専門家:ウクライナでのロシアの攻撃が どのように終わるかを語る。 Experts: How Russian offensive in Ukraine will end RT 4 March 2022 翻訳:池田こみち(環境総合研究所顧問) 独立系メディア E-wave Tokyo 2022年3月7日 |
ウクライナ国境付近で撮影されたロシアの装甲車。 © Sputnik / Konstantin Mikhalchevsky 筆者:Maxim Hvatkov ソビエト連邦後の宇宙とロシア軍を専門とするロシア人ジャーナリスト 本文 ロシア軍がウクライナ軍の機能不全を狙った攻撃を行う中、モスクワとキエフの代表団はベラルーシで2回にわたって緊迫した和平協議を行った。RTは、いわゆる「特別作戦」がいつ、どのように終結するのか、それがウクライナの主権にとって何を意味するのか、情報戦との関連でどんな教訓を得ることができるのか、ロシアの専門家と連絡を取り合った。 ■ウクライナの非軍事化、非ナチ化というモスクワの使命 ロシアのワシリー・ネベンジャ国連常駐代表は、ウクライナへの侵攻を通じて、核兵器を保有しようとする隣国から自国を守る権利を行使していると主張している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、安全保障と引き換えに、1994年に結ばれたブダペスト覚書の下で原子兵器を引き渡すというキエフの決定に触れた。 一部のオブザーバーは、これを旧ソビエト共和国がその非核的地位を放棄しようとしていると解釈した。 「ウクライナ当局が非軍事化・非ナチ化プロセスを開始する意思があるとの理解が得られれば、いち早くそれは作戦終了への一歩となるだろう」とネベンジャ氏は主張した。 高等経済学校(HSE)総合欧州・国際研究センター長のワシリー・カシン氏はRTに対し、ウクライナへの軍事介入の分析はプーチン大統領の発言に基づくべきであると説明した。 「我々のここでのロシアの目標についての理解は限られている。ウクライナの全領土を移動し、その政治体制を変えるという話のようだ。 要は、ミンスク合意を守っていたらウクライナはこうなっていただろうという姿にしたいのだろう。すなわち、中央が弱く、地方が強い国に。そうなると、ウクライナはブロック指向一辺倒の外交政策をとることは出来なくなる。 また、民族主義者は政治から切り離されることになる。ウクライナは大きな国であり、ロシアの戦力は限られていることを考えると、ロシアが具体的にどのようにそれを実現しようと考えているのか、私にはまだ分からない」と述べた。 モスクワは、ウクライナを占領する意図はなく、ウクライナ領土の非武装化に取り組んでいると繰り返し主張している。この目的を達成するために、どのようなタイムスケールが予想されるかについて、カシンは、21日間続いた米軍の2003年の「イラクの自由作戦」を引き合いに出した。 「キエフをまず包囲し、それから占領するということだろうが、現地の人に武 器を持たせた以上、そんなに早くはないと思う。ロシアは今、ほとんど国内の他 の地域に集中している。1〜2週間もすれば、ウクライナの組織的な防衛は崩壊し、 その後、国を支配下に置き、新しい政権を樹立する問題が発生するだろう」と HSE専門家は主張している。 バルダイ・ディスカッション・クラブのプログラム・ディレクター、オレグ・バラバノフ氏は、ウクライナへの介入の結果は、ロシアの軍事作戦がどれだけ成功するか、特にキエフの軍隊と民兵が武装抵抗をやめるかどうかにかかっているとの見方をRTに示した。 「もし、数日後に作戦が順調に進み、軍事的な目的が達成されれば、ウクライナはロシアの非軍事化要求について話し合いを始めるしかないだろう。しかし、作戦が失速し始めれば、最初の数日間のショックは消え、ウクライナは防衛を強化することができるだろう。そうなれば、交渉が決定的な役割を果たさない、長期的な軍事衝突に発展するだろう」と述べた。 ■死傷者 ウクライナ指導部は、ロシアの進出を「可能な限りコスト高にする」ために全力を尽くしているとカシンは主張する。 「軍組織外の訓練を受けていない民間人に銃を渡しても、防衛上、あまり意味がない。しかし、抵抗すれば殺されるし、殺されるたびに数十人が反ロシア活動に巻き込まれる。これが、西に退却してそこの国境で戦線を維持する代わりに、キエフを容赦なく防衛する理由なのだ。」 彼によると、「ロシアにとって状況を複雑にし、目的を達成するのを困難にするための集団犠牲である」という。彼は 「キエフは国民を気にしていない」とまで主張した。 バラバノフ氏は、2014年、暴力的な街頭デモが選挙で選ばれた政府を追放したマイダンの後、モスクワは同様の作戦を実施すべきだったと主張している。ドネツクおよびルガンスク人民共和国(DPRおよびLPR)はその後、キエフからの独立を宣言し、クレムリンも最近これを承認した。 「ロシア軍はウクライナの都市への進入を避け、包囲して封鎖しようとする。戦術的には正しいかもしれない。しかし、問題は最後までゼレンスキー政権が続くのか、それとも何か新しい代替権力の中枢が現れるのかだ。ゼレンスキーとその周辺は、今の彼らの勇猛さと組織力を見れば、そう簡単に引き下がらないだろう。ここが2014年との決定的な違いである。当時はエリートも軍も逃げ出す可能性が高かったので、8年も遅れたというのが大きな誤算(間違い)だ。ゼレンスキーが逃げる可能性はゼロとは言い切れない。彼の行動は時に矛盾しているとしても、できることはすべてやっている」とバラバノフ氏は言う。 ■ウクライナの未来 2月28日、ロシアとウクライナは、ベラルーシのゴメリ地方で第1回目の会談を行った。ロシア側代表のVladimir Medinsky氏によると、両者は5時間の首脳会談で様々な問題を議論したという。 しかし、一部のアナリストは、ウクライナの現指導部との交渉は、近いうちに別の当局者が統治することになるかもしれないので、無駄なものになるかもしれないと推測している。 バラバノフ氏は、南部のケルソンや東部のハリコフに首都を置く新しい「ノボルシア」人民共和国が、現職のキエフ政府に取って代わる可能性があると考えている。また、メディアでは、ノボロシヤ議会の元議長でヴェルホヴナ・ラダ議員のオレグ・ツァリョフや、ウクライナの元首相ニコライ・アザロフが新国家のトップになるのではないかとの憶測が広がっていると指摘した。 「この場合、彼らはロシアと交渉することもでき、実質的にウクライナを分割することになる。プーチンが軍に政権奪取を呼びかけているにもかかわらず、誰かがゼレンスキーを追放する可能性はないと思っている。私は、それが最も可能性の低いシナリオだと考えている。」と専門家は語った。 カシンによれば、ウクライナにはロシアが支配しているとされる反ファシスト組織があり、理論的には国の運営に関与できる可能性があるとのことだ。 「これはウクライナの未来に関する非常に特異(異常な)な考えだ」とカシン氏は述べた。 HSEの専門家は、ツァリョフが裏からこの展開に参加している可能性があると主張している。また、イリヤ・キバ議員がここ数日、ゼレンスキーとキエフ市長のヴィタリー・クリチコ両氏を批判し、非常に大きな声を上げていることを指摘した。 キバはかつて、ウクライナの極右組織「右翼セクター」のポルタヴァ支部の責任者だった。以前はドンバスのウクライナ化を支持し、アルセン・アヴァコフ前内務大臣のアドバイザーを務めていた。2014年から2015年にかけては、DPRとLPRにおけるいわゆる反テロ作戦にウクライナ側から参加した。 近年、ウクライナのナショナリストたちは、キバの政治的Uターンを非難するようになった。彼は親ロシア派とされる「野党プラットフォーム-生活のために-」(現在自宅軟禁中のヴィクトル・メドヴェチュクが率いる政党)の仲間入りをしたのである。2021年のインタビューでキバは、「私にとってロシアは祖国の未来を救うチャンス」であり、「米国はウクライナにナチズムの種をまいている」と語っている。 ■メディアと世論 バラバノフ氏は、攻撃期間中の戦術計画を秘密にする必要性から、ロシアのメディアは戦争の報道を控えめにしていたのではないかと主張している。 「しかし、ウクライナの指導者やスポークスマンは、兵士の英雄的行為や祖国を守ることに定期的に感謝し、士気を維持するために懸命に働いている。ロシアでは、プーチン大統領が一度だけ感謝したことを除けば、そのようなことは十分に見られない。士気を高めるという点では、ウクライナのプロパガンダマシンはクレムリンのものに勝る」と述べた。 カシンはまた、ロシアの報道機関が攻勢を十分に報道していないと主張するが、メディアキャンペーンの勝者はウクライナだと宣言するのは止めた。 「ロシアはもっと映像だけでなく、さまざまなインタビューも見せるべきだ。これまで見てきたのは、ほとんどが奇妙な発言だ。しかし、ウクライナもそれほどうまくは対応していない。作戦開始当初にプロパガンダのインフラをやられたからだろうか。今のウクライナからの発言は混沌としており、未確認のままだ」と述べた。 専門家によれば、カシンはモスクワからの公式な情報が不足していることが、国内で多くの人がみているような物議を醸す反応につながったと考えている。 「ロシアは、協議がどのように決裂したか、誰が責任を取ったか、誰がどのように今回の軍事作戦の開始を決定したのか、すべての情報を含む、広く入手可能な詳細な参考資料を準備すべきだった。最も重要なのは、なぜウクライナがロシアにとって重要で、そのために1945年以来ヨーロッパで最大の戦争を始めたのかについて、明確な説明があることだ。」 カシンは、モスクワの軍隊が現地に進出しているにもかかわらず、ロシア社会は戦争がどのように進行しているかについて十分な見識を得ていないと主張し、作戦がどれだけ成功しているかを完全に把握するには時間がかかるだろうと付け加えた。 |