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ハイチの人々がヘンリーに反対してデモ、
米とカナダの「侵略」を西側メディアが無視

  Haitians Demonstrating Against Henry, US-Canadian
‘Invasion’ Ignored by Western Media

Sputnik International War in Ukraine #1732 17 Oct 2022

翻訳・青山貞一(東京都市大学名誉教授)
独立系メディア E-wave Tokyo 2022年10月18日

2022年10月12日、ハイチのポルトープランスのシテ・ソレイユ地区で、外国軍による新たな介入の可能性に反対する数千人のデモ隊が抗議。また、アリエル・ヘンリー首相代行の辞任を要求した。- スプートニク・インターナショナル、1920、2022.10.17 © Sputnik Screenshot

 以下は、グーグルマップによるハイチの位置。カリブ海にありキューバの海を隔ててすぐ東にある。


グーグルマップによるハイチの位置
出典:グーグルマップ


ハイチの成り立ち(本稿末尾部分の掲載)
 ハイチは、かつてフランスの植民地だったサン・ドミンゲで、1804年にアフリカ人奴隷の大規模な蜂起によって独立し、フランス革命を手本に世界初の黒人共和国を建国した。 しかし、奴隷にされたアフリカ人の労働力を経済基盤としていた植民地勢力に囲まれたハイチは、自由を勝ち取った残酷な植民地戦争から立ち直れず、貧困にあえぐ傍流国家と化した。 20世紀に入ると、アメリカは何度もハイチに侵攻し、長年にわたって国を占領し、アメリカのビジネスに都合の良い政策をとる指導者を据えた。

本文

 国連がハイチへの更なる軍事介入を位置づける中、西側メディアは、アリエル・ヘンリー首相代行と新たな外国軍の到着の可能性の両方に対する島国での大規模なデモを無視している。

 ハイチの都市では数千人が数カ月にわたってデモを行い、臨時政府への権力移譲を独断で拒否し、2月に任期が切れた後も権力の座にとどまることを決めたヘンリーの辞任を求めている。

 ※注:アリエル・ヘンリー(英語読み)
  アリエル・アンリ(仏:Ariel Henry, 1949年11月6日 - )は、ハイチの
  政治家。首相(第24代)。元モンペリエ大学医学部教授。日本メディア
  ではフランス語読みに倣ってアリエル・アンリと報じられるが、非フラン
  ス語圏では英語読みでアリエル・ヘンリーと呼ばれる。

 ヘンリー氏が秩序回復への協力を国際社会に訴えたことで、こうしたデモはここ数日で激しさを増している。

 「アリエル・ヘンリーと手を組め!」 「占領と手を組め!」。ダウン・ウイズ・オキュペーション(Down with Occupation!) とデモ隊が10月10日にポルトープランスの首相官邸前で叫んだと地元メディアは伝えている。

 他方、「介入を許さない!売国奴を倒せ!」。武器を準備せよ!革命は始まった!」と叫んだデモもある。

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10月10日、ハイチの数万人の人々が街頭に出て、外国の介入に反対し、事実上の首相であるアリエル・アンリの辞任を要求しました



 ギャングに日々恐怖にさらされているシテソレイユは、外国の介入にノーと言っている。それはギャングと戦うためではなく、2004年に米軍と国連軍が侵略して彼らの地域を占領し、数千人を虐殺したように、彼らを暴力的に弾圧して抵抗を断つことだと知っているからだ。 pic.twitter.com/awu4gKL46R

マダム・ブークマン-ジャスティス4ハイチ🇭 (@madanboukman) 2022年10月12日
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シテ・ソレイユはギャングに毎日脅かされているが、外国の介入にノーと言う。ギャングと戦うためではなく、暴力的に彼らを抑圧し、彼らの抵抗を断ち切るためだと知っているからだ。2004年に米国と国連軍が侵略し、彼らの地域を占拠し、数千人を虐殺したときと同じようにだ。




ルニオンスイート 🇭 🇹@LunionSuite on twitter
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本日、50以上の団体がワシントンDCに集まり、#ハイチ における米国の政策に抗議した。ハイチ人に自分たちの未来を決めさせよう!



 抗議者たちによると、新たな介入は暴力的な犯罪組織の抑制やコレラの発生など他の公衆衛生問題の緩和を目的としたものではなく、昨年暗殺されたジョベネル・モイーズ大統領の後継者として彼らが手塩にかけた政権を維持するためのものだという。

 ハイチのディアスポラ団体は、米国内の反戦団体と連携し、ワシントンDCやその他の都市で、米国やその他の外国軍隊の派遣にも反対する抗議を行っている。

 今日、50以上の団体がワシントンDCに集まり、#Haitiにおける米国の政策に抗議している。ハイチ人に自分たちの未来を決めさせよう!! pic.twitter.com/Bp3grZSIZE

- ルニオンスイート🇭 (@LunionSo_1F1F9) 2022年10月9日

ハンズを外すな!#アイティ pic.twitter.com/4DU2sUJvtN

- アヤイチ・センボル・レジスタン (@Ayitipaobeyi) 2022年10月10日

 しかし、こうしたデモの規模にもかかわらず、ハイチのニュースを専門に扱う報道機関は別として、欧米のメディアはほとんど報道していない。

 むしろ、ヘンリー政権と国連、そして米国、欧州連合、ブラジルなど数カ国を含む「コア・グループ」と呼ばれる国際外交官グループの間で繰り広げられるドラマに焦点を合わせているのである。


国連に助けを求めるヘンリー

 10月5日にヘンリーが国際的な支援を求めたのは、同国の主要燃料ターミナルがギャングによって封鎖され、燃料や飲料水、食料などの関連製品が著しく不足し、電力をディーゼル発電機に頼っている病院があることを受けたものである。

 10月10日、ヘンリーはハイチへの部隊派遣を明確に要請し、アントニオ・グテーレス国連事務総長も国連安全保障理事会で彼の呼びかけに同調した。

 週末には、アメリカとカナダの装甲車が航空機でハイチに到着し、ヘンリーの警察部隊に与えられることになった。しかし、過去の武器輸送のように、これらは戦うために使われるはずのギャングの手に落ちるか、あるいはモイーズ政権下で起こったように、民衆の民主化デモの弾圧に使われるだけだろうと批評家は言っている。

 下の写真はハイチのアリエル・ヘンリー指定首相(中央)とクロード・ジョセフ暫定首相(右)は、2021年7月20日火曜日、ハイチのポルトープランスでの追悼式で、国立パンテオン博物館で故ジョベネル・モイズハイチ大統領の肖像の前で他の当局者と集合写真撮影をする。- スプートニク・インターナショナル


ハイチの指定首相アリエル・ヘンリー(中央)と暫定首相クロード・ジョセフ(右)は、2021年7月20日(火)、ハイチのポルトープランスで行われた追悼式で、国立パンテオン博物館で故ジョベネル・モイズハイチ大統領の肖像の前で他の当局者と集合写真を撮影している。© AP Photo / Joseph Odelyn

 ヘンリーは、複雑な一連の出来事によって政権を握ったが、その展開に一役買ったと疑う人も多い。2021年7月5日、モイーズはヘンリーを次期首相に指名したが、そのわずか3日後、モイーズは自宅で、コロンビア人の元兵士を中心に、2人のアメリカ人も含む武装集団に暗殺された。

 ヘンリー首相は、数日前にモイーズ首相に内定していたことを根拠に、混乱の中で新政府を樹立しようとした。しかし、当時まだ首相だったクロード・ジョセフも、軍の後ろ盾を得て、独自の政権を樹立した。さらにハイチ上院は、ジョセフ・ランベルトを首相に任命し、混乱に拍車をかけた。しかし、7月17日、中核派はジョセフではなく、ヘンリーを首相に選んだ。

 ハイチは、かつてフランスの植民地だったサン・ドミンゲで、1804年にアフリカ人奴隷の大規模な蜂起によって独立し、フランス革命を手本に世界初の黒人共和国を建国した。

 しかし、奴隷にされたアフリカ人の労働力を経済基盤としていた植民地勢力に囲まれたハイチは、自由を勝ち取った残酷な植民地戦争から立ち直れず、貧困にあえぐ傍流国家と化した。

  20世紀に入ると、アメリカは何度もハイチに侵攻し、長年にわたって国を占領し、アメリカのビジネスに都合の良い政策をとる指導者を据えた。