米国の2020~2021年の 新規国債発行によるインフレーション 現在、4.2%の危険水域 U.S. inflation from new bond issuance in 2020-2021, now in the danger zone of 4.2%. 青山貞一 Teiichi Aoyama(東京都市大学名誉教授) 池田こみち Komichi Ikeda(環境総合研究所顧問) 独立系メディア E-wave Tokyo 2021年5月21日 公開 |
最初に断っておくが、本稿は米国、日本の自国通貨における新規国債の発行を緊縮財政の観点から批判するものではなく、いわゆるインフレターゲットとの関連において問題とするものである。 なお、筆者らの立場は、MMTスレッドをご覧いただきたい。 青山・池田は、先に米国が2020年に発行した合計400兆円弱の新規国債の発行で、インフレ-ション率が2.6%になっているとフェイスブックで報じた。 より正確には、米財務省は新型コロナウイルス経済対策の財源を確保するため、過去1年間で国債発行を大幅に増やしている。 米証券業金融市場協会(SIFMA)によると、2020年の新規の政府証券発行額は約3兆6000億ドルと、前年の2兆9,000億ドルを大幅に上回った。(2021/03/10) 一方、2021年5月14日付の中国の英文紙、china.org.cnの「インフレの進行は、バイデンの経済政策にとって現実的なチェックとなるかもしれない」、Growing inflation may be a reality check for Biden's economic policy By Tom Fowdy china.org.cn という翻訳記事を独立系メディア E-wave Tokyoに掲載した。 その中で、「マネーサプライの急増に伴い、米国のインフレ率が2.6%と予想を上回り、それに伴う金利の引き上げが懸念され、市場に連鎖的に悪影響を及ぼしている。」さらに「米国連邦準備制度は一時的なものであると国民を安心させようとしているが、それが持続するのではないかと懸念されている。また、先月の新規雇用者数は26万6,000人の増加にとどまり、失業率は6.1%に逆戻りするなど、労働市場が急変している中での出来事である。」と筆者のTom Fowdy氏はのべていた。 ここでは、米国による巨大新規国債発行によりインフレーションがすでに2.6%となっていることも報じた。 このインフレーションが2.6%という数字は、日本が安部政権そして菅政権下で進めてきた経済政策の主要な金融政策の緩和にともなう新規国債発行などによるインフレターゲット(目標)を日銀黒田総裁が、2.0%とすると決めてきたことからすると、非常に大きなものである。 ところが2021年5月21日、以下の注)にあるロシアのイズベスチア紙の記事で、今年4月、米国のインフレ率は4.2%となっており。2008年のあのリーマンショック以来の高い水準だと報じていた。 注)Чужого не надо: Россия распродает остатки госдолга США Центробанк снижаетсистемные риски Оксана Белкина 以下は記事の当該部分。 米国国債の価格が、一次流動性を提供する米国の金融機関から圧力を受けていることを忘れてはならない。したがって、米国の金融システムの安定性は注意深く監視されるべきであり、アクセント・キャピタル・マーケッツの副ディレクター、セルゲイ・マカロフは付け加えます。最初の警報は既にその時点で鳴っている。4月のインフレ率は0.8%増の4.2%となった。インフレの急上昇は、米国通貨の状況を悪化させるだけでなく、国債の魅力を低下させる。 日本のインフレターゲットは2%なので、米国のインフレ率が現状で4.2%という数字は、米国が新型コロナ対策で大盤振る舞いの財政出動をしたとしても、到底看過できない数値である。 簡単に言えば、日本の新聞など大メディアが報じないだけで、米国はリーマンショックを超えるインフレになっていることを問題にしている。おそらく米国の巨額の新規国債発行は米国のCOVID-19対応またトランプ政権からバイデン政権への移行に関連しているものであり、その評価は別途すべきものと思う。また4%超えのインフレは、リーマンショックの場合とは別の経路をたどっていることにも留意すべきであると考える。 以下は、池田こみちが検索したTrading Economicsのグラフであり、まさに現在、米国のインフレは2.6%(推定2021年3月)から4.2%(2021年4月)となっていることを明確に示している。 グラフを見れば一目瞭然だが、米国のインフレ率は、新型コロナ前の2020年は0.1%だったものが2020年7月に1%、2020年10月に1.2%、その後上記のように、2021年3月(推定)に2.6%、2021年4月に4.2%となっている。 現状で2008年のリーマンショック時のインフレ率を超えているという指摘があるのに、日本の大メディアがいかなる理由があろうと、一斉に目をつぐんでいるのは信じられないことである。 出典:Trading Economics <参考1> 2008年9月のリーマンショックのインフレ率の推移 以下は2008年9月のリーマンショックのインフレ率の推移。ただし、このグラフは2008年9月をゼロとしているので、インフレ割合の絶対値ではない。また今回、日本はインフレターゲットを2%とし、この間、インフレ率を極限まで下げてきたのに対し、リーマンショック前は、現在の米国並みのインフレ率があったと推測される。 出典:日本の財務省などより作成 <参考2> 2008年9月のリーマンショックによる1人当たりGDP(ppp)と雇用でみた実査いの影響の大きさ 以下のデトロイトと東京で1人当たりGDP(ppp)と雇用が2008年で顕著に落ち込んでいるのは、リーマンショックの影響である。この調査では、世界300都市圏を対象としており、以下はその2都市圏の調査結果である。 米国 デトロイト都市圏(300位/世界300都市圏) 出典:青山貞一・池田こみち共編:一人当たりGDPと雇用の伸び率で見た世界300都市経済圏ランク米国(原典:ブルッキングス研究所(NYC)) 日本 東京大都市圏(212位/世界300都市圏) 出典:青山貞一・池田こみち共編:一人当たりGDPと雇用の伸び率で見た世界300都市経済圏ランク米国(原典:ブルッキングス研究所(NYC)) |