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豪は中国「一帯一路」事業破棄に続き
「潜水艦」事業でも仏との契約を破棄

 背後に米英の反中戦略が

池田こみち(環境総合研究所顧問)
 
独立系メディア E-wave Tokyo 2021年9月18日
 

本文

 オーストラリア(豪)は2016年、次期潜水艦事業の共同開発企業としてフランス(仏)の政府系造船会社ナバルの前身であるDCNS※を選定し、4兆4000億円で潜水艦12隻の契約を交わし、この間実現に向けて協議を進めてきた。

 
しかし、ここ数年、中国との関係が著しく悪化し、日米仏豪の軍艦が東シナ海を航行したり訓練を実施するなど緊張が高まり、フランスの企業と進めてきた次期潜水艦建造事業についての契約を破棄し、英米の支援を得て原子力潜水艦8艦の導入を進めることを明らかにした。

※)DCNS(Direction des Constructions Navales Services、
  造船役務局)は、フランスの海軍艦艇を建造する造船企
  業である。

 フランス政府は、原潜建造についても実績があることから、十分な説明や対応策についての協議もないまま契約破棄し、英米の支援による「原潜建造」に乗り換えたことに強い不快感を示している。

 その背景には、オーストラリア政府と受注したフランスのナバル社との交渉が難航していたことや、豪政府とナバルの「戦略的パートナーシップ協定」の締結が19年にずれ込み計画の進捗が遅れていたこともあると見られている。

 しかし、当初の潜水艦事業の受注を巡っては、ドイツ、日本も受注を目指して競争していたこともあり、最終的に受注を獲得したフランス側の落胆と憤慨は相当なものと思われる1)

 
オーストラリアのモリソン首相は、2021年4月、ビクトリア州政府と中国政府との間で締結された「一帯一路構想」(BRI)の枠組みでの橋梁建設事業が進捗していたにもかかわらず、その協力協定を取り消すという国際的信頼関係を著しく傷つける信義にもとる決断をしていることから、今回のフランスとの契約破棄の発表は、改めて、大きな波紋を広げている。フランスのマクロン大統領は激怒し、敵対視されている中国も激しい怒りと懸念を表明している1)

 マクロン大統領は、オーストラリアに対する非難を強めるとともに、2021年9月15日、米国、英国、オーストラリアの参加国がインド・太平洋地域における新たな三者安保パートナーシップ
「AUKUS」(Australia・UK・USA)の発足に合意し、その中でオーストラリアの原潜保有を支援することにしたとの発表に対しても、強い不快感を示している1)

 3か国の首脳は共同声明を通じて「我々は規則に基づいた国際秩序という持続的な理想と共同の約束にしたがって、パートナーの国との協力を含め、インド太平洋地域における外交・安保・国防協力を深めていくことにした」と伝えた2)。 

 その直後のフランスへの契約破棄通告はG7メンバーでもあるフランスとしても素直に受け入れられないというのは当然のことだろう。

以下参考

1)日経新聞 2021-9-16
 仏ナバル、豪潜水艦建造を中止 米英の原潜配備支援で 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM160T70W1A910C2000000/

2)米・英・豪の3角安保パートナーシップ「AUKUS」が発足
https://news.yahoo.co.jp/articles/b3476efee71bf79c9ee296279e3ea2325b3d1e45

3)DCNS Wikipedia
 2016年、オーストラリアでの潜水艦12隻の受注において、日本、ドイツに競り勝ち約4兆4000億円の契約を結んだ。