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六ケ所原燃PRセンター

  鷹取 敦
環境総合研究所(東京都目黒区)

掲載日:2014年5月30日
独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁




 六ケ所原燃PRセンターを視察した。日本原燃の行っている核燃料サイクルの仕組みやその問題には敢えてここでは言及せず、PRセンターのあり方について着目して紹介したい。

 青森県の下記資料によると、六ヶ所村に集中して立地しているむつ小川原国家石油備蓄基地 1983年〜、原子力燃料サイクル施設(ウラン濃縮工場 1992年〜、低レベル放射性廃棄物埋設センター 1992年〜、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター 1995年〜、再処理工場、MOX燃料工場)、大規模風力発電施設+蓄電施設、ITER(国際熱核融合実験炉)関連施設 国際核融合エネルギー研究センター、などがエネルギーパーク計画に位置づけられている。

◆「六ヶ所村次世代エネルギーパーク計画」2008年7月2日 青森県
http://www.ueri.co.jp/jhif/09Conference080702/Aomori%20Mr.%20Ishito.pdf


出典:六ヶ所村次世代エネルギーパーク計画

 六ヶ所村役場 商工観光課に「六ヶ所村次世代エネルギーパークインフォメーションセンター」が設置されており、駐車場入口には案内の看板があるが、一般の見学者にとって都合のいい週末にも関わらず役場は閉まっており訪れることはできなかった。


六ヶ所村次世代エネルギーパークインフォメーションセンター看板(六ヶ所村役場)
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-18

 4週間前までにウェブから見学予約をするとインフォメーションセンターが各事業所に問い合わせ、見学の手続きをするようである。見学の対象は上記施設の他、六ケ所原燃PRセンター、環境科学技術研究所、トヨタフローリテック、六趣醸造工房、エネワン ソーラーパーク六ヶ所村がある。全施設を見学すると移動時間を含めずに385分(約6.5時間)もかかる。

 これらの施設のうち六ヶ所原燃PRセンターは、核燃料サイクルの商用利用を目的に設立された国策会社である日本原燃株式会社のPR施設である。PRセンターのウェブサイトは子供を意識しているのか、子供と犬のイラストが多用されたものであり、原子力関連施設のPR施設というイメージではない。

◆六ヶ所原燃PRセンターのウェブサイト
http://6prc.jp/


出典:六ヶ所原燃PRセンターのウェブサイト

 なお、ウェブサイトは、PRセンターの案内に徹しており、原子力燃料サイクルに関する情報は全く掲載されていない。事前に勉強しようとか、見学したあとに調べようという目的には役に立たない。日本原燃へのリンクが貼ってあるが、こちらは到底、わかりやすい内容とは言えない。どうやらインターネットの活用には重きを置いていないようである。

 PRセンター見学の際に案内スタッフの説明を受けたい場合にはこのウェブサイトで事前予約することができる(無料)。


六ケ所原燃PRセンターの建物
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-18

 事前に15時に予約しておいたが14時40分頃にセンターに着き、受付に行ったところ、待ち構えいたようで名乗るまでもなくすぐに案内担当の方が出てきた。ちなみに帰りがけには、駐車場から車を出して、入口前を通過したところ、職員の方が4、5名ならんでお辞儀をされていた。過剰に丁寧な対応である。

 原燃の行っている事業に関する説明なのだから、専門知識を持ったスタッフが説明してくださるのかと期待していたが、2年目の若い方であった。PRセンターの受付の方と同じ、バスガイド風の制服を着た案内スタッフであった。

 聞いた説明を全て覚えたりメモすることは難しいので、録音の準備をしたとろ、録音は禁止だといわれてしまった。正しい情報を伝えて理解を得るのが目的なのに、正確な記録のための録音禁止とはどういうことなのだろうか。なお、写真の方は他の見学者やスタッフが写り込まなければ問題ないということだった。見学をしてみて分かったが、展示されているものは実物の8割の大きさに作ってある実際に動く機械(一部を再現したもの)や模型、展示パネル、CG(コンピュータグラフィックス)アニメ等お金をかけてつくったものと見えて立派なものであった。

 3階建てのPRセンターの3階は展望ホールとなっており、周辺を見渡すと再処理工場、尾駮沼、むつ小川原港、低レベル放射性廃棄物埋設センター、ウラン濃縮工場、総合体育館、運動公園、そして一面にひろがる風力発電の風車群が見える。


展望ホールの説明パネル
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-18


展望ホールから見る風力発電ファーム
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-18

 なお、展示の最初のところに、カナダ産のウラン鉱石が展示してあり、虫眼鏡でのぞけるようになっている。持参していた線量計(DoseRAE2)を十数センチまで近づけたところ約0.8μSv/hとなった。数メートル離れると0.05μSv/hに下がる。放射線源が点源の時には距離の二乗に反比例して放射線が減衰するためである。(※広い範囲の土壌汚染の場合には、面源となるため距離の二乗には比例しない。)


カナダ産ウラン鉱石(直近で0.83μSv/h)
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-18

 案内スタッフ説明はしっかりと覚えたマニュアルの内容を復唱しているような印象で頼りなげだったが、疑問点について質問をしてみたところ、勉強されているようで、思いの外しっかりと答えていただける。ただしちょっと込み入った内容になると、分からなかったり、機密事項で答えられなかったり、原燃のウェブをみてくださいということの繰り返しとなってしまった。疑問点の一部は見学後にセンターの入口で教えていただいたものの、疑問のままのこった部分があった。後日メールか何かで教えていただけるようなあいまいな部分があったが、今日に至るまで連絡はない。


燃料プールから燃料集合体を取り出す様子の再現
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-18

 全体として資料や図だけをみては分かりにくい、再処理の流れが実物をみるて説明を受けることで理解が進むという面はあるものの、種類別の廃棄物の割合や量、アクティブ試験段階でのトラブル、想定される事故や避難計画に関すること等については、説明もなく、質問してもよく分からないというものであり、事業者にとって不都合なことには触れないという姿勢が徹底していた。案内スタッフの方自身がそのようなことについての知識や認識もないように感じられた。また、先に述べたように、説明の内容を録音してはいけないということで、メモを取りながら見学するのも限界がある。

 小学校、中学校の見学であれば、このような内容になるのも仕方がないかもしれない。(その場合でも、事業者にとって不都合な情報は積極的には説明しないので、これでよいわけではない。)しかし、事前に団体名、参加者数、申込者の実名を登録して、申し込みをしてあることから、専門的なことがわかる方の案内が欲しかった。

 核燃料サイクルとその施設についてどう受け止めるかは、再処理の仕組みの理解を得る、そのために広告代理店的なセンスで安全そうなイメージを作ることにお金をかけるというだけでは不十分で、社会や環境への負担、リスクや事故の場合の対応、過去に起きたトラブル等も含めて、きちんと伝えられた上で、透明性のある合意形成をすることが必要なのではないだろうか。

 透明性や合意形成の問題は、福島第一原発事故の反省として、国や自治体、原子力関連事業者、そして日本社会が学ばなければならない教訓である。福島第一原発事故後3年以上経っても不都合なことを伝えず、記録(録音)すら許さないという「PR」ではだめだということを理解されていないということが象徴されている施設であった。


福島第一原発の事故に関わる唯一の展示(小さなパネル)
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-18