専門家の意見、英国トラス氏 は明らかに外交術を欠くだろう リュドミラ サーキャン Sputnik 日本語 War in Ukraine- #1396 6 September 2022 独立系メディア E-wave Tokyo 2022年9月9日 |
2022年9月6日, 19:45 (更新: 2022年9月6日, 22:49) トラス氏 - Sputnik 日本, 1920, 06.09.2022 © AP Photo / Alastair Grant 独占記事 筆者紹介 リュドミラ サーキャン 1975年、モスクワ国立大学付属アジア・アフリカ諸国大学日本語学科を卒業。出版社「プログレス」などで働く。1993年、ラジオ局RTに入局。1985年、国際科学技術博覧会 つくば万博で働く。2005年、プーチン大統領が日本を訪問した際に記者団の一員として同行。2012年、ウラジオストクAPEC首脳会議で記者として働く。現在は露日関係を専門としており、特に両国の文化交流関連の話題に熱意をもって取り組んでいる。 本文 英国では6日、ボリス・ジョンソン前首相の後任として、前外務大臣リズ・トラス氏(47)が首相に就任する。トラス氏は抑えがたい気性の持ち主であるとともに、様々な評判が聞こえてくる人物だ。トラス氏は保守党の新党首となり、マーガレット・サッチャー氏、テリーザ・メイ氏に続く英国史上3人目の女性首相となる。党首選の投票には数週間を要し、5日に結果が発表された。 トラス氏は8月24日、有事の際には核兵器を使用する用意があると発言した。この発言は同盟国を驚かせ、トラス氏の立場は弱まり始めた。それでもトラス氏は党首選でライバルのリシ・スナク前財務相を破り、57.4%の支持を獲得した。 党首選の結果は、保守党のイベント中に発表された。その様子は、ユーチューブで生配信された。 6日、トラス氏は英スコットランドでジョンソン前首相とエリザベス女王に謁見する。その後、トラス氏は就任後初の演説を行い、成立した新内閣を発表する予定。7日には新内閣の初閣議が開かれ、午後にはトラス氏が国会で最初の質疑応答に臨む。国会では、英国の経済危機とその影響に対処するための政府の施策に焦点が当たるとみられている。 ダウニング街10番地 - Sputnik 日本, 1920, 06.09.2022 リズ・トラス氏 3人目の英国女性首相に就任へ 02:23 ロンドンの経済ビジネス研究センターは3月、英国の生活水準は1950年代以来最大の落ち込みになる恐れがあるとの報告書を発表した。 公式データによると、7月の英国のインフレ率は前年同月比で10.1%上昇した。その引き金となったのは、食品、燃料、エネルギー価格の急激な上昇だ。イングランド銀行の推計によると、秋には同国のインフレ率が13%を超える恐れがあるという。 英メディアは、このためトラス氏は、ウクライナ危機や英国の欧州連合(EU)離脱に伴う問題、生活費の上昇などの課題に直面することになると報じている。 トラス氏は、こういった課題に立ち向かう準備ができているのだろうか? スプートニクは、ロシア科学アカデミー欧州研究所の英国研究センター長のエレーナ・アナニエワ氏に尋ねた。 「保守党は存続し、その政策は続いていく。 しかし、これは政策に重点を置かないという意味ではない。スナク氏が反対の立場を取ったのに対し、トラス氏は逆に、首相就任早々、減税を約束した。これは、党の方針と一致している。 しかし、これには国家予算や公的債務が増えるという問題を伴う。私は、トラス氏が経済危機や生活水準の低下に対処できる可能性は低いとみている。英国のEU離脱に対する取り組みについてだが、英国はEUに加盟していた10年間で、EUの法制度に自国の法律を組み込むようにしてきた。そして今、英国は法改正に長い時間を要することになったのだ…」 トラス氏は7月、EUの法律が英国のビジネス発展を妨げているとして、2023年末までに国内に残るEUの法令(2400本)を全廃するとの公約を発表した。 トラス氏は、外交政策ではサッチャー氏や米国のレーガン元大統領の精神を受け継ぐ強硬派だ。トラス氏はジョンソン氏の政策を推し進めていくことに極めて積極的な姿勢をみせており、英国の国防費の増加、ウクライナへの重火器供給、インド太平洋における英国の役割拡大、北大西洋条約機構(NATO)の活動の拡張、国連に代わり主要7カ国(G7)の役割を強化することを訴えている。また、英国の中国依存を回避する考えも示している。 アナニエワ氏は、「白黒の世界観を持つトラス氏は、明らかに外交術に欠くことになるだろう」と指摘している。 「外交政策においてトラス氏は、2020年に『競争の時代におけるグローバルな英国』というタイトルで発表された包括的な防衛・外交・国際開発戦略に沿った行動を取るだろう。この報告書は、2030年までに英国政府が目指すべき重要な目標を定めたものだ。英国はEUとの間で、主に経済的な面で未だに緊張した関係が続いている。 英国は米国と特別な関係にあり、緊密な同盟国であると同時に、両国の間には摩擦もある。特に、議論を呼んでいるのは北アイルランド議定書だ。アイルランドにルーツを持つバイデン米大統領は、この議定書の変更に反対している。 また、英国はインド太平洋地域におけるプレゼンスを本格的に転換する計画を立てている。これは英国の国家安全保障戦略によるものなのだ。一時期、英国のキャメロン元首相は中国との関係で『黄金時代』を目指していたが、米国が英国を冷遇し、英米は今、『新大西洋主義』の道を歩んでいる。 英国はオーストラリアと米国とともに、反中国を掲げた『AUKUS』を創設した。また、英国政府は、英国・ポーランド・ウクライナが参加する独自の同盟関係の構築を始めている…」 アナニエワ氏によれば、英国では2年後に総選挙が予定されているが、保守党が政権を維持し続けるかどうかはかなり不透明だという。しかし、現在保守党が議席の過半数を占めているため、政府の決定事項の多くはそれほど難なく通過するはずだ。 アナニエワ氏は、 なぜトラス氏が厳しい批判を受けているにもかかわらず党首になったのか、というスプートニクの質問に対して、「彼女は、シンプルで即効性のある解決策を提供している」と答えている。 |