー・スチュアートは、16世紀、スコットランドのイングランドからの執拗な攻撃に自国の独立のために立ち向かった女王です。

 なお、悲劇の女王、メアリー・スチュアートについては、以下をご覧ください。

※ 青山・池田 悲劇の嬢王メアリー・スチュアート女王 論考
※ 青山・池田 メアリー女王の足跡を辿る旅:スコットランド・エディンバラ城 動画 

 歴史に、もしは許されません。しかし、スコットランド、イングランド、フランスの王位継承権を持っていたメアリー・スチュアートがその王位を継承していれば、現在のイギリス(英国)という国はなく、ましてやアメリカ合衆国やカナダという国々も存在しなかったのです。その結果、当然のこととして西欧近代そして西欧現代の世界史は現在とはまったく異なったものとなっていたのです。
 
 青山、池田のスコットランド2200km走破の旅の「問題意識」も、実はそこから出発いたのです。現在、イギリスでひとくくりとされれているスコットランドですが、スコットランドはメアリー・スチュアートの悲劇の後、イングランドに併合されています。しかし、人口、面積で日本の北海道に近いスコットランドは、世界的見て秀逸で稀有な人材を各分野で数多く送り出しています。

 以下はウォレスタワーなどに掲示されていたスコットランドの偉人です。

 この中には、ウィリアム・ウォレス、ロバート・ザ・ブルース、メアリー・スチュアートなどに加え、近代以降の偉人として、ジェームス・ワット、アレクサンダー・グラハム・ベル、 ジェームズ・クラーク・マクスウェル、アレクサンダー・フレミング、ジョゼフ・ブラックチャールズ・マッキントッシュチャールズ・レニー・マッキントッシュジェームズ・スターリング、アダム・スミスジェームス・ヒュームジョージ・ブキャナンジョン・ミラー、ジョゼフ・ジョン・トムソン、ウィリアム・ラムゼー、チャールズ・トムソン・リーズ・ウィルソン。アーサー・ヘンダーソン、ジェームズ・マーリーズ、アレクサンダー・ベインジョン・ロジー・ベアードジョン・ボイド・ダンロップジョン・ロウドン・マカダムジョゼフ・リスター、デビッド・リビングストン、ジェームス・クックの父親、ウォルター・スコット、トーマス・カーライル、キーツ、コナン・ドイルロバート・ルイス・スティーヴンソンショーン・コネリー、ユアン・マクレガー、ジェラルド・バトラー
が含まれます。いずれもそれぞれの分野で稀有で卓越した業績、発明・発見、見識で世界をリードした人々といえます。

 周知のように2014年、スコットランドは、イギリスからの独立を目指し、住民投票を行いました。

 2014年9月18日、スコットランドで住民投票が行われ有権者は独立に「賛成」か「反対」で答えることになりました。すなわち「スコットランドは独立国家となるべきか」です。投票開始までの1週間に行われた世論調査ではその得票差はかつてないほど小さいものでした。

 しかし、当時の市議リスの首相キャメロンは、賛成派が多数を占め独立国家となった場合、スコットランドの経済、軍事基地、金融、通貨、公的年金、エネルギー供給はどうなるのか、イギリスの債務をどれだけ負担するのか、パスポートや市民権はどうするのか、エリザベス女王は国家元首に留まるのか、さらにNATO、イギリス連邦、国連、EUとの関係は、といった問題について、よく言えば白熱した議論、悪く言えばイングランドによるスコットランド住民への恫喝に類する一大キャンぺーがあったと思えた。

 その結果、次第に反対派が優勢になっていき、住民投票では反対派が55.3%の票を獲得したのです。賛成票は44.7%、有権者得票率は84.5%であった。とりわけキャメロンによるスコットランドの高齢者への公的年金問題の執拗な恫喝が功を奏したとされています。地域的にはエディンバラでは賛成派と反対派が拮抗、大都市のグラスゴーでは賛成派が反対派を凌駕、さらに住民投票権をもつ若年層は以外にも賛成が多かったのです。他方、年金問題に加え地方都市では自治体の経済、財政問題からか反対が多かったとされています。

 以下は年齢層別の賛否の割合です。見てわかるように若年層は圧倒的に独立に賛成、また25歳から54歳も独立に賛成でしたが、55歳以上57歳が反対が多く、決定打は65歳以上で圧倒的に反対派が多くなっています。

16~17歳:賛成71、反対29
18~24歳:賛成48、反対52
25~34歳:賛成59、反対41
35~44歳:賛成53、反対47
45~54歳:賛成52、反対48

55~64歳:賛成43、反対57
65歳以上:賛成27、反対73

 スコットランド独立住民投票の年代別の賛成、反対割合は以下の通りです。全体結果 賛成 44.65%、反対 55.25%、最終投票率は、84.59%です。

 上記の表 の割合を年齢別人口比で加重平均して見ると、65歳以上の反対が著しく多く、55歳以上も反対が多いことが分かります。逆に16歳から54歳は、ホトンドが賛成が多くなっています。

 下の図1は2011年度のスコットランドの人口構成です。日本ほどではありませんが、高齢化が見て取れます。青が男性、赤が女性です。


図1 スコットランドの年代別の人口数
註)有権者の人口構成(ただし、有権者は16歳以上)

 以下の図2は、上の人口構成図のうち、有権者を抜き出したものです。ただし、有権者は16歳以上なので、実際は15歳は含まれません。


図2 スコットランドの有権者の年代別の人口数
註)有権者の人口構成(ただし、有権者は16歳以上)

 さらに以下の図3では、上の図を年齢階層毎に切り分け、年代別の賛成、反対割合と対比してみました。年齢構成別の賛否割合では見てわかるように、独立に多くが反対した55歳以上の人口が累積で多いことが分かります。


図3 スコットランドの有権者の年代別の人口数と賛否割合
註)有権者の人口構成(ただし、有権者は16歳以上)

 スコットランドの独立が、高齢者の年金受給問題との関連で反対となったのは至極残念です。というのも、高齢者こそ、イングランドとの過去の経緯をよく知っている世代であるからです。

 さらに、青山のいわゆる「鵜呑み論」では、総じて英国民の14%しか、新聞、テレビなどの内容を信じていない、すなわち鵜呑みにしていないという調査報告もあることからして、高齢者の反対が賛成を上回ったのはふしぎでした。ちなみに、英国の鵜呑み度は14%台で世界一低く、逆に日本は70%台で世界一鵜呑み度が高いという国際調査の結果があります。

 スコットランドの2014年の独立投票についての詳細は、青山の以下の論考をご覧ください。

 ※ 青山貞一:スコットランド独立住民投票結果の解析


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